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第六章: 王国に迫る影

セクション 6-1: 王都への帰還

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フィリス地方での激闘を終えたカミラたち黒騎士団は、影の勢力の脅威を一時的に封じたものの、さらなる闇の力が潜んでいることを感じ取りながら王都へと帰還していた。彼らが体験したフィリス地方での戦いは、ただの序章に過ぎないことは誰もが理解していた。

「影の力がここまで強力だとは思わなかったわ……」カミラは馬を走らせながら、エリオットにそう呟いた。

「そうだな。俺たちは強敵に勝ったが、あれは影の勢力の一部でしかない。本当の脅威はこれからだろう。」エリオットは険しい表情を崩さず、前方を見据えていた。「影の勢力の目的がまだ見えてこない以上、次に何が起こるかわからないが、油断はできない。」

「フィリス地方で感じた異様な気配は、ただの封印を解く儀式だったのかもしれない。それにしても、あのフードの男……彼の言葉が気になるわ。」カミラはその男が口にしていた「試練」という言葉を思い返し、深く考え込んでいた。

「奴は俺たちを試しているようだったが、もっと何かを隠しているのは明らかだ。奴の真の目的を探るためには、もっと多くの情報が必要だな。」リシャールが魔法書を手に持ちながら言った。「王国の歴史書や魔法書に、影の勢力に関する何かしらの記述があるかもしれない。まずはそれを調査するべきだ。」

「そうね。私たちが今できることは、王都に戻り、国王に報告しつつ、次の手を打つための準備を整えること。」カミラは冷静な口調で言いながらも、心の中には焦りが広がっていた。

「影の勢力が再び動き出すのは時間の問題だろう。王国全体を危機に陥れる前に、手を打たなければならない。」グレンが強く頷き、仲間たちを奮い立たせるように言葉を添えた。

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数日後、カミラたちはついに王都に到着した。城門をくぐり抜け、彼らはすぐに王宮へと向かった。黒騎士団の帰還はすでに知らせが入っており、国王と重臣たちは彼らの報告を待っていた。

広間に足を踏み入れると、厳粛な雰囲気の中で国王がカミラたちを見つめていた。彼の表情には、これまでにない深刻さが漂っていた。

「カミラ、黒騎士団よ。汝らの働きによって、フィリス地方での影の勢力を一時的に封じ込めたと聞いた。しかし、その背後にさらに大きな脅威が潜んでいることは、汝らの報告によって明らかとなった。」国王は静かな口調でそう言い、彼らに向けて深く頷いた。「影の力が完全に消え去っていない以上、我々は今後の対策を急がねばならぬ。汝らの見解を聞かせてくれ。」

カミラは一歩前に進み、真剣な表情で報告を始めた。「陛下、私たちはフィリス地方で影の勢力と戦い、古代の祭壇を破壊しました。しかし、私たちが感じた影の力はまだ完全に封じられていません。むしろ、さらなる脅威が潜んでいるように思います。」

「そうだ。我々が見たのは影の力のほんの一部に過ぎない。」リシャールも前に進み、さらに詳細な説明を続けた。「古代の結晶が影の力を増幅しているのは確かですが、それを封じ込めるためには、もっと強力な手段が必要です。我々の調査によれば、王国のどこかにその答えが隠されている可能性がある。」

国王は深く考え込んだ後、重々しい声で答えた。「汝らの報告は非常に重要だ。今後の事態に備えるためにも、影の勢力の動向を徹底的に調査する必要がある。我が王国の全ての力を使って、影の力を封じる方法を見つけねばならぬ。」

カミラは国王の言葉に頷き、続けて言った。「陛下、私たちは王宮の書庫にある古代の記録を調査し、影の勢力に関する手がかりを探すつもりです。そこに、影の力を完全に封じる方法が記されているかもしれません。」

「よろしい。汝ら黒騎士団には引き続き、我が王国の守護者としての任務を課す。影の力が再び動き出す前に、その対策を講じることが急務だ。」国王は再び深く頷き、重臣たちに命じた。「王国の書庫の調査を許可する。全ての手段を使って、影の脅威を取り除くのだ。」

「陛下、必ずや王国を守り抜きます。」カミラは国王に深く頭を下げ、その場で任務を受けた。

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### **王宮の書庫での調査**

その後、カミラたちは王宮の広大な書庫へと向かい、影の勢力に関する古代の記録を調べ始めた。王宮の書庫には、古代の魔法や王国の歴史に関する膨大な書物が収められていたが、影の力に関する記述は非常に限られていた。

