裏切り者たちの後悔

 (笑)

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## 第三章: 再会と復讐の始まり

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 新たな力を手に入れ、自分がどう進むべきかを考えていたある日、私は懐かしい顔に出会った。

 その日、私は一人で旅の途中に立ち寄った街の市場を歩いていた。小さな街だが、活気に満ちた市場で、人々が賑やかに商品を買い求めている。しかし、その賑わいの中でふと聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。

 「おい、もっとしっかりしろよ! これじゃあ、今日のクエストも成功しないぞ!」

 声の主は――レイモンド。かつてのパーティリーダーであり、私を追放した張本人だった。

 私は思わず足を止め、視線をそちらに向けた。そこには、かつての仲間たち――レイモンド、アンナ、そしてガレスの姿があった。彼らは私を裏切り、パーティから追い出した者たちだ。胸の奥に再び怒りが燃え上がるのを感じたが、同時に冷静さを保とうと自分に言い聞かせた。

 「ふん、相変わらず無能な連中ね」

 私はその場を離れることなく、彼らの様子を観察することにした。彼らは以前のような自信に満ちた態度ではなく、どこか焦燥感が漂っているように見えた。レイモンドの声には苛立ちが滲み、アンナは不安そうな表情で周囲を見回している。ガレスはただ黙って彼らの指示に従っているだけだった。

 「どうしたのかしら? 昔のような勢いはどこに行ったの?」

 私は少し離れたところから彼らの様子を見守っていたが、彼らが市場の隅で集まり、何か話し合っているのを見て、近くの路地裏に隠れて耳を傾けた。

 「もうだめだ、こんな調子じゃクエストなんて成功しない。回復役がいないのが痛い……」

 レイモンドの言葉に、アンナがうなずいた。

 「エルザがいれば……いや、もうそんなこと言っても仕方ないわ。でも、どうしたらいいの?」

 私の名前が出た瞬間、胸の中に再び苦い感情が湧き上がった。彼らが私の存在の重要さに気づき始めたのだろうか。だが、私はそんな考えをすぐに振り払った。今さら私を必要とするなんて、どの口が言っているのか。私は彼らに戻るつもりはなかったし、彼らが抱える問題に手を差し伸べる義理もない。

 「……次のクエストは、もう少し小さなものにして、なんとか対処しよう」

 レイモンドが決定を下すと、彼らはそのまま市場を離れていった。私はその背中を見つめながら、静かに息を吐いた。

 「彼らには、このまま苦しんでもらうわ」

 私がエリミネーション・オーダーを手に入れてから、復讐を果たす時が来るのを待っていた。彼らが私を追放し、私を無力だと思っていたことを、思い知らせるための時が。

 その夜、私は彼らが宿泊している宿の前で待ち伏せすることにした。暗闇の中で、彼らが帰ってくるのを静かに待つ。まるで獲物を狙う狼のように、私は息を潜めていた。

 やがて、彼らが宿に戻ってくるのが見えた。疲れ果てた表情で、ゆっくりと扉を開けるその瞬間、私は姿を現した。

 「久しぶりね、レイモンド」

 私の声に、彼らは驚きと恐怖の表情を浮かべた。レイモンドは一瞬言葉を失い、アンナはその場で立ちすくんだ。ガレスだけが、かろうじて剣を握りしめたが、その手は震えていた。

 「エルザ……どうして……」

 レイモンドの声には、以前のような威圧感はなく、ただ恐怖が滲んでいた。私はゆっくりと彼らに近づき、微笑んだ。

 「私を追放してから、あなたたちはどうしていたのかしら? お互いを傷つけ合いながら、なんとか生き延びてきたのかしら?」

 私の言葉に、レイモンドは顔をしかめた。彼が私に何かを言おうとした瞬間、私はその言葉を遮るように、エリミネーション・オーダーの力を解放した。

 「今日は、あなたたちに少し教えてあげるわ。自分がどれだけ無力であったかをね」

 私の周りに闇が広がり、強力な力が解き放たれた。彼らは恐怖で動けなくなり、ただ私の力に呑まれていく。私は彼らの苦しむ顔を見つめながら、心の中で冷たく笑った。

 「これが、私を裏切った代償よ」

 彼らにとっては、ただの始まりに過ぎない。これから彼らが味わうことになる絶望と苦痛は、私が受けた裏切りの代償として、彼ら自身が払うことになるのだ。

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