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第三章:運命の再会

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カレンが商人として新たな道を歩み始めてから、早くも一年が過ぎた。彼女の店「オルブライト商会」は日々繁盛し、特に女性や子供たちに愛される場所となっていた。さらに、カレンは街の貧しい人々を支援するための活動も続け、食料や衣料を提供したり、職業訓練を行ったりと、王都全体で彼女の評判が高まりつつあった。

一方、レオン王子とエリーナの結婚生活は、徐々に陰りを見せ始めていた。エリーナは王妃としての責務を果たすよりも、贅沢な生活に明け暮れ、王宮内外で傲慢な態度を見せるようになっていた。その振る舞いは多くの人々から批判され、やがて王妃としての信頼を失っていった。

王国全体もまた、深刻な経済的危機に直面していた。王室が贅沢に資金を使いすぎたため、国庫が逼迫し、王国の財政が危機に瀕していたのだ。そんな中、レオン王子は思いがけず耳にした噂に心を揺らされることになる。

「オルブライト商会のカレン嬢が、貧しい人々に援助をし、王都で多くの人から敬愛されているらしい……」

その話を聞いたレオンは、かつての婚約者が自分の手を離れた後でこれほどまでに成功を収めたことに驚きを隠せなかった。自分の決断が間違っていたのではないかという思いが、心の片隅に芽生え始める。

そして、ある日、王宮は財政危機を打開するため、各地の有力な商人たちに協力を仰ぐ場を設けた。その場には、カレンも招かれた。正式な場での再会に、レオンは何とも言えない期待と不安を抱きながら彼女を待っていた。

会場の扉が開き、カレンが姿を現した瞬間、会場の人々は一瞬息を飲んだ。華やかなドレスではなく、質素でありながら上品な装いで現れたカレンは、まるで別人のように凛とした雰囲気を纏っていた。その堂々とした立ち居振る舞いは、かつての婚約破棄で見た涙に濡れたカレンとは全く異なっていた。

「カレン・オルブライト、ここに参りました。」

会場に響くカレンの静かな声に、人々は彼女の存在感を改めて感じた。レオンは彼女に話しかけようと一歩踏み出そうとしたが、その前に彼女が国王と対面するために歩み寄っていった。

「オルブライト商会のカレン殿、貴女のご協力を得られることを期待しております。」

国王からの言葉に、カレンは一礼して答えた。

「私の商会でできる限りの支援を提供いたします。王国のために少しでも力になれるなら、それが私の喜びでもあります。」

彼女の言葉には真摯な響きがあり、会場の人々もその姿勢に感銘を受けていた。レオンはそのやりとりを見ながら、彼女の変貌にただ呆然とするばかりだった。かつて彼が見下し、手放したはずのカレンが、今や堂々とした姿で自分の前に立ち、国王と同じ目線で会話をしている。この事実に彼は驚き、そして小さな後悔の念を抱かざるを得なかった。

その後、カレンは王国の財政を立て直すための具体的な提案をいくつか提示した。彼女の提案はどれも実現性が高く、さらに庶民の生活を支える内容も含まれていたため、国王や貴族たちはその知恵と心配りに感嘆し、次々と賛同の意を示した。

一方で、エリーナはこの場で自分の立場が危うくなりつつあることに気付き、焦りを覚えていた。彼女はカレンに対する嫉妬心を隠しきれず、冷ややかな目で睨みつけていた。しかし、カレンはそんなエリーナの視線を意にも介さず、ただ淡々と国王や貴族たちの質問に応じていた。

会議が終了し、退出する際、レオンはついにカレンに話しかける機会を得た。

「カレン……久しぶりだな。君がここまで成功するとは思ってもみなかったよ。」

彼の言葉に、カレンは冷静な表情で微笑みながら答えた。

「お久しぶりです、レオン殿下。私が成功するかどうかなど、誰にとっても興味のないことかと思っておりましたが。」

その冷ややかな返答に、レオンは少し戸惑った表情を見せたが、すぐに立て直して言った。

「いや、君のことをいつも気にかけていたんだ。君の成功を喜んでいる。」

彼の言葉にはどこか未練が感じられたが、カレンはそれを冷淡に受け流した。

「ありがとうございます。ですが、私には過去のことを気にする余裕などありません。今はただ、私の商会と人々のために尽力するのみです。」

レオンはその返答に、かつての自分の軽率な決断が悔やまれ、胸の内に重く響くものを感じた。彼はカレンに何か言葉をかけたかったが、彼女の冷たい視線に圧倒され、それ以上何も言えなかった。

その場でエリーナがレオンに駆け寄り、彼の腕にしがみつくようにしてカレンを睨みつけたが、カレンは一瞥もくれず、ただ静かに会場を後にした。

カレンが去った後、会場には一瞬の静寂が訪れ、やがて人々が再び動き出した。レオンはその場に立ち尽くし、カレンの姿を目で追いながら、彼女を失ったことの大きさをようやく実感するのだった。

彼は自分の傍らで不満を口にするエリーナの声が、ただ空虚に響くばかりであることに気付く。かつてカレンを見下し、彼女の価値を理解できなかった自分が愚かだったと、心の底から後悔する。しかし、今となっては彼女を取り戻すことは叶わない。

カレンはもう、彼の世界にはいないのだ。そして彼女は今、新たな道で輝きを放ちながら、多くの人々に愛され、敬われる存在となっていた。
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