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第三章:冷たい夜と絶望の炎

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凍てつく冬の夜、ルーチェは町角でマッチの木箱を握りしめながら震えていた。薄い上着だけでは寒さを防ぎきれず、手も足もすっかり感覚を失っている。彼女は小さな声で「マッチはいりませんか」と通りすがる人に声をかけ続けていたが、誰も立ち止まってはくれなかった。

日が落ちてから何時間も経っていた。町の通りは次第に閑散とし、ルーチェの周りには寒風が吹きすさぶだけだった。彼女の体はすでに冷え切り、内側から骨が痛むような感覚がじわじわと襲ってくる。凍える手で自分の肩を抱きしめ、少しでも寒さをしのごうとするものの、何の効果もなかった。

「売れなかったら…また怒られる…」

ルーチェの頭には叔父の冷たい視線が浮かんでいた。家に戻るたびに聞かされる怒声と冷たい暴力。彼女が一生懸命に働いても、叔父は満足することなく、ルーチェを追い詰めるだけだった。「全部売り切るまで帰ってくるな」という叔父の言葉が、ルーチェの小さな心を絶望で染め上げていた。

途方に暮れたルーチェは、ポケットに手を入れ、売り物であるマッチの存在を確かめた。マッチは叔父の厳しい命令により決して使ってはならないものであり、彼女にとっては生活を支えるための手段だった。しかし、寒さが限界に達した今、彼女はもうそんな規律を守る余裕さえなかった。

「少しだけ、暖かくなれれば…」

ルーチェはそう呟きながら、震える手で一本のマッチを取り出し、そっと擦った。小さな音とともに、赤く小さな炎が灯り、彼女のかじかんだ指先を照らした。わずかな炎がもたらす温もりに、ルーチェは心から安堵を覚えた。炎がゆらゆらと揺れながら立ち上り、そのわずかな熱が彼女の手をじんわりと温めた。

「お母さん…」

炎を見つめるうちに、彼女の心には母との思い出が浮かんできた。寒い夜、母はいつも彼女を暖かく抱きしめ、愛情に満ちた笑顔で彼女を包み込んでくれた。母の温もりを思い出しながら、ルーチェは目を閉じ、ほんのひと時だけその幻想に浸った。しかし、火はすぐに消え、再び冷たい闇が彼女を包んだ。

「もう一度…」

彼女は再びマッチを手に取り、火をつけた。再び現れた炎が彼女を照らし、また一瞬だけ温もりを与えてくれた。彼女は何度もマッチを擦り、少しでも暖かさに包まれようと、何本ものマッチを使い続けた。小さな炎が灯るたびに、彼女は母の優しい笑顔や温かい記憶に思いを馳せ、心の奥にわずかな救いを感じた。

しかし、マッチの火はどれもすぐに消え、再び冷たい夜が彼女を飲み込んでしまった。ルーチェの心はどんどん沈んでいき、まるで自分の存在そのものが消えてしまうような感覚に襲われた。それでも、寒さに耐えきれず、彼女は最後の一本のマッチに手を伸ばした。

「これで、最後…」

彼女は小さな声で呟きながら、最後のマッチをそっと擦った。炎が灯ると同時に、彼女の目には幻想のような光景が浮かび上がった。温かく照らされる炎の中で、ルーチェはこれまで見たこともないような美しい風景を想像し、心の奥にわずかな安らぎを感じた。

だが、その炎もやがて消え、彼女の手元には何も残らなかった。再び冷たい風が彼女の体を包み込み、絶望と疲労が一気に押し寄せてきた。これ以上耐え続ける気力もなく、彼女は膝を抱えて身を小さく丸めることしかできなかった。

寒さに凍える体と、空っぽになった心を抱えながら、ルーチェはただ静かに座り込み、目を閉じた。

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