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第6章:「忍び寄る影」
しおりを挟むリオーナは次第に「女騎士」のキャバ嬢としての任務に慣れてきた。表向きはただの接客だが、その裏には複雑な情報戦がある。彼女はこれまで接客してきた客たちとの会話を通じて、王国の中で何か大きな陰謀が進行していることを感じ始めていた。だが、それが具体的にどのような計画で、誰が背後にいるのかはまだわからない。
そんな中、リオーナは新たな客の指名を受けることになった。ママから「特別な客だから、慎重に接して」と念を押され、リオーナはその意味を考えながら店の奥へと向かった。控え室で心を落ち着け、冷静に状況を把握しながら、任務に臨む決意を新たにした。
---
その夜、リオーナを指名した客は、中年の貴族で、年齢は40代後半と見られる。彼は貴族階級の中でも上層部に属する人物で、王国の経済や政治に大きな影響力を持っているという噂があった。リオーナは彼の顔を見た瞬間、その落ち着いた雰囲気と冷静な瞳に、ただの遊びでここに来たわけではないことを直感的に感じた。
「リオーナと申します。今夜はどうぞよろしくお願いいたします」
リオーナは礼儀正しく挨拶し、彼の隣に座る。彼は軽く微笑みを浮かべ、グラスを傾けた。リオーナはまず、彼がどのような意図でここに来たのかを探ろうと、慎重に会話を始めることにした。
「今日は特別なお祝い事でしょうか? 貴族の方がお越しになるのは、いつもとは違う雰囲気ですね」
リオーナは、あくまで軽い調子で彼に話しかけた。彼は一瞬微笑みながらも、すぐに真剣な表情に変わった。
「いや、今日は少し話を聞きたくてな。君は、ただのキャバ嬢ではないだろう?」
リオーナの心臓が一瞬早鐘のように打ち始めた。彼の言葉には確信があり、彼女が「ただのキャバ嬢」ではないことを見抜いている様子だった。しかし、リオーナは顔に出さず、冷静に対処した。
「どういう意味でしょうか?」
彼女は穏やかに問いかけると、彼は少し身を乗り出し、低い声で続けた。
「王国の中で動いている陰謀について、何か聞いていないか? 君のような特別な存在なら、何か知っているはずだ。私もそれに興味があってね」
リオーナは内心で警戒を強めた。この男が何者で、どのような目的でここに来たのかを探る必要がある。彼がただの遊びで来たのではなく、何か深い事情を抱えていることは明白だった。しかし、ここで無理に情報を与えるわけにはいかない。彼が何を知っているのかを引き出すことが先決だった。
「私は、ただお客様に楽しんでいただくためにここで働いております。王国の動きについては、噂程度しか知りません」
リオーナは笑顔を保ちながら、彼に答えた。だが、彼はその答えに満足せず、さらに深く突っ込んできた。
「君は鋭い目をしている。騎士のような気配さえ感じるよ。私も王国の中で何が起きているのかを探っている。だからこそ、君のような人物と話をする価値があると思ってここに来たんだ」
彼の言葉はリオーナの心に強く響いた。彼が何者であるかはまだはっきりとはわからないが、少なくとも彼も王国の中で何かを探っている。もしかすると、彼はリオーナの任務にとって重要な存在かもしれない。
「なるほど……お客様も王国の中で何かを探っていらっしゃるのですね」
リオーナはあえて、彼の言葉を肯定するように答えた。これによって、彼が何を知っているのか、そしてどのような目的で行動しているのかを探ることができるかもしれない。
「そうだ。王国の貴族たちの中には、何か大きな計画を進めている連中がいる。それが王国にとって良いものか、悪いものかはわからないが、我々が目を光らせているのは確かだ」
リオーナは彼の言葉を聞きながら、さらに警戒を強めた。彼が話している「貴族たちの計画」とは、リオーナが追っている陰謀と何らかの関連があるに違いない。彼が何を知っていて、どこまで掴んでいるのかをさらに聞き出す必要があった。
「それは興味深いお話ですね。私もいくつかの噂は耳にしたことがありますが……詳しいことはわかりません。でも、もしよろしければ、もう少しお話を聞かせていただけませんか?」
リオーナが慎重に問いかけると、彼は少し考え込むように眉をひそめたが、やがて口を開いた。
「君がどこまで信じられるかはわからないが……噂によれば、王国の財政を牛耳る一部の貴族たちが、独自の軍事力を構築しようとしているという話だ。彼らは、現王家に対して何らかの反旗を翻そうとしているのかもしれない」
リオーナはその言葉に衝撃を受けた。王国の貴族たちが反乱を計画している――もしそれが本当なら、王国は未曾有の危機に直面することになる。彼の言葉は軽々しい噂ではない。彼はその情報をどこから手に入れたのか、さらに詳しく聞きたいところだったが、ここで焦って聞き出すのは逆効果だ。
「それは大変な話ですね……。私ももう少し注意深く情報を集めてみます。もし何か新しいことがわかれば、お話しできるかもしれません」
彼は満足げに頷き、グラスを持ち上げた。
「頼むよ。君も、私たちと同じ目的を持っているなら、情報を共有することで大きな力になるだろう」
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その夜、リオーナは控え室に戻りながら、彼との会話を振り返っていた。王国の貴族たちが反乱を計画している――その情報が真実であれば、彼女の任務はますます重要になる。彼女は次のステップをどう踏むべきか、慎重に考えながら店を後にした。
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