魔女は、裁けない

失礼いたしました。続けてエピローグを完結させます。


---

リディア姫が回復してから数か月が経過し、王国には再び穏やかな日々が訪れていた。魔女狩りと魔女裁判の廃止が正式に告知され、これまで無実の人々が理不尽に命を奪われることが続いていた状況は、ついに終わりを迎えた。国王の英断は王国中に大きな波紋を広げ、民衆の間でその是非が議論されたものの、最終的にはこの改革が受け入れられ、平和と正義の名のもとに新しい時代が始まった。

だが、その過程は決して平穏なものではなかった。特に、マリーカを火あぶりに処刑しようとした教会の関係者たちは、その罪を問われ、厳しい裁きを受けた。彼らは、自分たちが無実の罪で命を奪った犠牲者たちと同じ罰を受けることとなったのだ。教会は、自らの過ちを正すことを余儀なくされ、彼らに対する公正な裁判が行われた。その結果、多くの関係者は、かつて彼らが行ってきた「正義」の名のもとに、自らが加害者となった罪に向き合わなければならなかった。

彼らが手を下した無実の人々の命に対する責任は重く、その重さに耐えきれず、命を落とす者もいた。これまで「正義」を振りかざしていた者たちが、自らの罪に気づき、彼らが奪った命と同じ苦しみを味わうことになったのである。その処罰が行われる光景は、かつての魔女狩りの犠牲者を思い起こさせたが、今回は正当な裁きとして執行された。

王国の民衆は、これらの裁判を通じて新しい教訓を学んだ。無実の人々が不当な理由で命を奪われることがどれだけ恐ろしいことであったか、そして正義とは何かということを深く考えさせられた。そして、これからは真の正義を実現するために、権力の乱用を許さない国へと変わっていく決意を新たにしたのである。

こうして、王国は過去の過ちを振り返り、罪を償うことで新たな道を歩み始めた。マリーカが導いたこの変革は、確実に国に平和をもたらした。彼女の存在が国に与えた影響は計り知れず、魔女として恐れられるのではなく、尊敬される存在へと変わっていった。

その後、マリーカは再び西の森へと戻り、静かな生活に戻った。しかし、彼女の元を訪れる人々は絶えず、魔女という存在がもはや恐れの対象ではなく、救済の象徴として認識されるようになっていた。彼女は自分の使命を果たしながら、静かに王国を見守り続けた。

一方、リュカ王子はマリーカに対する思いを胸に秘めたまま、日々王国のために尽力していた。彼女に求婚した際、マリーカは返事を濁したが、リュカはそれを無理に押し進めようとはしなかった。彼は彼女が自分の道を見つけ、いつか再び彼女の気持ちを聞ける日が来ることを信じていた。

マリーカは、西の森で穏やかな生活を送りつつも、リュカとの対話やその後の国の変化を心の中で考え続けていた。彼女がもたらした変革は王国に深い影響を与え、これからもその影響は続いていくだ
24h.ポイント 0pt
0
小説 193,190 位 / 193,190件 恋愛 58,299 位 / 58,299件

あなたにおすすめの小説

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

くだらない結婚はもう終わりにしましょう

杉本凪咲
恋愛
夫の隣には私ではない女性。 妻である私を除け者にして、彼は違う女性を選んだ。 くだらない結婚に終わりを告げるべく、私は行動を起こす。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

結婚一年目の夫婦ですが愛はありません

杉本凪咲
恋愛
「ニル。僕は彼女を愛している。離婚してくれ」 不倫を目撃した私に、夫は冷たい声でそう言った。 それは結婚一年目の出来事だった。