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第2章 - 再起の決意と新たな力
2-1: 孤独な旅の始まり
しおりを挟む翌朝、エリザはこれまでとは違う心持ちで目を覚ました。昨日までの絶望感はまだ残っていたが、その裏にある新たな決意が彼女を支えていた。王子との婚約破棄、家族からの冷遇、そしてフローレンスに対する憎悪の念。それら全てを捨て去り、自分自身の力で生きることを決意したエリザは、まず行動に移さなければならなかった。
「ここを出る時が来たわ……」
彼女は自分にそう言い聞かせ、荷物をまとめ始めた。豪華なドレスや装飾品には目もくれず、必要最低限の服と書物をカバンに詰め込む。ドーラン公爵家の一員としての特権や富など、今の彼女には何の意味も持たなかった。それよりも、エリザにとって重要だったのは、新たな人生を始めるための準備だった。
彼女が部屋を出るとき、ふと振り返る。これまでの人生の大半を過ごした部屋だ。幼少期から大切にしてきた小さな記憶の欠片が、この部屋に詰まっている。しかし、今やそのすべてが遠い過去のものに思えた。
「さようなら、過去の私……」
エリザはそう呟き、扉を静かに閉めた。これから彼女が向かうのは未知の世界だった。貴族社会の枠を超え、自分の力を試す場所を探しに行く。だが、その道は決して平坦ではないことを、エリザは薄々感じていた。彼女は、家族や婚約者に頼ることなく、自分の力だけで生きていくことを決意したのだから。
邸宅を後にしたエリザは、外の世界の冷たさを感じた。朝の風が肌を刺すように吹きつける。今までは豪華な馬車や使用人に囲まれていたが、今の彼女には何の後ろ盾もなかった。貴族の娘として育ったエリザには、自分で生きていくための具体的な手段はまだない。だが、彼女の中には確信があった。これまで抑え込んでいた何かが、今まさに解き放たれようとしていると。
「私にはまだ見えていない力がある……きっと、それを手に入れる時が来る」
エリザはそう自分を奮い立たせ、歩き出した。目的地もなく、ただ街を歩く彼女だったが、どこか不思議な引力のようなものを感じていた。それは、彼女の人生を導く何か大きな存在が、彼女を新たな運命へと誘っているかのようだった。
街を歩くと、これまで気づかなかった現実が目の前に広がっていた。貴族社会の華やかさとは対照的に、平民たちは日々の生活に追われ、苦しみながらも懸命に生きていた。市場の喧騒、働く人々の姿、道端に座り込む子供たち——すべてがエリザにとって新鮮で、同時にどこか胸を締め付けられるような思いがした。
「私はこれまで、こんなにも狭い世界に閉じこもっていたんだ……」
エリザは新しい視点で世界を見つめ直しながら、自分がこれから何を成すべきかを模索し始めた。だが、その時、ふと目の前に見慣れない建物が現れた。古びた石造りの建物で、その佇まいはどこか荘厳で神秘的だった。何かに導かれるように、エリザはその建物へと足を進めた。
「ここは……?」
扉の前に立つと、重厚な木の扉がゆっくりと開いた。中からは薄暗い光が漏れ、どこか神秘的な雰囲気が漂っていた。エリザは躊躇することなく、その中へと足を踏み入れた。そこには、無数の古い書物が並ぶ図書室のような空間が広がっていた。
「ここに来た理由はわからないけれど……何かが私を呼んでいる気がする」
エリザはゆっくりとその場を歩き回り、書棚に並ぶ本に目を走らせた。すると、古びた本の一冊が、彼女の目に留まった。手に取ってみると、その表紙には見慣れない文字が刻まれている。まるで、彼女の運命がそこに書かれているかのように感じられた。
「この本……一体何なの?」
その瞬間、彼女の中で何かが目覚め始めた感覚があった。これまで知らなかった自分の一部が、今まさに解き放たれようとしているのだ。
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