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ブロローグ

お姫様抱っこされた冒険者

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荒野の一本道に横転した馬車がある。

そこから何十メートルか行ったところの大木を背にたつ二人の少女とそれを取り囲む柄の悪そうな男達。

騎士の鎧をまとった18歳位の美少女が16歳の豪華なドレスをまとった美少女を背に庇っている。
「貴様ら!何者だ!」
金髪碧眼で整った顔立ちの騎士は、その美貌に見合った透き通るような美しい声を荒げる。
しかし、囲む男たちはその問いかけには答えない。
「おい、女二人だけだぜ?」
「お頭ぁ~!どうしますぅ?俺達にくれませんかぁ?」
「俺はあの上玉貰うわ」
「じゃあ俺はこの娘」
下卑た笑いを浮かべる盗賊たちを見て、
「くっ…………」
悔しそうに唇を噛む騎士。
「身ぐるみ残らず置いてけば命だけは助けてやるつもりだったが二人とも売り飛ばした方が儲けが良さそうだ」

「お頭、売り飛ばす前に回してくれよ」

「そうだそうだ」

下品な歓声が巻き起こる。

「貴様ら!誰一人、リィーナ様には指一本触れさせんぞ」

女騎士は気丈に剣をかまえ、一歩引かないつもりだが、さすがに多勢に無勢である最悪な結末しか見えてこない。(せめてリィーナ様だけでもお守りしなくては)
そんな思いがこみ上げてくる。
しかし、現実は非情だった。
盗賊たちは一斉に襲いかかってくる。
「覚悟しろぉ!」
「死ねやぁ!!」
振りかざされる斧やナイフ、棍棒などの武器を前にして、女騎士は思わず目を瞑ってしまう。
(ここまでなのか……)
その時であった。
ヒュンッ!!と空気を切る音がしたと思った瞬間、ドゴォオオン!!!という轟音と共に盗賊たちの悲鳴が上がったのだ。
「ぐぎゃああああ!?」
「いてぇえええ!!!」
「なんだ!?」
「どこから攻撃されたんだ!?」

「お困りかな?」

二人を取り囲む山賊の後ろから声がする。

山賊達が背後を振り返ると
三人?二人?の冒険者らしき人物がたっている。
戦士風のイケメンの大男は一人の美少女抱き抱えている。
その傍らには長い髪の美女がたっている。
「なんだ?」
何事かと山賊達は訝る。
「どうかな?我々を護衛として雇わないか?」
「え?」
山賊達も女騎士達もあっけにとられる?
イケメン戦士は美少女をお姫様抱っこ抱き抱えてるのだ。
どう見てもなにかの依頼を受けて捕らわれていた美少女を救出してきたところのように見える。
「なんだそんな女を抱えたままなにが出きる?売り飛ばす女が二人も増えたぜ」
リーダー格の男が叫ぶ。
「まあまあ、あんまり騒がないで下さいよ」
すると、もう一人の冒険者の優男がいつの間にかリーダー格の男の背後にいた。
「なに?私も売り飛ばす数に入ってるの?」
戦士の隣の女冒険者はあきれたように答える。
スラリとした長身で長い黒髪に透き通るような白い肌。切れ長の眼は、どこか冷たさを感じさせるまさにクールビューティーとは彼女のためにある言葉のようだ。「まあそういうことだ」
「お雪さん。美人ですもの狙われますわ」
戦士に抱き抱えられた美少女。
女冒険者より年下のようだが、こちらは若干幼さを残すが、それがむしろ愛らしさを増している。
「真魚、あんたも商品にされてるわよ」
「えーっ、きもい!」
「見ての通り我らは冒険者だ。お困りなら護衛として雇われもかまわない」
女騎士は一瞬戸惑ったが、今は一刻を争う。
藁にもすがる思いで決断する。
「分かった。雇おう。こいつら一掃して欲しい」
女騎士は剣を構え、盗賊達に対峙する。
しかし、 ヒュンッ!! また何かが飛んでくる音がしたと思うと、 ドゴォオオン!! 盗賊達の悲鳴があがる。
どうやら魔法攻撃らしい。
女騎士は唖然とする。
目の前にいる冒険者達は、まだ何もしていない。
しかし、どうやら女騎士はとんでもない人物達を雇ったようだった。
盗賊達は混乱していた。
「なんだと?たった二人の冒険者でなんとか出きる人数だと思うのか」

山賊達は全員で17人だったが、既に二人減っている。

「二人?お前ら人数も数えられないらしい」

「は、ははははは。まさかそのだっこされた娘も人数に入れろとでも?」

「そうだ。俺たちは三人だが、一人でも充分だっ…」
戦士は会話を打ちきった。

もう会話は無意味だった。

山賊達はもう全員その場に倒れ込んで戦闘不能だ。

「これはどうしたのだ?」
女騎士が倒れてる山賊達を見回す。
山賊達は混沌して意識不明になってる。
「おい!お雪、会話の途中だぜ?」
「こんな連中とまともに話す価値ないでしよう!」
「…魔法か」

「ええ、そうよ。私は魔導士。魔法使いのお姉さまとお呼びなさい」
「お姉さまって歳でもないだろう」
「壁!」
「すまない。助かった」
女騎士は礼を言う。
「気にしないでいい。依頼をこなしただけだから」女騎士は改めて三人を見る。
イケメンの戦士は横転してる馬車を見つけると
「下ろすぞ」
美少女を平らになった岩を椅子代わりに座らせた。

「お雪!」

「OK」
女冒険者を呼ぶ。
彼女の傍らに女冒険者が立つ。

戦士は馬車まで行くとヒョイと片手で倒れた馬車を起こし再び美少女を抱き上げた。

「も、申し遅れた。こちらランズベルド公爵令嬢リィーナ様です。私はお嬢様の護衛のリリアと申します」
「あなた方は何者ですか?」
「俺達はただの冒険者だよ。俺は草壁隆二」
「私は氷川雪乃。でこの子は海野真魚」
「そうか、ではその冒険者に頼みがある」
「なんだ?」
「実は私の後ろにいる少女が盗賊に拐われたのだ」
「なるほど。それで?」
「私達は帝都オーガンに向かうところでしたが、山賊のため私以外の従者がいなくなってしまいました。オーガンまで引き続き護衛を依頼したいと思います。引き受けていただけないでしょうか?もちろん、報酬ははずみます」
草壁の腕の中でうなづく真魚を見る。

「分かった引き受けよう」
    
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