「この書庫に何か手がかりがあるはず……」リシャールは焦りを隠しながら、古い巻物や書物を次々に開いていった。

「影の力は、王国の歴史の中でも禁忌の存在として扱われているわ。」カミラもまた、古い書物を読み進めながら言った。「そのため、記録自体が意図的に隠されている可能性が高い。」

「確かに……だが、何とか手がかりを見つけ出さなければならない。」エリオットは不安げな表情で、本をめくり続けていた。

数時間が経過し、カミラたちは次々と古い書物を調べていたが、影の力に関する明確な記述は見つからなかった。しかし、リシャールがふと手に取った一冊の古い巻物に、興味深い記述を見つけた。

「これを見てくれ。」リシャールが巻物を広げ、カミラたちに見せた。

そこには「漆黒の結晶」という記述があり、それが影の力を封じ込めるために使われた古代の遺物であることが書かれていた。しかし、それだけでは影の力を完全に封じることはできず、「光の神殿」で特別な儀式を行う必要があるとも記されていた。

「光の神殿……」カミラはその言葉に反応し、さらに巻物を読み進めた。「その神殿で儀式を行えば、影の力を完全に封じ込めることができると書かれているわ。」

「しかし、この神殿がどこにあるかは記されていない。」リシャールは考え込んだ表情を浮かべた。「我々はその神殿の場所を突き止めなければならない。」リシャールは巻物を再度確認しながら言った。「光の神殿がどこにあるかを知る手がかりを探す必要がある。」

「この巻物には場所の記載がないけれど、他の文献を調べれば何か繋がるものがあるかもしれないわ。」カミラは冷静に言いながら、次なる一冊に手を伸ばした。「ここにある全ての記録を探し出してでも、神殿の場所を突き止める必要があるわね。」

「私たちの時間は限られているわ。」エリオットが重い声で言った。「影の勢力が再び動き出す前に、なんとしてでも神殿の場所を見つけなければ。」

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「だが、そこに到達するのは容易ではないだろう。」エリオットが地図を見つめながら言った。「北西の山岳地帯は、王国の中でも特に危険な場所として知られている。しかも、この記述が正しいとしても、何百年も前のものだ。神殿が現存しているかどうかもわからない。」

「それでも、私たちには他に選択肢はないわ。」カミラは決意を込めて言った。「もしこの神殿が本当に存在するなら、それを探し出して影の力を封じ込める儀式を行う必要がある。どんなに危険でも、私たちは行くしかない。」

「その通りだ。」リシャールが頷き、巻物を丁寧に巻き戻した。「まずは準備を整え、この神殿を探すために北西の山岳地帯へ向かおう。時間がない。」

カミラたちは急ぎ旅支度を整え、国王に報告を済ませた後、再び王国の未来を守るための新たな任務に向けて出発した。目的地は北西の山岳地帯。光の神殿を探し出し、影の力を封じ込めるための決死の旅が始まる。

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旅の途中、カミラたちは広大な平原を越え、山岳地帯へと向かう道を急いでいた。道中は静かで、風の音だけが耳に響いていたが、彼らの心はどこか不安に満ちていた。影の勢力が神殿を狙っているのは確かであり、彼らが神殿にたどり着く前に何が待ち受けているかわからない。

「もし影の勢力が神殿に到達していたら……?」エリオットが重々しい口調で言った。

「その時は、彼らと戦ってでも阻止するしかない。」カミラは冷静に答えた。「影の力が完全に解放されたら、王国だけでなく、この世界全体が脅威に晒されるわ。」

「俺たちはこれまで影の勢力を打ち破ってきた。今度も勝てるさ。」グレンが力強く言い、仲間たちを鼓舞した。

リシャールも同意しつつ、「だが、次に何が待ち受けているかはわからない。影の力がこれまで以上に強力になっていることを考慮しなければならない。私たちも万全の準備をしておくべきだ。」と警告した。

カミラたちは一歩一歩、山岳地帯の険しい道を進んでいった。影の勢力との決戦は目前に迫っていた。彼らの背後にある王国を守るため、そして影の力を永遠に封じ込めるため、彼らは決意を新たにして進み続けた。

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**セクション6-3に続く**

これで第六章セクション1と2が完了しました。カミラたちが影の勢力に立ち向かうための手がかりを見つけ、光の神殿を探すために王国の北西へ向かう旅路が描かれています。引き続き、セクション3以降を執筆しますので、少々お待ちください。
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