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第二部 第一章:王宮のメニューの違和感
しおりを挟むある日の昼下がり、ラヴォワチュール・ノワールは、王宮から聞こえてきた一つの噂に興味を引かれた。それは、最近の王宮の料理が豪華になり、まるで日常の食事が祝宴のような雰囲気になっているという話だった。料理人として王宮に長く仕えていたラヴォワチュールにとって、王宮の料理はただ豪華なだけではなく、栄養のバランスと健康を重視したものでなければならないという信念があった。
「これは…」
彼女は、その場で漏らした言葉を自分でも驚いたように感じた。王宮の料理に一抹の疑念を抱いたラヴォワチュールは、その不安を払拭するために、王子に連絡を取り、最近のメニューの確認をお願いすることにした。
数日後、王子がラヴォワチュールの店を訪ね、手元に一週間分のメニューを持ってきた。彼はそれを渡しながら、得意げな表情で言葉を続けた。
「ラヴォワチュール、実はアルテッツァが君との勝負に負けたことをかなり悔しがってね。その後、彼女は相当な努力を重ねたそうだよ。短期間で成長して、今では君にだって劣らない実力を持つ料理人に成長したらしい」
王子の口ぶりには、アルテッツァの成長を誇らしげに語る様子が見て取れた。しかし、ラヴォワチュールはその言葉に対して冷静に微笑み、手元のメニューに目を落とした。
彼女は静かに一週間分のメニューに目を通していった。しかし、ページを進めるごとに、ラヴォワチュールの眉間には徐々に皺が寄っていった。高脂肪や高糖分の料理が続き、見た目に豪華さが際立つメニュー構成だが、栄養面や健康を考えたバランスが欠如していることが見て取れた。
全てのメニューに目を通した彼女は、意外な一言を口にした。
「冗談じゃないわ。私より上だなんて、うぬぼれもいいところよ!」
王子はその言葉に驚き、思わず彼女に問いかけた。
「どういうことだ?彼女は確かに成長したはずだ。君がそれを認められないなんて珍しいな」
ラヴォワチュールは王子の言葉を無視するように冷たく言い放った。
「王子、私はただのプライドで話しているわけではありません。彼女がどれだけ腕を上げようと、料理人として本質を理解していない限り、私に勝つことなど到底できません」
それから少し間をおき、彼女は王子をじっと見つめた。「アルテッツァ・ジータに料理勝負を申し込みたいと思います」
その申し出に、王子は驚きと戸惑いを浮かべ、少し呆れたように口を開いた。
「どうして?君がそこまで彼女を試したがるなんて、君らしくないな」
ラヴォワチュールは、王子の疑問に微笑みを浮かべて返した。
「やればわかるわ!」
真意を明かさず、ラヴォワチュールはそのまま王子のもとを後にし、次なる勝負に向けて静かに準備を始めるのだった。
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