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第四章: 「真の婚約者、そしてざまぁの瞬間」

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舞踏会が終わりに近づき、夜も更けた頃、フィアットは一息つこうと会場の端に足を運んだ。彼女はルーカスと再会したことで、自分がいかに強くなったかを改めて感じていた。かつては心を乱されてしまった彼の存在も、今の彼女にとってはただの通りすがりの過去の一部に過ぎない。そして、そんな彼を軽くあしらえたことが、彼女の心にさらなる自信をもたらしていた。

その時、再び会場に入ってきた一団が人々の注目を集めていた。彼らは隣国からの使者で、王都に新たな婚約の申し出を伝えるために訪れたのだという。その中にいたのは、隣国の若き王子、カイゼルだった。カイゼル王子はその威厳ある立ち振る舞いと冷静な瞳で周囲を見渡し、人々を圧倒していた。その姿はまさに、王国を背負う者としての風格に満ちていた。

フィアットも彼の存在に気付き、思わず視線を向けた。彼女の美しさと堂々たる立ち振る舞いはカイゼル王子の目にも留まり、二人の目が一瞬交わった。彼は何か興味を抱いたようにフィアットの方へと歩み寄り、彼女に軽く微笑んだ。

「お美しいお嬢様、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

カイゼル王子の問いにフィアットは一瞬驚いたが、すぐに穏やかに微笑みを返し、礼儀正しく答えた。

「私はフィアットと申します。ご挨拶できる機会をいただき光栄です、カイゼル王子」

王子はその名を聞き、まるで深い意味を含んだように彼女を見つめた。その瞬間、彼の目には興味以上の何かが宿っていることがフィアットには分かった。彼女の魔力や成長した姿に何かを見出したかのようだった。

その場に居合わせた貴族たちも、フィアットとカイゼル王子のやり取りに注目していた。特にルーカスは、彼女が王子と楽しげに会話する様子を目にし、苦々しげに眉をひそめていた。彼の中でフィアットに対する未練が強まり、後悔の念が湧き上がってきていた。だが、今や彼女の隣に立つ資格など自分にはないと理解せざるを得なかった。

そのとき、カイゼル王子は意を決したかのように、フィアットに向けて静かに口を開いた。

「フィアット様、あなたの強さと美しさに心を打たれました。ぜひとも、私の国へ来ていただき、隣国の王妃として共に歩んでいただけませんか?」

会場が静まり返り、周囲の人々は驚愕の表情を浮かべた。突然のプロポーズに、フィアット自身も一瞬戸惑ったが、すぐにカイゼル王子の真摯な眼差しを見つめ返し、彼の誠実さを感じ取った。彼の言葉には何の打算も感じられず、ただ彼女自身を見初めた者としての純粋な想いが伝わってきたのだ。

フィアットは心の中でこれまでの出来事を思い返した。ルーカスに裏切られ、家族からも見放され、ひたむきに努力を続けてきた日々が、彼女を今の自分へと導いたのだ。そして今、彼女を真正面から評価し、敬意を込めてプロポーズしてくれる相手がいることに心からの喜びを感じた。

彼女は深く頭を下げ、少しだけ笑みを浮かべて答えた。

「カイゼル王子様、そのお言葉に感謝いたします。私も、あなたの隣で共に歩むことをお約束いたします」

その瞬間、会場は歓声と拍手に包まれ、フィアットとカイゼル王子の婚約が正式に認められた。ルーカスは呆然とした表情でその光景を見つめ、手の届かない存在となったフィアットの姿に言葉を失っていた。彼の胸には後悔が押し寄せ、自分の愚かさを思い知らされるばかりだった。

フィアットは、彼の視線に気づき、最後に冷たく一瞥をくれてから、カイゼル王子の隣に立った。彼女の心には何の迷いもなく、過去に執着することもなく、未来への希望だけが輝いていた。彼女は、かつて自分を蔑んだ相手に対する「ざまぁ」の想いを静かに胸に秘め、穏やかに微笑んでいた。

その後、フィアットはカイゼル王子と共に隣国へ旅立ち、新たな生活を始めた。彼女は王妃としての務めを果たしつつも、自らの力をさらに磨き、国民たちの信頼を勝ち取っていった。彼女が王妃として隣国に貢献する姿は評判となり、やがて彼女の物語は「努力と成長を貫いた強き王妃」として語り継がれていった。

ルーカスは彼女の話を聞くたびに、失ったものの大きさを実感し、悔しさと後悔に苛まれることとなった。フィアットが本当の価値を見出すことができなかった自分を恥じ、彼女の前で見せた軽率な言葉を、心の底から後悔する日々を送ることになった。

しかし、フィアットにとって、ルーカスの後悔も、過去の傷も、今や過去の一部でしかない。彼女は新しい人生を歩み出し、真の仲間と愛する人に囲まれて、幸福な未来を築いていくのだった。


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