告発の刃、凛とした美しさの裏に秘めた正義

第四章

シルフィがエドガーの城へ向かって数日が経過していた。彼女が一向に戻らないことに、父であるセントラ公爵は強い不安を感じ始めた。シルフィは元々強い意志を持った女性であり、どんな困難な状況でも冷静に対処できる自信があったが、今回の彼女の長い不在は、公爵にとってただ事ではないと直感させるものだった。

最初、公爵は「エドガー王子の領地で何か事情があって滞在が延びているのだろう」と考えようとしたが、心の奥底ではそれが単なる楽観に過ぎないことを理解していた。シルフィは、あのような冷酷な男と長く過ごすことができる女性ではない。彼女が何日も姿を見せず、連絡も途絶えたままでは、何か非常事態が起こっているに違いない。

「シルフィに何かあったのかもしれない……」

公爵はついに疑念を拭えなくなり、急遽シルフィを探し出すためにエドガーの城へ向かうことを決意した。彼はすぐに準備を整え、数名の信頼できる家臣を伴ってエドガーの領地へと急行した。

道中、公爵の心には様々な思いが駆け巡った。彼はシルフィを幼い頃から大切に育て、彼女の気高さや誇りを誇りに思っていた。エドガーとの婚約は、彼女にとって名誉なものであったはずだが、シルフィの本質を理解する父親として、エドガーの冷酷な性格がシルフィと相性が悪いことは初めから気付いていた。彼女がエドガーに従わないのは当然であり、そのために何か悪事に巻き込まれている可能性が高いと公爵は確信していた。

エドガーの城に到着した公爵は、すぐにエドガーに会うことを要求した。しかし、エドガーは公爵の到着を避けるかのように姿を見せず、家臣たちが取り繕うような説明を繰り返すだけだった。その言葉には明らかに不自然さがあり、公爵の不安はますます増していった。

「シルフィはどこにいる？娘に会わせろ！」

公爵は声を荒げてエドガーの家臣たちに詰め寄った。家臣たちは最初はしどろもどろだったが、公爵の迫力に押され、ついに事実を白状し始めた。シルフィがエドガーによって監禁されていること、彼女が抵抗し続けているために、エドガーが彼女を力で屈服させようとしていたことを公爵は耳にする。これを聞いた公爵は、怒りに満ちた表情を浮かべた。

「何ということだ……！娘を監禁するなど許されることではない！」

公爵は即座にエドガーの城内を捜索し、シルフィの行方を突き止めるように命じた。家臣たちは公爵の命令に従い、次第に城の奥深くへと足を進めていった。冷たい石壁に囲まれた暗い廊下を進むと、やがて堅固な鉄の扉にたどり着く。その扉の向こうに、シルフィが閉じ込められていることが明らかになった。

「シルフィ……」

公爵の声には娘を心配する深い感情が込められていた。彼はすぐに扉を開けさせ、シルフィを救出した。彼女は数日間にわたって過酷な環境に閉じ込められていたが、その気高さと強い意志は失われておらず、父親の姿を見て安堵の表情を浮かべた。

「お父様……」

シルフィは疲労しきっていたが、その瞳には依然として揺るぎない強い光が宿っていた。彼女はエドガーによる圧力にも屈せず、精神的にも決して折れなかったのだ。

「大丈夫だ、シルフィ。もうお前を苦しめる者はいない。私が必ずお前を守る。」

公爵は娘を強く抱きしめ、彼女の無事を確認した。そして、彼はすぐにエドガーに対して行動を起こすことを決意する。公爵の心には、エドガーがシルフィに対して行った行為が絶対に許されないものであるという怒りが満ちていた。

城の広間に戻ると、ついにエドガーが姿を現した。彼は冷ややかな態度を崩さず、公爵を嘲るような笑みを浮かべていた。

「これはどういうことだ、セントラ公爵。私の城に押し入って、何をしているのか？」

エドガーのその冷酷な態度に、公爵は激しく怒りを覚えた。彼はシルフィの手を握り、毅然とした態度でエドガーを睨み返した。

「お前がしたことは明るみに出たぞ、エドガー。娘を監禁し、屈服させようとするなど、貴族として、いや、人間として到底許されることではない。お前の罪は王国中に知れ渡ることになる。」

公爵の声は強く、力強かった。エドガーは最初はその言葉を鼻で笑っていたが、次第に公爵の強い意志に押され、顔を曇らせ始めた。彼の周りにいた家臣たちも、次第に不安な表情を浮かべ、事の重大さに気付き始めた。

「私は……何も悪いことはしていない。貴族としての権利を行使したまでだ！」

エドガーは必死に言い訳をしたが、その言葉は空虚であり、誰の耳にも響かなかった。シルフィはその場で冷静に立ち、エドガーをまっすぐに見据えた。

「あなたの行いは、貴族としての責任を逸脱しています。領民を虐げ、私を監禁し、力で支配しようとした。それは決して許されるものではありません。私はあなたを告発し、この王国の正義を守ります。」

シルフィの言葉は鋭く、強い意志に満ちていた。その姿を見た周囲の貴族たちや家臣たちは、彼女の気高さに圧倒され、エドガーが完全に孤立していることを悟った。

セントラ公爵はその後、エドガーの罪を公に告発し、王国の裁判にかけられることとなった。彼の行った残虐な行為とシルフィへの監禁が明るみに出たことで、エドガーの評判は地に落ち、彼は王族としての権力を剥奪された。

最終的にエドガーは王国から追放され、その名は汚名として歴史に刻まれることとなった。彼の冷酷な性格と行為に対して、王国中から非難の声が上がり、彼が王位を継ぐことは二度となかった。


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結末

シルフィはエドガーから解放され、再び自由を手に入れた。彼女の不屈の精神と毅然とした態度が、エドガーを追い詰め、正義を貫く結果をもたらした。父セントラ公爵もまた、娘を守るために最後まで戦い抜き、エドガーの罪を暴いた。

シルフィはその後、王国中で彼女の正義感と誇り高き姿が称賛され、同性からも一層の尊敬を集めることとなる。彼女の凛としたたたずまい