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第七章: 新たなスタート
しおりを挟む偽りの関係を終わらせ、智浩と純は晴れやかな気持ちで新たな日々を迎えていた。母親も真実を受け入れ、智浩が心から幸せになれることを願ってくれていることが確認できたことで、智浩の心には安堵が広がっていた。純もまた、友人としての関係が再確認され、これまでの気苦労から解放されて一息ついていた。
そんなある日、智浩と純は大学のキャンパスで昼食を共にしていた。久しぶりに普通の友人同士として時間を過ごすことができるこの瞬間に、智浩は心からの楽しさを感じていた。
「やっぱり、これが俺たちの一番自然な形だな」と智浩が笑いながら言うと、純も微笑み返した。
「そうだね。無理に恋人のフリをしていた時期も、今となってはいい思い出かもしれないけど、やっぱり普通に友達でいられるのが一番だ」
智浩は純の言葉にうなずき、改めて友情の大切さを感じていた。二人はお互いの気持ちを隠さず、ありのままでいることがどれだけ心地よいかを再確認したのだ。
その時、キャンパス内を歩いていた数人の学生たちが、遠巻きに智浩と純を見ながらひそひそと話しているのに気づいた。智浩は小声で純にささやいた。「あれ、まだ俺たちのことを恋人同士だと思ってる奴らがいるみたいだな」
純は苦笑しながら、「まあ、僕が女性に見える限りはしょうがないかもね。でも、もう気にしないよ」と言って肩をすくめた。智浩も笑いながら、「それなら、これからは堂々と友人として振る舞おうぜ」と応じた。
その後、純が所属する演劇サークルの公演が近づき、智浩もそのサポートに駆り出されることになった。純は相変わらず女性役を演じるため、智浩は彼がどれだけ役に入り込むのか改めて感心していた。純は自分の「女装」も演技の一環と割り切っており、サークル内での評判も上々だった。
公演当日、智浩は観客席から純の演技を見守った。舞台上で堂々と女性役を演じる純は、以前と変わらない美しさと華やかさを放っていた。智浩はそんな純の姿を見て、彼の才能に改めて敬意を抱いた。公演後、純が舞台裏でほっと一息ついていると、智浩が花束を持って現れた。
「お疲れさま、純。今日の舞台、最高だったよ。さすがだな」
純は少し照れくさそうにしながらも、智浩から花束を受け取り、満足げに笑った。「ありがとう、智浩。君が見てくれていると、やっぱり気合が入るよ」
二人はそのまま夜の街を歩きながら、演劇や今後の目標について語り合った。純は演劇への情熱を語り、将来的にはもっと大きな舞台で活躍することを夢見ていると話した。智浩はそんな純の夢を応援し、「いつか舞台で大成功を収めるお前の姿を見たい」と心から励ました。
その夜、純がふと真剣な表情で智浩に向き直り、少し照れながら言った。「智浩、本当にありがとう。いろいろなことがあったけど、君がいてくれたからこそ、僕はここまでやってこられたんだ」
智浩もまた真剣な表情で、「こちらこそだよ、純。お前が支えてくれたからこそ、俺も自分の弱さと向き合うことができたんだ」と応じた。二人はその言葉を交わしながら、互いの存在がどれだけ自分にとって大切かを再確認した。
その後、二人は学生生活を共に送りながら、それぞれの目標に向かって進んでいった。智浩は母親との関係をより深め、家族の愛情をしっかりと感じるようになり、純もまた演劇の道で大きな一歩を踏み出していった。
そして、ある日、純が智浩に「プロの舞台に出演することになった」と報告した時、智浩は心から彼を祝福した。「やったな、純!ついにお前の夢が叶ったんだな」
純は満面の笑みでうなずき、「これも智浩のおかげだよ。君がいてくれたから、僕はここまで来られた」と感謝の言葉を口にした。
智浩は照れくさそうに頭をかきながら、「そんなの、俺も同じだよ。お前がずっと俺を支えてくれたからな」と言った。二人は笑い合い、固い握手を交わした。その握手には、これまでの苦難と偽りから真実へと至った友情がすべて詰まっていた。
こうして、智浩と純はお互いにとってかけがえのない存在となり、人生を共に歩んでいく友人として新たなスタートを切ったのだった。
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