24 / 39
第4章: 闇の支配者との決戦
セクション 4-2: 闇の支配者の本体**
しおりを挟む漆黒の戦士は、一時的に動きを止めたものの、完全に倒れたわけではなかった。カミラが水晶の残骸を破壊したにもかかわらず、戦士の赤い目が再び光を取り戻し、体の輪郭が闇の霧と共に崩れつつも、新たに再構築されていくのが見えた。
「まさか……まだ生きているの?」カミラは驚きと焦りを隠せず、体を強張らせながら戦士を見据えた。通常の敵とは明らかに異なる存在感が、彼女の周りの空気をさらに重くしていた。
グレンもまた、その変化に気づき、すぐに剣を構え直した。「奴の力はまだ完全に消えていない……! これが真の姿というわけか……!」
戦士の体が完全に再構築されると、その姿は先ほどよりもさらに恐ろしいものへと変貌していた。漆黒の鎧がさらに巨大化し、闇の霧が彼の体をまとい、まるで生きているかのように渦を巻いていた。その目は、冷酷に赤く光り、カミラたちを睨みつけている。
「何て恐ろしい……」エリオットも、剣を持つ手が震えていることに気づきながら、その圧倒的な存在感に戦慄した。
リシャールがカミラたちの後ろに立ち、冷静に状況を分析した。「この戦士は、ただの影の兵士ではない。彼は、闇の力そのものを体現している。水晶を破壊したことで、奴は本来の姿を取り戻したのだろう。これが真の支配者――闇の本体だ。」
「どうすれば……?」カミラは、影の本体を前にして、どうすればこの敵を倒せるのか見当がつかず、問いかけた。
リシャールは、しばらく考え込んだ後に答えた。「ただの物理攻撃では、この本体には通じない。今こそ、魔術と剣の力を融合させるときだ。奴の弱点は、あの赤い目……あれが闇の核だ。核を攻撃すれば、奴を完全に消滅させることができるだろう。」
「目を狙えというのか……?」エリオットは驚きの表情でリシャールを見つめた。
「だが、目を狙う隙を作るのは非常に難しい……」カミラはすぐに理解した。漆黒の戦士は目を覆うように強力な鎧と闇の霧で自らを守っており、隙を作ることは容易ではない。しかし、核を破壊しなければ、この戦士を倒すことは不可能だと悟った。
「リシャール殿、何か策はあるのか?」グレンが真剣な表情で問いかけた。
リシャールはゆっくりと頷き、答えた。「私は強力な封印魔法を使って、この敵の動きを一時的に封じることができる。だが、その間に核を破壊しなければ、再び力を取り戻してしまうだろう。」
「つまり、限られた時間内に、私たちが全力で核を攻撃しないといけないということね……」カミラはその厳しい条件を理解し、剣を強く握りしめた。「私は核を狙うわ。リシャール殿、あなたの魔法に頼るしかない。」
「分かった。私が魔法を発動するまで、奴の攻撃を引きつけてくれ。」リシャールがカミラたちに指示を出し、すぐに詠唱を始めた。彼の手の中で魔法陣が浮かび上がり、周囲の空気が震え始める。
カミラとエリオット、そしてグレンはすぐに戦士の攻撃を引きつけるべく動き出した。漆黒の戦士は巨大な剣を振りかざし、圧倒的な力で彼らを圧倒しようとしていたが、カミラたちはその攻撃をかわし、時折反撃を仕掛けながら、リシャールの魔法が完成するのを待っていた。
「速い……! 今までの戦いとは全く違う!」カミラは、戦士の動きの速さに驚きながらも、何とか攻撃をかわし続けた。
エリオットも、戦士の猛攻に必死で耐えながら声を上げた。「カミラ、奴を引きつけてくれ! 俺たちで隙を作る!」
「分かった!」カミラは、戦士の足元を狙って素早く移動し、注意を引きつけた。戦士は彼女に向かって巨大な剣を振り下ろしたが、カミラはその攻撃をギリギリで回避し、素早く反撃を加えた。
その瞬間、リシャールが声を張り上げた。「今だ! 魔法を発動する!」
リシャールの強力な封印魔法が戦士を包み込み、その体が一瞬の間動きを止めた。カミラはすぐにその隙を突き、エリオットと共に漆黒の戦士の赤い目を狙って突進した。
「ここで終わりにする……!」カミラは全力で剣を振り上げ、戦士の核に向かって渾身の一撃を叩き込んだ。
エリオットも続けて剣を振り下ろし、二人の力が赤い目に深く突き刺さった。すると、戦士の体全体が激しく揺れ、その闇の霧が一気に消え始めた。
「効いてる……!」カミラは核が崩れ始めるのを感じ、さらに力を込めて剣を押し込んだ。
戦士の目は次第に光を失い、その巨体が崩れ落ちていった。最終的に、戦士は完全に形を失い、闇の霧と共に消滅した。
「やった……本当に倒したのか……?」エリオットが息を切らしながら呟いた。
「間違いない……これで終わった。」カミラも息をつきながら、剣を収めた。彼女の体には疲労が広がっていたが、同時に安堵の気持ちが胸に湧き上がっていた。
グレンが静かに剣を下ろし、全員に向けて声をかけた。「よくやった。今回の戦いは厳しいものだったが、我々は勝利を収めた。」
リシャールも、封印魔法の影響で少し疲れた様子だったが、笑みを浮かべて言った。「これで、闇の支配者は完全に消え去った。影の脅威は一旦これで終わりだ。」
カミラたちは漆黒の戦士が消えた後、周囲の静けさを取り戻した廃墟の中で立ち尽くし、戦いの終わりを実感していた。だが、同時に彼らは、この戦いが王国に迫るさらなる脅威の始まりに過ぎないことを感じ取っていた。
「これで終わりではないわね……」カミラは静かに呟き、遠くを見つめた。
エリオットもまた、未来に向けた決意を胸に秘めた。「ああ、俺たちはもっと強くならなければならない。これから先に待ち受ける脅威のために……。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
私が妊娠している時に浮気ですって!? 旦那様ご覚悟宜しいですか?
ラキレスト
恋愛
わたくしはシャーロット・サンチェス。ベネット王国の公爵令嬢で次期女公爵でございます。
旦那様とはお互いの祖父の口約束から始まり現実となった婚約で結婚致しました。結婚生活も順調に進んでわたくしは子宝にも恵まれ旦那様との子を身籠りました。
しかし、わたくしの出産が間近となった時それは起こりました……。
突然公爵邸にやってきた男爵令嬢によって告げられた事。
「私のお腹の中にはスティーブ様との子が居るんですぅ! だからスティーブ様と別れてここから出て行ってください!」
へえぇ〜、旦那様? わたくしが妊娠している時に浮気ですか? それならご覚悟は宜しいでしょうか?
※本編は完結済みです。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる