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第三章: 新たな仲間と次なる目標
しおりを挟む盟友との契約を果たし、新たな力を手に入れたイリスは、心に強い自信を抱いていた。これまでの自分では成し得なかった魔法の扱いが、今では自然と体に馴染み、かつて抱いていた不安は消えつつあった。彼女の目には、新たな目標――アーサーへの復讐――がより鮮明に映っていた。
だが、彼女は冷静だった。今の自分は確かに強くなった。しかし、貴族社会の闇に立ち向かうには、もっと力が必要だ。それは単なる魔法の力だけではなく、知恵や人脈、そして信頼できる仲間の力だ。イリスは、復讐のためには一人では限界があると考え、新たな仲間を見つけるための行動に出ることにした。
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その日、イリスは首都の市場に足を運んでいた。表向きはただの賑やかな市場だが、実は裏社会の情報が飛び交う場所でもあった。彼女はそこで情報を集め、力を貸してくれる仲間を探すつもりだった。
「ここには、私と同じように何かを求めている人間がいるはず……」
彼女は市場の雑踏を抜け、裏通りへと足を踏み入れた。そこには、表の世界とは対照的な暗くて狭い路地が広がっていた。イリスは警戒しながらも、前へと進んでいった。
すると、彼女の前に現れたのは、一人の青年だった。黒いマントを纏い、鋭い眼差しを持つその男は、ただならぬ雰囲気を纏っていた。彼の名はカイ。彼もまた、この市場で何かを探していたようだった。
「……君、何を探している?」
カイはイリスに声をかけた。彼の声には警戒心が含まれていたが、どこか同じ目的を持つ者を感じさせるものがあった。イリスは彼の目を見つめ、ゆっくりと答えた。
「私の目的は……力を得ること。そして……過去に裏切られた者に復讐を果たすために、協力者を探しているの」
その言葉を聞いたカイの瞳に、ほんの一瞬だが興味が宿った。しかし、彼はすぐに冷静さを取り戻し、短く答えた。
「復讐、か……なら、俺も同じだ。俺もある者に裏切られ、全てを失った。だから、力を得るためにここにいる」
カイの言葉は鋭く、まるで自分自身に言い聞かせているかのようだった。イリスは彼の言葉に共感し、さらに近づいていった。
「私たち、同じ目的を持っているのね……」
イリスがそう言うと、カイは小さく頷いた。彼もまた、過去に傷を負い、孤独に生きてきた者だった。そのため、互いに言葉を交わすだけで通じ合えるものがあった。
「俺は力を欲している。だが、今の俺だけじゃ足りない……お前も同じだろう?」
カイは真っ直ぐにイリスを見据えて言った。
「ええ、その通り。私も一人じゃ足りない……だから、私たちで協力して力を手に入れよう。お互いの目的を果たすために」
二人は固い決意を胸に、手を取り合うことを決めた。イリスにとって、これが初めての本当の仲間だった。カイもまた、互いに助け合いながら強くなれる存在を探していた。
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イリスとカイが手を組んだその夜、二人はアーサーの動向を探るため、貴族たちが集まる秘密の夜会に潜入することにした。その夜会は、貴族社会の裏で行われている取引や陰謀が渦巻く場所で、そこに集まる者たちは皆、力を欲する者ばかりだ。
「ここで情報を集めれば、アーサーの弱点を突けるかもしれない……」
イリスはそう言いながら、カイと共に夜会の会場へと向かった。二人は貴族の仮面を被り、慎重にその場に紛れ込んだ。会場内には豪華な装飾が施され、華やかな雰囲気が漂っていたが、その裏には闇が潜んでいるのをイリスは感じ取っていた。
「ここで無理に目立たない方がいい。まずは情報収集だ」
カイはそう言って周囲を見渡した。
二人はそれぞれ別々に動き、貴族たちの会話に耳を傾け始めた。すると、イリスの耳に興味深い情報が飛び込んできた。
「聞いたか?アーサー・フォン・クラウスが、近々大きな取引をするらしいぞ。しかも、それは彼にとってかなりのリスクが伴うとか……」
その言葉に、イリスは胸を高鳴らせた。これこそ、アーサーを追い詰めるチャンスかもしれない。彼が何かしらの危険な賭けに出ている今こそ、その隙を突くべきだ。
「カイ、聞いた?アーサーがリスクのある取引をしようとしているみたい」
イリスはすぐにカイに耳打ちした。カイもその情報に驚き、険しい表情を見せた。
「これはチャンスだな……だが、どうやってその取引の詳細を掴むかが問題だ」
二人は計画を練り始めた。アーサーの取引相手を探し出し、そこに潜入することで、彼の弱点を握る情報を手に入れようというのが目的だった。
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数日後、イリスとカイはついにアーサーの取引相手が誰であるかを突き止めた。彼の相手は、貴族社会でも悪名高い商人、レオポルドという人物だった。レオポルドは陰謀や裏取引を繰り返し、権力を手に入れてきた狡猾な男だった。
「彼を利用して、アーサーを罠にかけることができるかもしれない……」
イリスは確信を持ち、カイと共にレオポルドに接触する計画を立てた。二人はこれまで以上に慎重になりながらも、着実にアーサーへの復讐の準備を進めていった。
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