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第一章:強大な力を持つ幼き聖女ヴィヴィオの追放決定
しおりを挟むある晴れた日の朝、王都はいつもとは違う緊張感に包まれていました。人々の間で囁かれるのは、幼い聖女ヴィヴィオに関する不穏な噂。ヴィヴィオは幼さに似合わぬほどの力を持ち、王国中の病や災厄を癒してきた存在です。その小さな体に秘められた力は、まさに奇跡と称され、王宮の高官や民衆たちからも「聖女」として崇められてきました。しかし、その奇跡のような力が、今や王国にとって「脅威」と見なされる日が来るとは誰も思わなかったことでしょう。
ヴィヴィオの追放は、王と教会の高位聖職者たちによる極秘会議で決定されたものでした。そこに至るまで、会議の席上では多くの議論が交わされていましたが、最終的には「幼い聖女の存在が、王国の秩序を乱しかねない」という結論に達しました。幼いながらも強大な力を持つヴィヴィオが、成長し力をさらに増すことで、いつか王の座や教会の威信を脅かす存在になるのではないかという恐れが根底にあったのです。
王は不安げに側近に尋ねました。「あの子を追放することに、本当に問題はないのか?」
側近は穏やかに答えます。「ご安心ください、陛下。新しい聖女をお立てすることで、民衆の信仰心も守られますし、ヴィヴィオ殿の存在も忘れられていくでしょう。」
こうして、幼き聖女ヴィヴィオを王国から追放することが正式に決定されました。そしてその役目は、冷静かつ厳格な聖職者である司教リズムに委ねられることになりました。彼女はヴィヴィオをよく知る人物であり、王の命令に忠実なため、こうした困難な役目にも動揺することはありません。
翌日、リズムはヴィヴィオを呼び出し、幼い聖女にその知らせを告げる場面がやってきました。ヴィヴィオは彼女の言葉の意味がすぐに理解できず、大きな瞳でじっと見上げます。その表情は無邪気で、何の罪もないその姿に、リズムの心はわずかに揺らぎましたが、彼女は表情を崩さずに冷静に言葉を続けました。
「ヴィヴィオ様、あなたには新たな任務があります。王都を離れて別の土地へ向かうのです。」
ヴィヴィオは少しの間、言葉の意味を考え込んでいましたが、やがて何かを理解したように目を潤ませながら、小さな声で尋ねました。「ヴィヴちゃん、何か悪いことしたの?」
リズムは、その純粋な問いかけに一瞬返答をためらいました。聖女としての彼女は常に人々を癒し、救いの手を差し伸べてきました。彼女が何か「悪いこと」をしたわけではなく、むしろ王国にとっては善行の象徴であったはずです。しかし、今ここで本当の理由を告げるわけにはいきません。リズムは深く息をつき、小さく首を横に振って言いました。
「いいえ、何も悪いことはしていません。ただ、あなたの力がこれ以上強くなりすぎると、王国には少し困難が生じるかもしれないのです。それで、しばらく別の土地で過ごしていただくことになりました。」
ヴィヴィオは不思議そうにリズムを見つめ、静かに頷きました。その様子はまるで、彼女が言われたことを信じ、受け入れる覚悟ができたかのようでした。「分かった。ヴィヴちゃん、ちゃんといい子でいるから…」
その言葉に、リズムは胸が痛むのを感じました。ヴィヴィオは純真無垢であり、誰もが心から愛する存在です。そのような存在を追放する決断は、リズムにとっても決して軽いものではありませんでした。しかし、彼女の役目は国のために忠実に従うことであり、私情を挟むわけにはいきません。
その日の夕暮れ時、王宮の裏門からひっそりとヴィヴィオが送り出されました。彼女の手には小さな鞄がひとつ。たったそれだけの荷物で、彼女は見知らぬ土地へ向かうことを余儀なくされました。
ヴィヴィオの姿が遠ざかるのを見送りながら、リズムは胸の奥で静かに呟きます。「どうか、あなたの心がこの苦しみから解放されますように…」
幼いながらも強大な力を持つヴィヴィオ。その存在が王と教会に恐れられ、追放という選択をされたのです。しかし、彼女はその小さな体に悲しみを宿すことなく、明るい表情で新たな地へと歩き出しました。
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