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第1章 - 婚約破棄の宣告
1-3: 新たな決意と運命の兆し
しおりを挟むエリザは自分の部屋に戻り、暗い部屋の中で一人、涙を流していた。王子との婚約破棄、家族からの冷たい態度、そして何より、妹フローレンスの勝ち誇った笑顔が彼女の心を引き裂いていた。エリザはこれまで、どんなに辛いことがあっても耐え抜いてきた。だが、この婚約破棄の出来事は、彼女の人生を根底から揺るがすものだった。
彼女はベッドに倒れ込み、天井をぼんやりと見つめた。思い出されるのは、幼少の頃からの苦しい日々ばかりだ。エリザは決して怠惰ではなかった。むしろ、家族に認められたい一心で努力を重ねてきた。学問、礼儀作法、社交術、どれも完璧にこなそうとした。それなのに、いつも家族からは冷たい視線を向けられ、褒められることはなかった。
「どうして私はこんなにも……無価値なのかしら……」
自分の声が部屋に響く。彼女は孤独感に打ちひしがれ、涙が止まらなかった。全てが無意味に思えた。家族から愛されず、婚約者からも見捨てられた。未来は真っ暗で、どこに希望を見いだせばいいのか分からなかった。
しかし、その時だった。部屋の窓から、微かに冷たい風が入り込んできた。エリザはその風に顔を向け、涙を拭いながら立ち上がった。月明かりが薄暗い部屋を照らし、彼女の影を長く引き伸ばしていた。その静寂の中で、エリザはふとあることに気付いた。
「これで、私はもう誰にも期待されない……」
その考えは、奇妙な安堵感をもたらした。今までは、家族や婚約者のために生きることを強いられてきた。彼女がやるべきこと、期待されること、それらは全て他人が決めたものだった。しかし今、彼女はすべてを失った。そして、それが逆に自由を意味するのではないかと感じたのだ。
「私は……私自身のために生きるべきなんだわ……」
エリザは自分の言葉に驚いた。今まで、彼女は誰かの期待に応えるために生きてきた。それが普通だと思っていた。しかし、王子との婚約が破棄され、家族からも冷遇されている今、彼女にはもう従うべき規範も、期待もない。ならば、自分のために生きて何が悪いのだろうか?
「そうよ、もう誰にも頼らない。誰にも期待しない。これからは、自分の力で生きていくの。」
エリザの中に、徐々に新たな決意が芽生えてきた。それは、これまで感じたことのない強さと自立の感覚だった。彼女はこれから、自分自身のために生きる。そして、かつて自分を裏切った全ての者たちに見せつけるのだ——彼女がどれほどの力を秘めているかを。
その夜、エリザは生まれて初めて、本当の自由を感じた。誰にも縛られず、誰にも干渉されない自分の未来を思い描く。これまで隠されていた自分の力を解放し、王族や貴族社会で新たな地位を築いていくことを決意する。もう誰にも操られない。彼女は、自分の力で未来を切り開いていくのだ。
その翌日、エリザは家を出る決意を固めた。公爵家の冷たい壁に囲まれて生きる必要はもうない。外の世界で自分の力を証明し、誰もが驚くような存在になるのだ。彼女は自分を捨てた者たちに、痛烈な「ざまぁ」を味わわせるための新たな一歩を踏み出す準備を整えていた。
エリザが窓の外に目をやると、夜空に光る星が彼女を見つめているように感じた。それはまるで、彼女の新たな旅路を祝福しているかのようだった。
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