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第三章:新しい聖女の失墜と真実の発覚
しおりを挟むアゲーラが隣国の村で新たな生活を築いていた一方、彼女が追放された王国では、事情が変わりつつあった。アゲーラの代わりに新たな聖女として迎え入れられたアリシアは、宮廷での野心を果たし、ついに自らの地位を手に入れた。だが、アリシアは真の癒しの力を持っていなかった。そのため、彼女が聖女として人々のために働くというのは、単なる偽りに過ぎなかったのだ。
最初のうちは、アリシアは聖女として振る舞い、宮廷の中で自分の美貌と知恵を活かして支持を集めていた。しかし、王国中で疫病が広まり始めると、次第にその化けの皮が剥がれていく。アリシアは癒しの力を持たず、ただの装飾として聖女の称号を持っているに過ぎなかった。疫病に苦しむ人々が王宮に助けを求めて押し寄せても、アリシアは何もできなかった。
「聖女様、どうかこの子を助けてください!」
「私たちはあなたのために祈りを捧げ、希望を託しています!どうか疫病を鎮めてください!」
病に苦しむ民たちが次々とアリシアにすがりついたが、彼女には何の力もなかった。民衆の期待を裏切り続ける日々に、アリシアの名声は急速に落ちていった。やがて、人々は彼女に対して不信感を抱くようになり、疑念の声が囁かれるようになった。
「アゲーラ様なら、きっと私たちを救ってくださったに違いない…」
「そうだ、アゲーラ様が追放されたのは何かの間違いだったんじゃないか?」
次第に民衆の間で、アゲーラが追放されたのは何らかの陰謀によるものではないかという噂が広まり始めた。その噂はやがて宮廷内にも届き、国王の耳にまで入ることとなった。王自身もアリシアに対して疑念を抱くようになり、彼女を聖女にしたことを後悔し始めた。しかし、すでに決断してしまったことを取り消すのは、彼にとっても苦しい選択だった。
そんな中、エリオットが王宮に姿を現した。彼はアゲーラが無実であることを証明し、真実を伝えるために危険を冒して王国に戻ってきたのだ。彼は民衆の中に紛れ込みながら、アゲーラが村で人々を癒し、疫病から守っている事実を人々に伝え始めた。彼の言葉はすぐに広まり、アゲーラの無実と真の聖女としての力が徐々に知られるようになった。
やがて、国王はエリオットを呼び寄せ、直接話を聞くことにした。王宮の謁見室で再び王と向き合ったエリオットは、毅然とした態度でアゲーラが追放された経緯について話し始めた。
「陛下、アゲーラ様は決して不浄の聖女などではありません。彼女は隣国の村で多くの人々を救い、その癒しの力によって疫病を抑え込んでいます。それに引き換え、アリシア様は何の力も持たず、ただの偽りの聖女に過ぎません。」
エリオットの言葉に、国王は驚きと共に困惑した表情を浮かべた。彼もまた、アリシアが聖女としての力を持っていないことを実感していたが、アゲーラの追放が誤りであったとは認めたくなかった。しかし、エリオットが続けて真実を証言すると、王も次第に現実を直視せざるを得なくなった。
「もし、エリオットの言うことが本当ならば…」国王は一瞬、つぶやくように言った。
「アゲーラを呼び戻し、再び聖女として迎え入れるべきだろうか…?」
その時、宮廷の重臣の一人が口を開いた。「陛下、それが正しい決断かと思われます。アリシアの真偽が明らかになれば、国の信頼を取り戻すためにも必要でしょう。」
こうして、国王はアゲーラの無実を認め、彼女を再び聖女として迎え入れる決断を下した。アゲーラが追放されてから長い年月が経っていたが、その間に彼女が培ってきた力と信頼が、再び彼女を王国に導くこととなったのだ。
アゲーラの帰還が決まると、宮廷内はにわかにざわめき始めた。アリシアはその知らせを聞いて青ざめ、今まで築き上げてきた地位が失われることへの恐怖に怯えた。彼女は最後の悪あがきとして、アゲーラを再び貶める計画を企てたが、すでに彼女の陰謀は露見しており、王も重臣たちも彼女の嘘を見抜いていた。
やがて、アリシアは追放され、彼女が持っていた地位と名声は全て失われることとなった。宮廷の人々からも完全に信用を失い、彼女は孤独と屈辱の中で王国を去るしかなかった。
一方、アゲーラの帰還の日がやってきた。彼女は静かに王宮の門をくぐり、再び王の前に立つこととなった。かつて彼女を追放した国王は、彼女の姿を見るなり深々と頭を下げ、心からの謝罪を述べた。
「アゲーラ、君を追放したことは私の過ちだった。どうか、再びこの国の聖女として人々を導いてほしい。」
アゲーラは一瞬、過去の屈辱が蘇るのを感じたが、すぐにそれを払いのけた。彼女の心には、既にエリオットや村の人々との温かな記憶が根付いていた。そして、彼女は国王に微笑みかけ、静かにうなずいた。
「陛下、私はこの国のため、そして民のために尽力することを誓います。しかし、それは聖女としてではなく、一人の人間としてです。」
その言葉に国王は驚き、そして深い感謝の念を抱いた。アゲーラの優しさと強さに触れ、彼もまた再び彼女を信頼するようになった。そしてアゲーラは再び、民たちの希望として、王国に癒しと平和をもたらす存在となったのだった。
しかし、アゲーラの心の中には常にエリオットと村での日々があり、彼女はこの逆転劇の中でも、自分自身の信じる道を歩み続けていく決意を新たにしていた。
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