解放の王女と冷徹な皇帝

第四章: 戦争の終結と新たな未来

エルフォード王国の首都が陥落し、戦争は事実上の終結を迎えていた。王族や貴族たちは捕らえられ、民衆の目の前で裁かれることとなった。ヴェルサティスは帝国軍の後方でその光景を見守っていた。

ラウル国王、第一王子エドワード、そして第四王女カトリーナ――かつてヴェルサティスを見捨て、嘲笑した家族たちが列をなして裁判所から処刑場へと連行されていく。彼らの表情には怒り、絶望、そして恐怖が浮かんでいた。


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処刑場への行進

処刑場へ向かう道は、民衆で溢れ返っていた。彼らの怒号が空気を震わせ、瓦礫の残る街に響き渡る。

「搾取者どもを見ろ！」「貴族のせいでどれだけ苦しめられたか！」
叫び声と投げつけられる石がラウルたちに降り注ぐ。王族たちは、その声を遮断するように顔を伏せるしかなかった。

ヴェルサティスは、その光景を遠くから見つめていた。父と兄、妹の姿は彼女にとって複雑な思いを呼び起こした。かつて彼らは彼女を見下し、笑い者にし、家族としての絆を切り捨てた。それでも、彼らは自分の家族であり、全てを失う姿を見るのは心が痛んだ。

「王女様……。」
そばに立つ侍女が、彼女の表情を気遣って声をかけた。しかし、ヴェルサティスは首を振り、静かにこう答えた。
「私は、これを見届けなければならないのです。」


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ラウル国王の最期

処刑台に立たされたラウル国王は、最後まで威厳を保とうとしていた。しかし、その姿は以前のような威圧感も威厳もなく、ただ老いた独裁者に過ぎなかった。

「私は王だ！我が国の未来を守るために戦った！私を裁く権利など誰にもない！」
彼は声を張り上げたが、その言葉に民衆が応じることはなかった。怒号と嘲笑だけが返ってくる。

ヴェルサティスはその姿を見て、心の中で呟いた。
「父上、未来を守ると言いながら、民を苦しめるだけでしたね。それがあなたの選んだ道だった……。」

彼の叫びは処刑人の手によって止められた。瞬間、民衆の歓声が上がる。ヴェルサティスはその場を目を逸らさず見届け、静かに祈るように息を吐いた。


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エドワードとカトリーナの最期

続いて処刑台に上げられたのは、第一王子エドワードと第四王女カトリーナだった。エドワードは父と違い、民衆に対して一切の言葉を発しなかった。彼はただ、処刑台の上から民衆を見下ろし、冷たい目で黙り込んでいた。

「最後まで傲慢ね……。」
ヴェルサティスはそう呟いた。エドワードはかつて彼女を「身の程を知れ」と嘲笑したが、その彼もまた、今では民衆の怒りの的となり、命を終えようとしている。

そして、カトリーナの番が来た。彼女は怯えた目で民衆を見回し、泣き叫んだ。
「私は何も悪くない！父上とエドワード兄上が勝手にしたことなのに！」

その言葉は民衆には届かず、怒りをさらに煽るだけだった。カトリーナが命乞いする姿を見て、ヴェルサティスの胸には痛みと虚しさが入り混じる。彼女が見捨てられる苦しみを味わったことを思い出させたからだ。


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ヴェルサティスの複雑な心境

処刑が終わり、王族たちの時代が終わりを告げた。民衆は歓喜し、帝国軍は整然とその場を収めた。ヴェルサティスは、その様子を見つめながら立ち尽くしていた。

彼女は家族を憎んでいた。だが同時に、彼らが最期を迎える姿を見た今、その憎しみがどこか空虚なものに思えた。
「これが私の復讐だというのなら、私は何を得たのだろう？」

そんな思いが胸をよぎったが、彼女はその感情を振り払うように顔を上げた。自分が立ち止まってはいけないのだ、と自分に言い聞かせるように。


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新たな未来の始まり

戦争の後、エルフォード王国はカルディナ帝国の保護領として再建が進められた。民衆からの搾取は廃止され、教育や医療が整備されるなど、民の生活を改善する政策が次々と施行された。かつてヴェルサティスが望んでいた国の未来が、少しずつ形作られていった。

ヴェルサティス自身も、新たな王国の統治において重要な役割を担った。彼女は民の声を直接聞く場を設け、現場に赴いて人々と対話を重ねた。その姿は「解放の王女」として人々から慕われ、尊敬を集めるようになった。


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アレクサンデルの告白

ある日、皇帝アレクサンデルが彼女の元を訪ねてきた。戦争が終わり、日々の忙しさが少し落ち着きを見せ始めた時期だった。

「ヴェルサティス、そなたにはこれからも帝国の未来に力を貸してほしい。そして、そばにいてほしい。」
彼の言葉は思いがけないものだった。

「……そばに？」
ヴェルサティスは驚いて彼を見上げた。

「妃としてだ。」
アレクサンデルの言葉には揺るぎない誠実さがあった。

ヴェルサティスは戸惑いながらも、しばらく考えた末に答えた。
「それが民のためになるのであれば、喜んでお受けします。」

こうして、彼女は帝国の妃として迎えられることとなった。それは、彼女が家族を失い、全てを捨ててまで掴み取った新たな未来だった。


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エピローグ

結婚式は盛大に行われ、帝国とエルフォード王国の民がともに祝福する日となった。ヴェルサティスは、自分がこれからも民のために尽力することを心に誓った。

かつての苦しみは決して消えることはない。それでも、彼女はその痛みを糧にして、新しい未来を築く決意を胸に抱いていた。

「私の意志で、この国を変えてみせる。」

ヴェルサティスの瞳に映るのは、希望に満ちた新たな世界だった。