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第二十一章:新たな兆し

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ミコはシャドウを使って新たな調査を進めながら、日常を送っていた。しかし、次第に婚約者たちもミコが何かを隠していることに気付き始めていた。彼らは直接ミコに問いただすことはなかったものの、彼女の様子を慎重に見守っていた。

ある日の朝、ミコはベッドの上でシャドウが集めた情報を整理していた。そこには、新たな黒幕の存在を示唆する手がかりがいくつか見つかっていた。特に気になるのは、ミコの婚約を破談に追い込もうとする背後に、さらに強大な勢力が関与している可能性だった。

「このままでは、また何か大きなことが起こるかもしれない……」

ミコは心配しつつも、冷静に状況を分析した。シャドウが提供した情報をもとに、彼女は対策を練り始めた。だが、この新たな脅威に対しては、彼女一人の力だけでは足りないかもしれないという不安が頭をよぎった。

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その日の午後、レオンがミコの部屋を訪れた。彼はいつもと変わらない穏やかな笑顔を見せながらも、どこか心配そうな表情をしていた。

「ミコ嬢、お加減はいかがですか?最近、少しお疲れのように見えますが……」

ミコは彼に微笑みを返しながら、心配をかけたくないという思いで答えた。

「大丈夫ですわ、レオン様。少し考え事をしていただけです。でも、ご心配には及びません。」

レオンは彼女の言葉を聞いて頷いたが、その目にはまだ何かを見透かすような鋭さがあった。

「そうですか……。でも、何かあったら、どうか私たちに相談してください。私たちはあなたのためにここにいるのですから。」

レオンの優しさに、ミコは少し胸が痛んだ。しかし、彼を危険な目に遭わせたくないという思いから、彼女はただ頷くだけだった。

---

その夜、ミコは再びシャドウを使って調査を続けていた。シャドウは、夜の闇に紛れて領地の外へと向かい、重要な情報を探り出すために動いていた。

シャドウが集めた新たな情報は、ミコが懸念していた通りのものだった。黒幕は、一部の貴族たちを操り、ミコの婚約者たちをも利用しようとしていることが判明した。

「やっぱり……彼らがターゲットにされているわ。」

ミコはその事実を知り、ますます危機感を抱いた。自分一人ではなく、婚約者たちも巻き込まれてしまう可能性が高い。彼らに危険を知らせるべきかどうか、ミコは悩んだ。

「でも、彼らを巻き込みたくない……」

ミコは苦渋の決断を迫られながらも、慎重に行動することを選んだ。彼女はシャドウを使って、黒幕の動きをさらに追跡し、彼らの計画を未然に防ぐための策を練り始めた。

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翌朝、ミコは一人で考え事をしていると、オリヴァーが突然訪ねてきた。彼は明るい笑顔を浮かべていたが、何かを感じ取ったように、少し真剣な顔つきでミコに言った。

「ミコお姉様、僕、何か手伝えることがあったら言ってほしいんだ。僕たちは家族みたいなもんだろ?一人で悩んでほしくないんだ。」

ミコはその言葉に胸が締め付けられるような思いを感じたが、オリヴァーの優しさに感謝しながらも、どうしても彼を危険に巻き込みたくないという思いから、やはり口をつぐんでしまった。

「ありがとう、オリヴァー君。気持ちは嬉しいわ。でも、本当に何でもないの。」

オリヴァーは一瞬困惑した表情を見せたが、すぐに元の笑顔を取り戻し、ミコを信じているということを伝えるように頷いた。

「わかったよ。無理しないでね、ミコお姉様。」

彼が部屋を出た後、ミコは静かにため息をついた。彼らに心配をかけたくない一心で、自分の抱える問題を一人で背負おうとしていることに、自分自身でも限界を感じ始めていた。

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夜になり、ヴィクターが訪ねてきた。彼はいつものように飄々とした態度でミコに言った。

「ミコ嬢、最近は何か面白いことでもあったかい?何もなければ、俺がちょっとした冒険話でもしてやろうか?」

ミコは微笑んで彼の提案を受け入れたが、ヴィクターの目には彼女を気遣う思いが隠されていたことに気付いた。彼もまた、ミコが何かを隠していることに気づいていたが、無理に問い詰めることはせず、彼女が話すのを待っているようだった。

「ありがとう、ヴィクター様。でも、今はゆっくりお話を聞きたい気分なの。あなたのお話を楽しみにしているわ。」

ヴィクターは一瞬だけ表情を緩め、穏やかに頷いた。「それなら、俺の得意な冒険譚を一つ、聞いてもらおうか。」

彼の話を聞きながら、ミコは自分の心の中で葛藤していた。彼らを守るために秘密を抱え込むべきか、それとも助けを求めるべきか。ミコは、自分が選ぶべき道を考え続けた。

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