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猫との出会い

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ある穏やかな午後、公爵家の庭ではリリスが静かに花を摘んでいました。花々が風に揺れ、リリスの周りを美しく彩ります。彼女は無邪気に微笑みながら、小さな花束を作っていましたが、突然、何かの気配に気づいて顔を上げます。

庭の隅から、小さな鳴き声が聞こえてきました。「ミー、ミー…」リリスはその声に耳を傾け、音のする方へと歩を進めます。すると、茂みの陰から一匹の白い子猫が現れました。少し痩せたその子猫は、リリスを見つめており、心細そうな様子です。

リリスはその姿に心を奪われ、そっと手を差し出しました。子猫は少し警戒しつつも、リリスの手に顔を擦り寄せてきます。リリスの顔に自然と笑みが浮かび、彼女は優しく子猫を抱き上げました。

そのまま、公爵夫妻のもとへと駆け寄ったリリス。小さな手で子猫を大切に抱え、熱心にジェスチャーを交えながら二人に見せます。リリスが一生懸命に意思を伝える姿に、夫妻はほほえみを抑えながらも、彼女の様子を少しだけ見守ることにしました。

夫妻は、リリスの可愛らしい動きを見ながら心の中で微笑んでいました。小さな子供が子猫や子犬を連れてくれば、それが「飼いたい」という意味であることを容易に察しがつくものでしたが、リリスの仕草があまりにも愛らしかったため、二人はしばらくその様子を楽しむことにしたのです。

リリスはジェスチャーをさらに力強くし、子猫を見せながら二人の顔を見つめます。その様子に、ついに夫人が優しく声をかけました。「この子を飼いたいのね?」

リリスは嬉しそうに力強く頷きます。その純粋な願いに、夫妻は微笑みながらお互いに頷き合い、リリスが望む通り、子猫を家族として迎えることにしました。

「リリス、この子と一緒に素敵な時間を過ごしましょうね。」と公爵が声をかけると、リリスは満面の笑みを浮かべ、再び子猫を抱きしめました。

こうして、リリスと一匹の白い子猫との新しい生活が始まりました。夫妻の温かい見守りのもとで、リリスは新たな友達との絆を深めていくのです。
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