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第三章: 変わりゆく気持ち
しおりを挟む結衣との日々は、私にとってかけがえのないものになっていた。亮との婚約解消で揺れ動いていた心も、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。結衣がそばにいることで、私は前向きな気持ちになれたのだ。
それでも、心の奥底にはまだ迷いが残っていた。亮との思い出が完全に消え去ったわけではなく、結衣に対する気持ちも、自分自身でどう整理すればいいのか分からなかった。
そんなある日、放課後に結衣がいつものように私を誘ってきた。「彩花、今日も一緒に帰ろうか?」
「うん、もちろん」
私たちは学校から一緒に帰るのが日課になっていた。結衣と並んで歩くのが当たり前になり、彼女のそばにいると自然と心が落ち着くのを感じた。
「最近、彩花は本当に元気になったみたいで安心したよ」
結衣がそう言って微笑む。その笑顔を見ると、私もつられて笑みがこぼれる。
「うん、結衣のおかげだよ。君がそばにいてくれたから、すごく助かってる」
「そんな、大したことはしてないよ。ただ、私は彩花が好きだから、自然とそうしてるだけ」
結衣の言葉に、心臓がドキリとした。彼女が私を好きだと言ってくれるたびに、私は自分の気持ちをどうしたらいいのか分からなくなっていた。
「結衣は、私にとって本当に特別な存在だよ。でも、亮とのことがあって、まだ整理がついてない部分があるんだ」
私は正直に気持ちを伝えた。結衣には嘘をつきたくなかったし、彼女が私にとってどれだけ大切かを伝えたかった。
「それでいいんだよ、彩花。無理に自分の気持ちを決める必要はない。私はただ、君のそばにいたいだけだから」
結衣の言葉は、私にとって心強いものだった。彼女が私を無理に追い詰めることなく、ただそばにいてくれる。その優しさが、私にはとても心地よかった。
「ありがとう、結衣。君がいてくれるだけで、すごく安心できる」
そう言って私は彼女の手を握った。結衣は少し驚いたようだったが、すぐにその手を優しく握り返してくれた。その温もりが、私の心を癒してくれるようだった。
---
それから数週間が過ぎ、私たちの関係はさらに深まっていった。結衣との時間が増えるにつれて、亮との過去の思い出は少しずつ薄れていった。結衣が私にとってどれだけ大切な存在かを、日々実感していた。
しかし、そんな平穏な日々が続く中、亮が再び私の前に現れたのだ。
ある放課後、結衣と一緒に校門を出たところで、亮が待ち構えていた。彼の表情は真剣で、何かを決意しているように見えた。
「彩花、少し話があるんだ」
亮の言葉に、私は動揺した。彼とはもう終わったはずなのに、なぜ今さら話をしたいと言ってくるのだろう。
「…何の話?」
私は警戒しつつも、亮に向き合った。結衣は私のそばに立ち、静かに見守ってくれていた。
「結衣に告白したけど、振られたんだ。それで気づいたんだよ。本当に大切な存在は、彩花、お前だって」
亮の言葉に、私は驚きを隠せなかった。彼が再び私に向き合おうとしている。でも、私の心はもう以前とは違っていた。
「亮…私たちはもう終わったんだ。私は、結衣と一緒にいることを選んだ」
私がそう言うと、亮の表情は一瞬驚いたように見えたが、すぐに悔しそうな顔になった。
「でも、俺たちは婚約してたじゃないか。やり直せるはずだろ?」
「それは過去のこと。今の私は、結衣が大切なんだ」
私の言葉に、亮はしばらく沈黙していた。そして、深いため息をつきながら、少し寂しそうに私を見つめた。
「そうか…分かったよ。俺が間違ってたんだな。彩花、幸せになれよ」
そう言って亮はその場を去っていった。私は彼の背中を見送りながら、胸の中にあるわだかまりが完全に消え去るのを感じた。
「彩花、大丈夫?」結衣が心配そうに声をかけてくれた。
「うん、大丈夫。これで、本当にすっきりしたよ」
私は結衣に微笑みかけた。彼女が私を見守ってくれていることが、何よりも心強かった。
「彩花、これからもずっと一緒にいよう」
結衣が優しく私の手を握りしめた。その手の温もりが、私にとっては何よりも大切なものに思えた。
「もちろん、結衣。私たち、ずっと一緒だよ」
そう言って、私は彼女に微笑み返した。結衣と共に歩む未来が、私には何よりも輝いて見えた。
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