上 下
4 / 6

第四章:王宮での再会

しおりを挟む
ララが王宮に戻ってから数日が経った。彼女の帰還は王宮中で大きな話題となり、誰もが彼女を温かく迎え入れた。以前とはまるで違う待遇に、ララは内心微笑みながらも、表向きは謙虚な態度を崩さなかった。

王妃はララを自室に招き入れ、その手を取って謝罪した。「ララ、本当に申し訳なかったわ。あなたがいなくなってから、どれだけあなたの存在が大切だったかを思い知ったの。」

ララは穏やかに微笑み、「お言葉、ありがたく頂戴いたします。私はただ、タロン殿下のお役に立てることが何よりの喜びです。」と答えた。

第1王子もまた、ララに深々と頭を下げた。「君には不当な扱いをしてしまった。どうか許してほしい。これからは君の意見も尊重する。」

「恐縮です。皆様のお役に立てるよう、これからも努力いたします。」ララは礼儀正しく返答した。

タロン王子はララの帰還を心から喜んでいた。彼は彼女の元へ駆け寄り、満面の笑みを浮かべた。「ララ、戻ってきてくれて本当に嬉しいよ!もう二度と離れないでね。」

「はい、殿下。これからはずっとそばにおります。」ララは彼の頭を優しく撫でた。


---

ララは再びタロン王子付きのメイド兼パティシエとしての役割に戻った。彼女はお菓子作りに精を出し、王宮の人々に再び美味しいお菓子を提供し始めた。しかし、今回は以前よりも依存性の高い物質をお菓子に混入していた。

「これで彼らはますます私のお菓子を求めるようになるわ。」ララは内心ほくそ笑んだ。

王宮の人々は彼女のお菓子に夢中になり、食事のたびに彼女のお菓子を求めるようになった。王妃は午後のティータイムにララのお菓子が欠かせなくなり、第一王女も友人たちとの集まりでララのお菓子を振る舞うことが習慣となった。

「ララのお菓子は本当に素晴らしいわ。食べると心が安らぐの。」王妃は微笑みながら言った。

「ありがとうございます、王妃様。そう言っていただけて光栄です。」ララは謙虚に頭を下げた。

しかし、王宮の人々は次第に彼女のお菓子なしでは満足できなくなっていた。彼らは日に何度もララにお菓子を求め、彼女の影響力はますます増大していった。

ある日、国王がララを呼び出した。「ララ、君のお菓子は本当に素晴らしい。ところで、最近の政治について君の意見を聞かせてくれないか?」

ララは一瞬驚いたふりをしながらも、冷静に答えた。「光栄に存じます、陛下。私のような者でよろしければ、意見を述べさせていただきます。」

彼女は的確な助言を提供し、国王はその知見に感心した。「君は賢明だ。これからも助言を求めることがあるだろう。」

「かしこまりました。お役に立てるよう努めます。」


---

ララの影響力は日に日に増していった。彼女は王宮の重要な会議にも招かれるようになり、その意見は重んじられた。王妃や第1王子も彼女に助言を求め、彼女の存在は王宮にとって欠かせないものとなっていた。

一方、王宮の人々はララのお菓子への欲求が強まり、彼女なしでは過ごせない状態に陥っていた。彼らは彼女の姿を見るだけで安心し、彼女のお菓子を口にすることで心の平穏を得ていた。

ララはそんな彼らの様子を観察しながら、内心で計画の成功を確信していた。「これで彼らは完全に私の手中にある。」


---

ある夜、ララは静かな厨房で新しいレシピを考えていた。そこにタロン王子がそっと現れた。

「ララ、まだ起きていたの?」

「はい、殿下。新しいお菓子のアイデアが浮かんだものですから。」

「無理をしないでね。君がいなくなったら僕は…」タロン王子は不安そうな表情を浮かべた。

ララは微笑みながら彼の頭を撫でた。「大丈夫ですよ、殿下。私はいつも殿下のそばにおります。」

「約束だよ、ララ。」

「はい、約束です。」


---

翌日、王妃がララに相談を持ちかけた。「最近、どうも気持ちが不安定なの。ララのお菓子を食べると落ち着くのだけれど…」

「それは大変ですね。お菓子にリラックス効果のあるハーブを混ぜてみましょうか。」

「そうしてもらえると助かるわ。」

ララは微笑みながら内心で思った。「彼らはもう私なしではいられない。」


---

その後も、王宮の人々はララのお菓子に依存し続けた。彼女の影響力は王宮内だけでなく、国全体にも及び始めた。ララは王宮の重要な決定に関与し、その意見は絶対的なものとなっていた。

彼女の計画は着実に進行していた。誰も彼女の真の目的に気づく者はいなかった。


---


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

結婚式の日取りに変更はありません。

ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。 私の専属侍女、リース。 2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。 色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。 2023/03/13 番外編追加

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

妹の妊娠と未来への絆

アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」 オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?

処理中です...