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エピローグ:新たな旅立ち

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ナディアは、かつての自分が歩んできた道を振り返りながら、静かに庭のベンチに腰を下ろしていた。彼女の手の中には、かつて妹ミレイユが大切にしていた小さな花が咲いている。それは二人が幼い頃、二人だけの秘密の庭に植えた花だった。

庭は静かで、風が優しく吹き抜けていた。ナディアは目を閉じ、深呼吸をした。復讐のために燃え上がった日々は、今や遠い過去のように感じられる。彼女はリカルド王子とイザベル嬢に対して冷酷な計画を練り、遂には彼らを破滅させた。しかし、今ではその行動が自分自身にとっても無意味であり、妹に対しても不必要なものであったと理解している。

ミレイユはすでに自分の足で歩き出していた。彼女は姉からの過剰な保護から解放され、自立を求める強い意志を持っていた。ナディアはそれを受け入れ、妹を手放すことを決意した。もはやミレイユに執着する必要はなく、彼女自身の人生を生きる時が来たのだ。

ナディアは、今後の自分の未来について考え始めた。これまでの人生は、常に妹を守ることに捧げられていた。だが、今やその役割は終わりを迎えた。ナディアは自分のために生きることを学ばなければならなかった。

「これから、何をすればいいのかしら……」

ナディアは自問したが、まだはっきりとした答えは見つかっていなかった。しかし、彼女は恐れを感じなかった。むしろ、心に湧き上がる新たな希望があった。これまで感じたことのない自由が、彼女の心に広がっていた。

遠くで、ミレイユの笑い声が聞こえた。彼女は今、貴族社会から離れた静かな田舎で、新しい友人たちと共に平穏な生活を送っている。彼女の成長を感じたナディアは、胸にこみ上げる感情を抑えながら微笑んだ。

「ミレイユ……あなたはもう大丈夫ね。」

ナディアは静かに立ち上がり、庭を後にした。彼女の足取りは軽く、これまで背負っていた重荷がすべて取り除かれたかのように感じた。

これから先、ナディアは自分自身のために生きていく。妹に捧げた人生を終え、新しい自分の道を歩むことを決意した。復讐に囚われていた過去を振り切り、彼女は今、未来に向かって一歩を踏み出したのだ。

空は晴れ渡り、風が心地よく彼女の髪を揺らしていた。




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