21 / 32
第二十一章:新たな兆し
しおりを挟むミコはシャドウを使って新たな調査を進めながら、日常を送っていた。しかし、次第に婚約者たちもミコが何かを隠していることに気付き始めていた。彼らは直接ミコに問いただすことはなかったものの、彼女の様子を慎重に見守っていた。
ある日の朝、ミコはベッドの上でシャドウが集めた情報を整理していた。そこには、新たな黒幕の存在を示唆する手がかりがいくつか見つかっていた。特に気になるのは、ミコの婚約を破談に追い込もうとする背後に、さらに強大な勢力が関与している可能性だった。
「このままでは、また何か大きなことが起こるかもしれない……」
ミコは心配しつつも、冷静に状況を分析した。シャドウが提供した情報をもとに、彼女は対策を練り始めた。だが、この新たな脅威に対しては、彼女一人の力だけでは足りないかもしれないという不安が頭をよぎった。
---
その日の午後、レオンがミコの部屋を訪れた。彼はいつもと変わらない穏やかな笑顔を見せながらも、どこか心配そうな表情をしていた。
「ミコ嬢、お加減はいかがですか?最近、少しお疲れのように見えますが……」
ミコは彼に微笑みを返しながら、心配をかけたくないという思いで答えた。
「大丈夫ですわ、レオン様。少し考え事をしていただけです。でも、ご心配には及びません。」
レオンは彼女の言葉を聞いて頷いたが、その目にはまだ何かを見透かすような鋭さがあった。
「そうですか……。でも、何かあったら、どうか私たちに相談してください。私たちはあなたのためにここにいるのですから。」
レオンの優しさに、ミコは少し胸が痛んだ。しかし、彼を危険な目に遭わせたくないという思いから、彼女はただ頷くだけだった。
---
その夜、ミコは再びシャドウを使って調査を続けていた。シャドウは、夜の闇に紛れて領地の外へと向かい、重要な情報を探り出すために動いていた。
シャドウが集めた新たな情報は、ミコが懸念していた通りのものだった。黒幕は、一部の貴族たちを操り、ミコの婚約者たちをも利用しようとしていることが判明した。
「やっぱり……彼らがターゲットにされているわ。」
ミコはその事実を知り、ますます危機感を抱いた。自分一人ではなく、婚約者たちも巻き込まれてしまう可能性が高い。彼らに危険を知らせるべきかどうか、ミコは悩んだ。
「でも、彼らを巻き込みたくない……」
ミコは苦渋の決断を迫られながらも、慎重に行動することを選んだ。彼女はシャドウを使って、黒幕の動きをさらに追跡し、彼らの計画を未然に防ぐための策を練り始めた。
---
翌朝、ミコは一人で考え事をしていると、オリヴァーが突然訪ねてきた。彼は明るい笑顔を浮かべていたが、何かを感じ取ったように、少し真剣な顔つきでミコに言った。
「ミコお姉様、僕、何か手伝えることがあったら言ってほしいんだ。僕たちは家族みたいなもんだろ?一人で悩んでほしくないんだ。」
ミコはその言葉に胸が締め付けられるような思いを感じたが、オリヴァーの優しさに感謝しながらも、どうしても彼を危険に巻き込みたくないという思いから、やはり口をつぐんでしまった。
「ありがとう、オリヴァー君。気持ちは嬉しいわ。でも、本当に何でもないの。」
オリヴァーは一瞬困惑した表情を見せたが、すぐに元の笑顔を取り戻し、ミコを信じているということを伝えるように頷いた。
「わかったよ。無理しないでね、ミコお姉様。」
彼が部屋を出た後、ミコは静かにため息をついた。彼らに心配をかけたくない一心で、自分の抱える問題を一人で背負おうとしていることに、自分自身でも限界を感じ始めていた。
---
夜になり、ヴィクターが訪ねてきた。彼はいつものように飄々とした態度でミコに言った。
「ミコ嬢、最近は何か面白いことでもあったかい?何もなければ、俺がちょっとした冒険話でもしてやろうか?」
ミコは微笑んで彼の提案を受け入れたが、ヴィクターの目には彼女を気遣う思いが隠されていたことに気付いた。彼もまた、ミコが何かを隠していることに気づいていたが、無理に問い詰めることはせず、彼女が話すのを待っているようだった。
「ありがとう、ヴィクター様。でも、今はゆっくりお話を聞きたい気分なの。あなたのお話を楽しみにしているわ。」
ヴィクターは一瞬だけ表情を緩め、穏やかに頷いた。「それなら、俺の得意な冒険譚を一つ、聞いてもらおうか。」
彼の話を聞きながら、ミコは自分の心の中で葛藤していた。彼らを守るために秘密を抱え込むべきか、それとも助けを求めるべきか。ミコは、自分が選ぶべき道を考え続けた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
ファンタジー
天寿を全うしたチヒロが生まれ変わった先は、なんと異世界だった。
目が覚めたら知らない世界で、少女になっていたチヒロ。
前世の記憶はある。でも今世の記憶は全くない。
そんなチヒロは人々から『空の子』様と呼ばれる存在になっていた!
だけど『空の子』様とは《高い知識を持って空からやってくる男の子》のことらしい。
高い知識なんてない。男の子でもない。私はどうしたら?
何が何だかわからないまま、それでも今を受け入れ生きていこうとするチヒロ。
チヒロが現れたことで変わっていく王子レオン、近衛騎士のエリサ。そしてシンを
始めとするまわりの人々。そのうち彼女の秘密も明らかになって?
※年ごとに章の完結。
※ 多視点で話が進みます。設定はかなり緩め。話はゆっくり。恋愛成分はかなり薄いです。
3/1 あまりに恋愛要素が薄いためカテゴリーを変更させていただきました。
ただ最終的には恋愛話のつもり……です。優柔不断で申し訳ありません。
※ 2/28 R15指定を外しました。
※ この小説は小説家になろうさんでも公開しています。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
暁に消え逝く星
ラサ
ファンタジー
夜明けが初めて生まれた国と名高い皇国が滅んだ。渡り戦士のアウレシアと仲間達は、この生き残りの皇子一行の護衛を請け負うことになる。
天然の若き皇子の言動に調子を狂わされっぱなしのアウレシア達だったが、旅の途中で徐々に打ち解け合っていく。
だが、皇子の命を狙う追っ手が、彼らに迫っていた。
アウレシア達は婚約者のいる西の大国まで無事に皇子を送り届けることができるのか。
生き残りの皇子の生い立ちと彼らを追う者達の悲しい過去。絡み合った運命の行く末は…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる