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第一章: 再会と秘密
しおりを挟むレオン・グレイスは周囲から「氷の王子」と称されるほど、冷酷な態度と無表情で知られていた。次期伯爵として将来を約束された彼は、何事にも感情を表さず、完璧さを求める姿勢が特徴だった。社交の場で見せる冷ややかな眼差しや、他者を寄せ付けない態度は、多くの者にとって「近寄りがたい」という印象を抱かせていた。けれども、そんな彼にとっても例外が存在した。彼が心の奥に秘め続けた過去の記憶――それは、幼き日に出会った少年、エリオット・サリバンとのことだった。
レオンはエリオットと幼少期に出会い、かつては仲の良い友人だった。エリオットは明るく快活で、どこかミステリアスな雰囲気を持ちながらも、純粋で温かい存在だった。しかし、ある事件が二人を引き離し、エリオットは突如として姿を消した。その後、彼の行方は不明となり、レオンの心にはぽっかりと穴が空いたまま時が過ぎていった。
数年後、レオンは成人を迎え、貴族としての義務と責任を果たす日々を送っていたが、エリオットへの思いを忘れることはなかった。彼はいつか再びエリオットと会えることを願い続け、心の奥底で彼との再会を夢見ていた。
そんなある日、レオンは偶然立ち寄った街の工房で、見覚えのある顔を見つけた。埃にまみれながらも黙々と作業に没頭しているその青年――間違いなく、エリオットだった。
「エリオット……?」
レオンの口からその名前が漏れた瞬間、エリオットの手が止まり、驚いたように振り向いた。その目には、懐かしさと警戒が入り混じった感情が浮かんでいた。
「……レオン?」
エリオットもまた、彼を見て驚愕の表情を浮かべた。数年ぶりの再会に、二人の間には微妙な沈黙が流れた。レオンは喜びを抑えきれず、自然と歩み寄ろうとしたが、エリオットの視線には明らかな戸惑いと不安が見え隠れしていた。
「君がここで何をしているか知りたいと思っていたが……まさかこんなところで再会するとは思わなかった」
レオンが冷静を装いながらも内心の動揺を隠そうとする中、エリオットは目を伏せ、少し躊躇した後で口を開いた。
「俺も、レオンに会うとは思っていなかった。こんな自分を見られたくなかったが……仕方がないな」
エリオットの声には、どこか悲しげな響きがあった。彼がかつての明るさを失い、今は何かを抱え込んでいることをレオンは察した。
「昔の君はこんな顔をしていなかった……何があったのか話してくれないか?」
レオンは穏やかに問いかけたが、エリオットは頑なに視線をそらしたまま答えなかった。彼の沈黙が示すもの、それは言えないほど深い傷や秘密があることを意味しているように感じられた。
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