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第二章:ざまあ?それなら自分の道を進むわ!
しおりを挟むエリザベートは婚約破棄の発表を受けてから、数日間、自室に籠もっていた。外界からの視線や噂話が彼女の心に重くのしかかり、一人静かに自分の感情と向き合っていた。しかし、彼女の心の奥底では、何かが確実に変わり始めていた。これまでの「悪役令嬢」というレッテルに縛られる生活に、もう耐えられないという強い思いが芽生えていたのだ。
ある朝、エリザベートは決意を固めた。彼女は窓を開け、新鮮な朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。「これで終わりにしよう。自分自身の力で新しい道を切り開く時が来たのだから」と心に誓い、静かに屋敷を後にした。
屋敷を出たエリザベートは、まず自分の実家の庭園を散策した。そこには美しい花々が咲き誇り、彼女が幼い頃から愛情を注いできた場所だった。しかし、今はもうその華やかさも色褪せ、どこか寂しげな雰囲気が漂っていた。彼女は一歩一歩、庭園を後にし、王都アストリアの喧騒へと足を踏み入れた。
街中では、エリザベートの婚約破棄のニュースが瞬く間に広がっていた。彼女を「悪役令嬢」として見ていた多くの人々は、今やそのレッテルを確信に変えていた。道行く人々は彼女に冷たい視線を向け、ささやき合う声が聞こえてくる。しかし、エリザベートはその視線に怯むことなく、堂々と歩みを進めた。
「もう、誰のためでもない。私自身のために生きる。」エリザベートは心の中で繰り返し、自分を奮い立たせた。彼女は宮廷での生活に疲れ、真実の自分を見失っていた。婚約破棄はその大きな転機となり、彼女は新たな人生を切り開く決意を固めたのだ。
まず彼女が向かったのは、幼い頃から興味を持っていた薬草学の研究所だった。エリザベートは図書館で多くの書物を読み漁り、薬草の効能や調合方法について深く学んでいた。研究所の門をくぐると、そこで働く研究者たちが驚いた表情で彼女を迎えた。
「エリザベート殿下、どうぞお入りください。」と一人の女性研究者が声をかけた。エリザベートは微笑みを浮かべ、「ありがとうございます。私、自分の力で人々の役に立ちたいの」と答えた。
研究者たちは彼女の真摯な態度に心を打たれ、エリザベートに薬草学の基礎から応用までを教えることを快諾した。毎日遅くまで研究所に通い、彼女は少しずつ薬草の知識と技術を身につけていった。エリザベートの努力は実を結び、短期間で驚くほどの進歩を遂げた。
また、彼女は魔法治療にも興味を持ち、研究所の魔法使いたちとも交流を深めた。エリザベートは魔法治療の理論を学ぶだけでなく、実際に患者の治療にも携わるようになった。彼女の優れた治療技術と温かい人柄は、次第に周囲の人々から信頼を集めるようになった。
そんな中、エリザベートは孤児院での奉仕活動にも参加することを決めた。彼女は幼い頃から孤児たちに対して特別な感情を抱いており、自分の力で彼らの生活を少しでも良くしたいと願っていた。孤児院に訪れると、子供たちは最初は警戒していたものの、エリザベートの優しい笑顔と誠実な態度に次第に心を開いていった。
「エリザベート様、今日はどんな薬を教えてくださいますか?」と一人の少女が尋ねた。エリザベートは微笑みながら、「今日は風邪に効く薬草の話をしましょう。そして、一緒に実際に調合してみましょう」と答えた。子供たちは目を輝かせ、彼女の指導の下で薬草を摘み取り、調合を手伝った。
エリザベートの活動は日に日に広がり、彼女の名前は貧しい人々の間で「本当の聖女」として囁かれるようになった。彼女の薬草学と魔法治療の腕前は評判となり、多くの人々が彼女の元を訪れるようになった。エリザベートはそんな中でも決して驕ることなく、常に謙虚な姿勢で人々に接していた。
一方、宮廷ではエリザベートの婚約破棄後の動向に注目が集まっていた。アルフォンス王子とリリア姫の関係も表面上は順調に見えたが、実際にはリリアの聖女としての力に疑問を持つ者も少なくなかった。王子の婚約破棄は、政治的な駆け引きや権力争いの一環として見られていたが、エリザベートの新たな活動はその見方を変える可能性を秘めていた。
エリザベートはある日、孤児院で特別なプロジェクトを立ち上げることを決意した。彼女は孤児たちに薬草学と魔法治療の基礎を教え、自立心を育むプログラムを開始した。子供たちは彼女の指導の下で成長し、未来への希望を見出すようになった。エリザベート自身も、子供たちとの交流を通じて自分の内面をさらに深く見つめ直すことができた。
ある夕方、エリザベートは研究所の庭で一人静かに座っていた。夕陽が彼女の黒髪を黄金色に染め、穏やかな表情を浮かべていた。「これが私の新しい道。もう後戻りはできない」と彼女は心の中でつぶやいた。過去の傷や誤解はもう振り返る必要はなかった。彼女は自分自身の力で未来を切り開き、真の幸福を手に入れるために歩み続ける決意を固めていた。
その時、マリアが駆けつけてきた。「エリザベート様、お話がございます」と彼女は急ぎ足で言った。エリザベートは立ち上がり、優しく微笑んで「どうぞ、話してごらん」と答えた。マリアは一息つき、続けた。「実は、孤児院で新しいプロジェクトを始めたいと考えているのです。エリザベート様のお力をお借りできればと…」
エリザベートは頷き、「もちろん、喜んで協力しますわ」と答えた。彼女の目には新たな希望の光が宿り、これからの未来に対する期待が膨らんでいた。エリザベートはもう、誰にも左右されず、自分自身の意思で生きることを選んだのだ。
こうして、エリザベートの新たな旅が始まった。彼女は「悪役令嬢」という過去を乗り越え、真の自分を見つけるために歩み続けた。彼女の決意と努力は、やがて多くの人々に感動と希望を与えることになるだろう。エリザベートは、もう一度輝きを取り戻すための第一歩を確実に踏み出していた。
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