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第4章: 再会と後悔する王子

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キャラは冒険者として各地を巡り、数々の困難を乗り越えた後、再び王都に足を踏み入れることとなった。かつての自分がいた場所、そして婚約破棄によって失ったはずの未来。しかし、今のキャラはその過去に縛られることはなかった。転移魔法を駆使して自らの力で道を切り開き、すでに「どこでも現れる冒険者」として名声を確立していた。

王都に戻る理由は、ある依頼を受けたためだった。王都の一部で魔物が現れるという噂が広まり、王国騎士団が動いていたが、未だに解決の糸口が見つからないという。貴族や商人たちの間で不安が広がる中、信頼できる冒険者に助けを求める声が上がった。その中で、キャラの名が真っ先に挙がったのだ。

「もう王都に戻ることはないかもしれないと思っていたけれど……」

馬車の中で、キャラは窓から流れる景色を眺めながら静かに呟いた。王都に戻ることが、自分にとって何を意味するのかを考えたこともあったが、今となっては過去の出来事に囚われることはなかった。彼女にとって、婚約破棄はすでに終わったことであり、今の自分を形作る一つのきっかけに過ぎなかったのだ。

王都の門が見えてきた時、ふとキャラの胸に淡い感情がよぎった。かつてこの地で生活していた頃の自分を思い出すと、今の自分がどれほど成長したかを実感する。かつての自分は、レオの婚約者としての未来しか見えていなかった。しかし、今はどうだろう。自らの力で未来を切り開き、誰にも縛られずに自由に生きている。

「私は、自由よ」

キャラは改めてそう心に誓いながら、馬車を降りて王都に足を踏み入れた。

王子との再会

キャラが王都に戻ったという噂は、すぐに貴族たちの間で広がった。かつての侯爵令嬢であり、今では冒険者として知られる彼女の名は、あまりにも有名になっていたのだ。王都中が彼女の帰還に湧く中、その噂は王城にも届いた。

「キャラが戻ってきた……」

その報告を受けたレオは、しばらく言葉を失った。かつて自分が婚約破棄を告げた相手、彼女があれほどの冒険者として成長しているとは思いもよらなかった。レオの胸には、かつての決断に対する後悔の念が渦巻いていた。彼は平民の恋人と新しい生活を望んでいたが、それは期待したものとは異なり、今では関係もうまくいっていなかった。

「私が間違っていたのか……?」

レオの心は揺れ動いていた。平民の恋人との生活は、彼が思い描いていた自由なものとは程遠かった。彼女は貴族社会に適応できず、彼らの関係は次第に冷めていった。そんな中、キャラの活躍が耳に入るたびに、彼の心に後悔が芽生えていった。自分が失ったものの大きさを、ようやく痛感し始めたのだ。

「彼女にもう一度会いたい……」

レオは再びキャラと話す機会を求めた。彼女が王都に戻ってきたという噂を聞きつけ、彼は自ら動いて彼女の居場所を探し出す。そしてついに、街の一角でキャラが依頼を受ける商人の元を訪れていることを知ると、すぐさまその場所に向かった。

再会と冷たい拒絶

商人の家で依頼の詳細を確認していたキャラの元に、突然レオが現れた。彼は迷いもなく彼女に近づき、その目には何かを取り戻したいという焦燥感が宿っていた。

「キャラ……」

彼の声に振り返ったキャラは、そこに立っているレオを見て、内心で冷ややかな笑みを浮かべた。かつての婚約者が、何を求めてここに来たのかは容易に想像がついたからだ。

「久しぶりね、レオ様。どうなさったのかしら?」

キャラは冷静な声で問いかけたが、その言葉にはかつての親しみはなかった。レオは一瞬躊躇したが、すぐに彼女の前に立ち、まっすぐに目を見つめながら話し始めた。

「キャラ……もう一度、話がしたい。あの時のことを、後悔しているんだ」

レオの言葉には、明らかな後悔と未練がにじみ出ていた。彼は新しい婚約者との関係が破綻寸前であることを明かし、キャラとの婚約を破棄したことが間違いだったと訴えた。だが、キャラは彼の言葉を冷静に受け止め、微塵も心を動かされることはなかった。

「そう……それで、何を望んでいるの?」

キャラはただ冷静に問い返した。彼女の言葉に、レオは一瞬戸惑いを見せたが、次の瞬間にはその目に希望が宿った。

「もう一度、やり直せないか?僕は君を……」

「やり直す?」

キャラはレオの言葉を遮り、鋭い眼差しを向けた。その瞳には冷たい怒りが宿っていた。彼女は一歩彼に近づくと、静かに、だが断固とした口調で言葉を紡いだ。

「レオ様、私はもうあなたの望む場所にはいないのよ」

その言葉は、レオにとっては致命的な一撃だった。彼はかつてのキャラが、再び自分のもとに戻ってくることを期待していた。しかし、目の前のキャラはかつての彼女ではなかった。強く、独立した女性として自らの道を進んでいるのだ。

「私は、自分の力で生きていくわ。あなたに戻る理由など、一つもないの」

キャラはそう言い残すと、振り返ることなく「どこでもドア」を使ってその場を去った。レオが驚きと共に手を伸ばす前に、彼女の姿はもうどこにもなかった。彼女がいたはずの場所には、ただ風が吹くだけだった。

王子の後悔

その場に立ち尽くすレオは、キャラの冷たい拒絶に打ちのめされていた。かつて自分が手に入れたはずの未来が、今や手の届かないものとなってしまったことを、ようやく彼は理解したのだ。

「僕は……なんという愚か者だったんだ……」

レオは、再びキャラと話すことはできないだろうという現実に直面しながら、深い後悔に胸を締め付けられていた。キャラはもう彼の手の届かない存在になってしまった。彼女の姿が消えた後、残されたのは彼の孤独と虚しさだけだった。

そしてキャラは、彼の後悔を知ることなく、自分の新たな未来へと進んでいくのだった。

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