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第1章:運命の扉
しおりを挟む春の訪れとともに、東京の街は桜の花びらで華やかに彩られていた。真琴(まこと)は、大学卒業後に夢見たキャリアを積み重ねながら、亮太(りょうた)との婚約を心から楽しみにしていた。二人は大学時代からの付き合いで、互いに支え合いながら将来を描いていた。しかし、最近になって亮太の態度に変化が現れ始めた。
ある雨の日、真琴はいつものカフェ「ラ・ブルーム」で一人、心の整理をしようとしていた。カフェの窓越しに降りしきる雨音が、彼女の孤独感を一層強めていた。亮太との関係は順調に見えたが、最近彼の態度が冷たくなり、連絡も途絶えていた。真琴はスマートフォンを見つめながら、亮太からの突然のメッセージを受け取った。
「真琴、ごめん。もうやめたい。」
その一言が、彼女の心を深く傷つけた。真琴は涙をこらえながら、心の中で問い続けた。「どうしてこんなことに…私に何が足りなかったの?」
カフェの隅に置かれた古びた本に目が留まった。普段は気にも留めないその本に、なぜか強く惹かれた真琴は、そっと手に取った。本の表紙には「エルドラドへの扉」と金色の文字で刻まれていた。真琴は半信半疑でページをめくると、挟まれていた一枚の紙切れが目に入った。
「願いを込めてページをめくれば、あなたの運命が変わる…」
その言葉に導かれるように、真琴はページをめくった瞬間、眩しい光に包まれた。気がつくと、彼女は見知らぬ場所に立っていた。そこは、壮大な城と魔法が息づく異世界「エルドラド」。空には飛行船が行き交い、地平線には雄大な山々がそびえていた。
「ここは…どこ?」
真琴は周囲を見渡しながら、自分がこの世界に来た理由を探し始めた。心の奥底で、亮太との過去を乗り越え、新しい自分を見つけるための旅が始まったことを感じていた。エルドラドでの新たな人生が、真琴を待っていた。
歩き始めた真琴は、この世界の住人たちの活気に触れ、少しずつ異世界の雰囲気に慣れていった。街の広場には市場が開かれ、様々な種族や職業の人々が行き交っていた。彼女はその中で、自分が異世界に来た意味を見つけようと心に誓った。
「私には、ここで何かを成し遂げる使命があるのかもしれない。」
そんな思いを抱きながら、真琴は歩みを進めた。すると、突然、空が暗くなり、強い風が吹き荒れ始めた。真琴は驚いて空を見上げると、巨大な黒い影が城を覆い始めているのが見えた。闇の勢力が王城を狙っているのだ。
「これは…一体何が起きているの?」
真琴は不安を感じつつも、自分にできることを探し始めた。その時、背後から声が聞こえた。
「大丈夫ですか?お嬢さん。」
振り向くと、そこには勇ましい騎士が立っていた。彼の名はアルト。鋭い目つきと誠実な笑顔が印象的だった。
「私は真琴。ここに来た理由はまだ分からないけど、助けてくれるの?」
アルトは頷き、「私たちと一緒に王城を守っていただけませんか?この町は今、危機に瀕しています。」と答えた。
真琴は一瞬躊躇したが、亮太との破局を乗り越えるためにも、この世界で何かを成し遂げたいという強い気持ちが湧き上がった。
「分かりました。私も力になりたいです。」
こうして、真琴はエルドラドでの冒険の第一歩を踏み出した。彼女は新たな仲間たちと共に、闇の勢力に立ち向かう決意を固めた。過去の傷を癒し、未来への希望を胸に抱きながら、真琴の運命の扉は大きく開かれたのだった。
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