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王宮の陰謀
しおりを挟むお茶会が終わり、リリスは令嬢たちに別れを告げて、グレゴール公爵とセリーヌ公爵夫人と合流した。リリスは、日々の疲れを感じさせず、いつもの穏やかな笑顔を浮かべていたが、公爵夫妻は彼女の小さな体がどれほど疲れているかを心配していた。
一方で、王宮の中では、別の場所で暗い影が動いていた。高貴な衣装を身に纏った数人の貴族たちが、秘密裏に集まり、声をひそめて話し合っていた。
「国王は老いている…そして、次の王位継承者をどうするかが問題だ。」一人の貴族が冷酷な声で言った。
「エレオノール王女は心優しすぎる。国のためにはもっと強い指導者が必要だ。」別の貴族が続けた。
彼らの話題は、次期国王の選定に関するものであった。そして、彼らの考えは、国のためと称して、自らの権力を維持しようとするものであった。彼らはエレオノール王女の立場を脅かし、彼女を傀儡にして、自らの思い通りに操ろうと計画していたのだ。
「しかし、彼女は国王のお気に入りだ。我々が動くには、慎重さが必要だ。」最年長の貴族が言葉を続けた。
「そうだ。何もかも完璧に行わなければならない。国王に直接的な反発は無謀だ。」他の貴族たちもうなずき、密かに決意を固めた。
そんな中、彼らは不意に王宮の廊下で、リリスの姿を目にする。リリスは、ただ無邪気に歩いていただけだったが、彼女の澄んだ瞳に映り込んだ瞬間、彼らは何か不思議な感覚に襲われた。
「この少女…何者だ?」一人が小声で囁いた。
だが、彼らは知らなかった。リリスの瞳には、最も強力なスキル「汝の罪を懺悔せよ」が宿っていたのだ。彼女の瞳に映し出されることで、罪を告白せずにはいられなくなるという力だ。
貴族たちは、なぜか心の内で感じた罪悪感が言葉となり、次々と口から漏れていった。「我々の計画は…国王を陥れ、エレオノール王女を操ることだ…。」一人がつぶやくと、他の者たちも次々と自らの罪を告白し始めた。
廊下に居合わせた者たちは、何が起きたのか理解できずに戸惑っていた。リリスはただ、その場に佇んでいただけなのに、彼らは自ら進んで陰謀を暴露してしまったのだ。
「なぜこんなことを…!」陰謀を企てていた者たちは、困惑と恐怖で震えながらも、その力に抗うことはできなかった。
その後、王宮での陰謀は瞬く間に露見し、関わった者たちは次々と逮捕された。さらに、その場に居合わせた別の貴族たちも、自らの罪を告白し、王宮の浄化が一気に進んだ。
そして、不思議なことに、この事件とリリスの関連性は証明されることはなかった。ただ、彼女の澄んだ瞳が、王宮に新たな正義の風をもたらしたことだけは、誰もが感じ取っていた。
リリスは、何事もなかったかのようにその場を立ち去り、再び穏やかな日常に戻っていったのだった。
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