人魚大戦

 (笑)

文字の大きさ
上 下
7 / 8

第7章:真実への対決

しおりを挟む


アクエリアスとルーファは深淵の神殿から王国へ戻る道中、姉アリエールの記憶が徐々に戻ってくるのを感じ取っていた。だが、アリエールの完全な記憶を取り戻すにはもう少し時間が必要だった。アクエリアスの心には、姉を完全に救いたいという強い願いがあったが、同時に心の奥底に不安が湧き上がっていた。

「姉さまの記憶を取り戻すことで、私たちは真実を知ることになる……でも、その真実が戦争を止められないものだったら……」

アクエリアスは深い海の中でふと立ち止まり、思いを巡らせた。アリエールが遭遇した出来事が陰謀によるものだと判明した今、誰がその背後にいるのかを探り出さなければならない。そして、その黒幕が王国と人間界の関係を壊そうとしているなら、アクエリアスはそれを阻止しなければならなかった。

ルーファも同じように不安を抱えていたが、アクエリアスを支えることを決意していた。「何が起ころうとも、俺は君と一緒に戦うよ。姫を助け、王国を守るためにな」

アクエリアスはルーファの言葉に勇気づけられ、姉の記憶が完全に戻るのを待ちながら、次の一手を考えた。彼女は神殿で見た記憶の断片を思い出し、誰がアリエールを襲ったのか、そしてその者たちがどこにいるのかを探り始める必要があった。


---

やがて、アリエールの記憶が完全に戻る瞬間が訪れた。彼女は、嵐の日に何が起こったのかを詳細に思い出した。彼女が記憶を失う前に遭遇したのは、古代の魔法を操る謎の存在――それは、王国の外れに隠れ住んでいるとされる「影の魔法使い」だった。

「彼らは、私の力を封じることで、戦争を引き起こそうとしていたのよ」
アリエールは震える声で語り始めた。「人間たちと王国の間に争いを起こさせ、混乱の中で自分たちが力を得ようとしていた。私を狙ったのは、王国の力を弱めるためだったの」

アクエリアスはその言葉に、真実が明らかになったことに恐怖を感じながらも、今度こそ戦わなければならないと覚悟を決めた。影の魔法使いは、王国と人間界の争いを煽るために暗躍していた存在であり、その計画が進行している以上、戦争は避けられない状況に追い込まれようとしていた。

「影の魔法使いを見つけ出し、計画を止めなければ……このままでは、王国が戦争に突き進んでしまう」

アクエリアスはルーファとアリエールと共に、影の魔法使いの隠れ家へ向かうことを決意した。彼らの居場所は、アリエールが襲われた海域のさらに奥に隠されている。そこは、誰も近づくことができないような危険な場所であり、強力な魔法で守られているとされていた。


---

旅の途中、アクエリアスは姉アリエールとの再会を喜びながらも、戦いの緊張感に心を揺さぶられていた。彼女は姉が再び危険な目に遭わないよう、全力で守る決意をしていた。そして、ルーファもまた、漁師として培った知識と勇気で二人を支えようと心を固めていた。

やがて、彼らは「影の魔法使い」が潜むと言われる海域にたどり着いた。そこは暗く、海底がまるで底知れぬ闇に包まれているかのようだった。アクエリアスは恐怖を押し殺し、深く潜り込み、魔力の強い気配を感じ取った。

「ここだ……この奥に、彼らがいる」

アクエリアスは目を閉じ、集中して魔法の力を高めた。すると、周囲の水が不穏に揺れ、闇の中から複数の影が浮かび上がってきた。それは、影の魔法使いが操る魔法生物だった。彼らは侵入者を察知し、すぐに攻撃を仕掛けてきた。

「くるぞ、気をつけろ!」ルーファが叫び、アクエリアスとアリエールもすぐに戦闘態勢に入った。

アクエリアスは自らの魔法を使って防御の結界を張り、敵の攻撃を防いだ。アリエールも記憶を取り戻したことで自分の力を取り戻し、魔法使いたちと対等に戦えるようになっていた。彼女は水の力を操り、敵を次々に倒していった。

「私たちを止めることはできない!」アクエリアスは強く叫び、最後の魔法生物を倒すと、影の魔法使いの本体が姿を現した。

その存在は黒いローブに身を包み、顔はほとんど見えなかったが、強大な魔力を放っていた。彼は冷笑を浮かべながら、アクエリアスたちを見下ろしていた。

「お前たちがこの場所にたどり着くとは思わなかった。しかし、遅すぎる。戦争はすでに始まる……お前たちに止めることはできない」

アクエリアスは怒りを抑え、冷静に返した。「私たちには、真実を知る権利がある。あなたの陰謀は明らかになった。これ以上、王国と人間界を戦争に引きずり込むことはさせない!」

影の魔法使いは不敵な笑みを浮かべ、強大な魔力を解放した。その瞬間、アクエリアスたちの周囲の海が激しく揺れ、暗闇が彼らを飲み込もうとした。しかし、アクエリアスは自身の力を最大限に引き出し、姉とルーファと力を合わせて立ち向かう決意をした。

「私は王国を守る……姉さまと一緒に、そしてルーファと共に!」
アクエリアスは叫びながら、自らの魔法を解放し、影の魔法使いとの最後の戦いに挑んだ。


---

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。

香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー 私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。 治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。 隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。 ※複数サイトにて掲載中です

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

処理中です...