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第四章:「ざまぁと新たな未来」
しおりを挟む元の王国での疫病の蔓延は止まらず、民衆の苦しみは日に日に増していた。王や貴族たちは次第に焦りと恐怖に駆られるようになり、王は再び使者を隣国に送り出し、必死にヴィータの帰還を求めた。しかし、すでにヴィータが戻る意思を持っていないことを隣国の王宮は承知していたため、使者は門前払いを食らわされた。ヴィータの力を失った王国は、自らの誤りを突きつけられ、無力感に包まれた。
その一方で、隣国でのヴィータの活躍はますます広がり、民衆は彼女のことを「真の聖女」として慕っていた。ヴィータは自身の力を通じて多くの命を救い、貧しい者たちにも手を差し伸べ、次第に国全体で尊敬される存在となっていた。リリス王女と共に行った病院の拡充や医療体制の改善は成果を上げ、人々の生活が改善されていく様子を見守ることが、ヴィータにとって何よりの喜びとなっていた。
ある日、元の王国から新たに逃れてきた人々が隣国に到着した。彼らは疫病の蔓延から逃れ、安らぎを求めて隣国に移り住もうとしていた。隣国の王宮も、この状況を前にして彼らの避難を受け入れる決断を下した。そして、ヴィータが「隣国の聖女」として疫病の治療に尽力していると知った人々は彼女に感謝の意を示し、元の王国での苦しい日々を彼女に語った。
「ヴィータ様、私たちはあなたが追放された時から間違っていたと気づきました。あなたがいなければ、あの国はもう救われないでしょう…。」
逃れてきた者たちの言葉に、ヴィータの胸はわずかに痛んだが、彼女はあえて表情を崩さなかった。今や彼女の居場所はここ、隣国にある。彼女が再び元の王国へ戻る理由はもうないのだ。
そして、ついに疫病の蔓延が止まらない元の王国では、民衆が暴動を起こすようになった。彼らは宮廷の無能さを非難し、ヴィータを追放した責任を追及した。エレノアもまた、民衆からの怒りの矛先に立たされ、かつての輝かしい地位を失い、宮廷からも追放される運命を迎えることとなった。彼女は自らの愚かさに気づき、後悔と共に静かに王宮を去ったが、もはやヴィータに許しを求めることはできなかった。
王もまた、ヴィータに助けを求めようとした自分の愚かさに気づき、深い後悔に苛まれた。しかし、彼はもはやその過ちを取り返すことはできず、王国の衰退を目の当たりにすることしかできなかった。
一方で、隣国でのヴィータの評判は高まる一方で、彼女を「真の聖女」として称える人々が増えていった。リリス王女もヴィータの功績を称え、彼女に対して絶大な信頼を寄せるようになった。ある日、リリスはヴィータにこう告げた。
「ヴィータ、あなたのおかげで隣国の人々は救われました。あなたが我が国に来てくれたこと、心から感謝しています。」
ヴィータは微笑み、リリスの言葉に感謝の意を示した。追放された日から新たな場所で力を尽くし続けた結果、彼女は自らの価値を証明し、真に必要とされる存在となったのだ。隣国での彼女の活躍は今や国中に知れ渡り、民衆からの信頼は揺るぎないものとなっていた。
数か月後、ヴィータは隣国で新たな聖堂を建設する計画をリリスと共に進めていた。新しい聖堂は隣国の民が感謝の意を込めて「聖女の神殿」と名付け、彼女を讃える場所として築かれることとなった。その場で、リリスはヴィータに国民からの感謝の品として、特別な護符を贈った。
「これは、あなたがどこにいても守られるようにと、皆で作り上げたものです。私たちはあなたの存在にどれほど救われているか、計り知れません。」
ヴィータは涙を浮かべながらその護符を受け取った。そして、かつての王国での苦しみを思い返しながら、ここ隣国での新たな未来に希望を見出したのだった。
「これからも私は、この国で人々を救い続けます。そして、皆様の平穏を守るために力を尽くすことを誓います。」
そうして、ヴィータは隣国の聖女としての新たな使命を胸に抱き、再び歩みを進めた。彼女を追放した王国が滅びの道を辿る一方で、ヴィータは人々に愛され、敬われる存在として、輝かしい未来へと歩んでいくのだった。
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