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第六章:陰謀の中での愛の証明

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アステローペがグレイグ公爵邸での日々に少しずつ慣れ、公爵との関係も少しずつ温かみを帯びてきたころ、予期せぬ陰謀が二人の絆を試すこととなった。

ある日、アステローペが公爵との会食の場で、突然目の前に現れたのは王宮からの使者だった。使者は冷ややかな目つきで二人を見つめ、無遠慮に口を開いた。

「グレイグ公爵、王よりお達しがあります。あなたとアステローペ様の婚約について疑念が生じていますので、再度確認が必要です。」

その一言に、アステローペの胸は締め付けられた。王が二人の婚約に疑念を抱いているということは、この婚約が何らかの陰謀に巻き込まれつつある証でもあった。彼女は一瞬公爵の顔色をうかがったが、彼は冷静な表情を崩さず、堂々と使者に向き合った。

「王がそうおっしゃるのなら、私としては従うまでです。しかし、何か問題があるのでしょうか?」

公爵の鋭い視線が使者を貫いたが、使者は平然と応えた。「近頃、公爵が王位を狙っているという噂が王宮内で広まっています。その疑念を晴らすためにも、婚約の真偽を確認させていただきたいのです。」

アステローペは驚きと不安を感じた。グレイグ公爵が王位を狙っているという噂は、彼にとっても自分にとっても大きなリスクであり、危険を伴うものであった。しかし、公爵は微笑んだまま、動揺することなく使者の話を聞いていた。

「では、その疑念を晴らすためには何をすればよいのか?」

「アステローペ様と婚約を解消し、王家からの許可を得たうえで再度婚約する必要があります。もしくは、アステローペ様が王に忠誠を誓う証拠を示していただくことです。」

使者がその言葉を告げると、公爵は静かにうなずいた。「なるほど、王がそう望むのであれば、私も従います。しかし、アステローペには彼女なりの意志があります。その意志を尊重したい。」

使者が退室すると、アステローペは公爵に向き直り、不安げな表情で問いかけた。「公爵様、本当に婚約を解消するつもりなのですか?」

公爵は彼女を静かに見つめ、口を開いた。「私が望んでいるのは、君と共に生きることだ。だが、王がこの婚約に疑念を抱いているのであれば、我々の愛を証明しなければならない。君が望むのなら、私は王家に従うが、どうしたいかは君が決めることだ。」

彼の言葉に、アステローペは胸が熱くなった。自分の意思を尊重してくれる公爵の態度に、彼の愛の深さを感じたのだ。同時に、彼女は自分がこの状況にどう対処すべきかを真剣に考える必要があることを悟った。もし彼女が王への忠誠を証明すれば、婚約は続けられる。しかし、彼女の選択一つで公爵に迷惑がかかるかもしれない。

夜が更け、アステローペは庭園で一人考え事をしていた。公爵との幸せな未来を望みつつも、彼が自分のために犠牲を払おうとしていることに心が揺れていた。その時、庭の奥から軽やかな足音が聞こえてきた。振り向くと、公爵が彼女のそばに立っていた。

「アステローペ、君は何を悩んでいるのだ?」

彼の低い声が静かな庭に響き、彼女は思わずその瞳を見つめ返した。「私がこのまま忠誠を誓えば、公爵様に危険が及ぶかもしれません。それでも私は…」

公爵は彼女の言葉を遮るようにして手を軽く上げた。「君が忠誠を誓うことは、君自身が望む道ならば尊重する。それに、君がどのような選択をしようとも、私は君を守る。」

彼のその言葉にアステローペは決意を固めた。彼女にとって、公爵のそばにいることが何よりも大切であり、そのために自分ができることを全て果たしたいと思ったのだ。

翌日、アステローペは王宮を訪れ、王に忠誠を誓う決意を伝えた。王の面前で彼女ははっきりとした口調で誓いを立て、公爵との婚約は真実の愛によるものであることを強調した。その言葉に王は少しの間考え込んだが、最終的に婚約を認め、疑念は晴れることとなった。

しかし、王宮を後にした彼女に待っていたのは、新たな陰謀だった。王に忠誠を誓ったことで王家の支持を得たものの、公爵の権力を狙う他の貴族たちが二人を引き離そうと動き始めたのだ。そのうわさはすぐに社交界に広がり、アステローペと公爵の絆を試す厳しい日々が続くこととなった。

それでも、二人は互いを信じ、どんな障害も乗り越えていく覚悟を持っていた。アステローペの心には、彼との愛が何よりも強い支えとなり、公爵もまた、彼女を守ることに誇りを感じていた。そして、彼らは陰謀と困難の中でさらに深い絆を築き上げ、誰も引き裂くことのできない愛の証を残すこととなったのだった。

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