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第五章: 裏切り者への復讐(前篇)
しおりを挟む遺跡へ向かう準備が整い、アイリスと彼女の仲間たちはついに出発の日を迎えた。日の出前の静けさの中、彼らは王宮の裏口からひっそりと抜け出し、まだ薄暗い街並みを抜けて山間の道を進んでいた。行き先は、王国の北部に位置する古代遺跡「アスカロン」。そこには、レオナルド王子が狙う強大な力が眠っていると言われている。
アイリスは、道中の景色を見ながら、これまでのことを思い返していた。自分が再びこの異世界に召喚された理由、そして、レオナルド王子の裏切り。彼女はすべてを許すつもりはなかったが、今は冷静さを保ち、確実に計画を進めることが最優先だった。
「アイリス様、ご機嫌はいかがですか?」
リカルドが馬を並べて声をかけてきた。彼の穏やかな声が、アイリスの緊張を和らげる。
「ありがとう、リカルド。私は大丈夫です。今はただ、無事に遺跡に到着し、私たちの計画を実行することを考えています。」
アイリスは微笑みながら答えたが、その瞳には強い意志が宿っていた。リカルドもそれに気づき、真剣な表情で頷いた。
「そうですね。私たちは必ず成功します。王子の計画を阻止し、この国を守るために。」
リカルドの言葉に、アイリスは再び心を引き締めた。彼女はこの冒険の先に待つであろう試練を乗り越えるために、仲間たちと共に全力を尽くす決意を固めていた。
**◇**
数日間の旅を経て、アイリスたちはついにアスカロン遺跡の入口にたどり着いた。そこは大きな岩山に囲まれた、古びた石造りの構造物で、何世紀も前から手つかずのまま残されているように見えた。遺跡の前に立つと、その巨大さと歴史の重みに圧倒される。
「ここが…アスカロン…」
アイリスは息を呑みながら、その荘厳な光景に見入った。遺跡の入口には、古代文字が刻まれた石碑が立っており、その文様が神秘的に輝いていた。
「さあ、行きましょう。時間は限られています。」
老女の魔法使いが静かに言葉を発し、杖を掲げた。その瞬間、石碑が音を立てて動き、遺跡の入口がゆっくりと開かれた。内部には、長い年月を経て形成された暗い通路が続いていた。
「気をつけて進みましょう。何が待っているかわかりませんから。」
アイリスは仲間たちに警告しながら、ゆっくりと遺跡の中へと足を踏み入れた。彼女の心は緊張で張り詰めていたが、同時に、決意の炎が強く燃えていた。
**◇**
遺跡の中はひんやりとしており、古びた石の壁に苔が生え、長い間人の手が加えられていないことを物語っていた。暗闇の中で、アイリスたちは慎重に進み、内部の様子を探った。ところどころに、古代の遺物や魔法の痕跡が残されており、それがこの場所の神秘的な雰囲気をさらに高めていた。
やがて、一行は大広間にたどり着いた。そこには、巨大な魔法陣が刻まれた祭壇があり、その中心には不気味な光を放つクリスタルが浮かんでいた。
「これが、王子が求めていた力…?」
アイリスはそのクリスタルを見つめながら、立ち止まった。その光は彼女に強い不安を感じさせると同時に、何かしらの呼びかけをしているようにも思えた。
「気をつけてください、アイリス様。このクリスタルは強大な力を持っていますが、同時に危険でもあります。」
老女の魔法使いが忠告しながら、一歩前に出た。彼女は杖を掲げ、クリスタルの力を感じ取ろうとしたが、その瞬間、突然の衝撃が広間を襲った。
「なんだ…?」
リカルドが声を上げ、全員が周囲を警戒した。しかし、その時、広間の奥から現れたのは、レオナルド王子だった。
「やはりここにいたか、アイリス。」
彼の声は冷たく響き渡り、その表情には冷酷な笑みが浮かんでいた。彼の背後には、数人の騎士たちが控えており、彼が完全に準備を整えていたことがわかる。
「レオナルド…!あなたは最初からこれが狙いだったのね!」
アイリスは彼を睨みつけながら叫んだ。その瞳には怒りと決意が燃え上がっていた。
「そうだ、アイリス。君はただの駒だった。君の力を利用して、このクリスタルの力を手に入れるつもりだったのだよ。」
レオナルドは冷笑を浮かべながら、ゆっくりと祭壇に近づいた。彼は手を伸ばし、クリスタルに触れようとした。
しかし、その瞬間、アイリスは彼の動きを阻止するために飛び出した。彼女は剣を抜き、レオナルドの前に立ちはだかった。
「もう二度と、あなたの思い通りにはさせない!」
アイリスの叫びと共に、彼女の剣が輝きを放ち、その光が広間を照らした。彼女の力はすでに覚醒しており、レオナルドの計画を阻止するために全力を尽くす覚悟ができていた。
「愚かな…君一人で私に勝てると思っているのか?」
レオナルドは嘲笑しながら剣を抜き、アイリスに向かって構えた。彼の背後の騎士たちも一斉に動き出し、戦闘態勢に入った。
「私一人じゃない…!」
アイリスは強い意志を込めて叫んだ。その言葉と同時に、リカルドや他の仲間たちも彼女の側に立ち、剣を構えた。
「アイリス様、私たちがついています!共に戦いましょう!」
リカルドの力強い声が広間に響いた。彼らは全員、アイリスと共に戦う覚悟を決めていた。
「愚かな…全員でかかってくるか。それならば、私の力を見せてやろう!」
レオナルドは不敵な笑みを浮かべ、クリスタルに手をかざした。その瞬間、クリスタルが強烈な光を放ち、広間全体が震え上がった。
「これは…!」
アイリスはその場に立ち尽くし、クリスタルの力が広間全体に広がっていくのを感じた。彼女の体に強い圧力がかかり、動くことができなくなっていた。
「この力は、すべて私のものだ!」
レオナルドは狂気の笑みを浮かべ、クリスタルの力を自らに取り込もうとした。しかし、その瞬間、クリスタルから放たれた光が彼を弾き飛ばし、彼は壁に叩きつけられた。
「何…?」
レオナルドは驚きの表情を浮かべたまま、クリスタルを見つめた。彼の計画が狂い始めたのだ。
「
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