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第7章: リムリ村の異変

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タクヤとエドガーは、リムリ村へ向けて歩みを進めていた。リムリ村はフィオーレの村から徒歩で数時間の距離にあり、普段は友好的な交流が行われている。しかし、最近の異変が原因で、リムリ村からの連絡が途絶えがちになっていた。

「リムリ村の人たち、大丈夫かな…」

タクヤは少し不安な気持ちを抱えながら、エドガーと並んで歩いていた。道中、リムリ村の噂話を聞いたことが頭をよぎる。

「最近、リムリ村では奇妙な影が村の中を徘徊しているとか、夜になると誰もいないのに物音がするらしいぞ…」

そういった話はただの噂かもしれないが、タクヤの心をざわつかせるには十分だった。エドガーも慎重な表情を崩さないまま、タクヤに声をかけた。

「タクヤ殿、心配しなくても良い。何が起きているかを確かめ、村のためにできることを考えれば良いだけじゃ」

エドガーの言葉に少し安心しつつ、タクヤは決意を新たにした。やがて、リムリ村の入り口が見えてきた。普段は活気ある村のはずが、今日は不気味な静けさに包まれている。

「ここがリムリ村…?」

タクヤは少し緊張しながら村の中を見渡した。人影はほとんどなく、家々の窓も閉ざされている。まるで何かに怯えているかのようだ。

「まずは村長の家に向かおう。何か情報が得られるかもしれん」

エドガーに従い、タクヤは村長の家へと向かった。村の中心部にある立派な家だが、今はその門も閉ざされている。エドガーが門を叩くと、しばらくしてからゆっくりと扉が開き、疲れた表情をした村長が顔を出した。

「エドガー様…おいでいただいて感謝します」

村長は深々と頭を下げた。タクヤはその様子にただならぬ事態を感じ取った。

「何が起きているんですか?」

タクヤが尋ねると、村長は重い口調で説明を始めた。

「それが…最近になって、村の作物が急に枯れ始め、家畜も次々と病に倒れてしまったのです。村の者たちはこれを呪いだと言って恐れておりますが、原因は分かっていません。ただ、夜になると何かが村を徘徊しているという噂が広がり、不安が増すばかりです」

「何かが村を徘徊している…?」

タクヤは不安げにエドガーを見るが、エドガーも眉をひそめていた。

「これは一筋縄ではいかんかもしれんのう…だが、わしらで何とかしてみせる。まずは夜まで待ち、その正体を確かめようではないか」

タクヤもエドガーの提案に頷いた。村長に感謝されつつ、彼らはリムリ村で一晩を過ごすことにした。

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