19 / 39
第3章: 王都の陰謀
セクション 3-3: 闇の襲来
しおりを挟む廃墟の奥から現れた影は、これまでカミラたちが対峙してきたものとは明らかに異質だった。巨大で、まるで生き物のようなうごめく闇が、廃墟の中に広がり、その姿を徐々に形作っていた。全員がその異様な存在感に圧倒され、場が静寂に包まれた。
「なんて大きな力……!」カミラは驚きと恐怖を覚え、思わず息を飲んだ。
エリオットも剣を抜き、目を細めてその影を見つめた。「こんなの……ただの影とは思えない。まるで生きているかのようだ。」
グレンは冷静に影を見据え、魔剣を構えた。「皆、戦闘態勢を整えろ。これはただの術者ではない。何か強大な力が宿っている。」
その言葉が終わるや否や、影は突然うごめき始め、廃墟の中に響き渡る音を立てた。まるで風が逆巻くような異様な音に、カミラの胸は高鳴った。影は徐々に人間の姿を模倣し、巨大な黒い戦士のような形を取り始めた。
「くっ……!」カミラは剣を握りしめ、いつでも動けるように構えた。
リシャールが冷静に前に出て、呪文を唱え始めた。「この影は、ただの魔術によるものではない。古代の力が作用している……おそらく、古の魔術師たちが使っていた儀式の一部がここで復活しているのだ。」
「古代の魔術……!」カミラはその言葉を聞いて、さらに警戒を強めた。
その時、影の戦士が突然動き出した。地面を強く踏み鳴らしながら、カミラたちに向かって巨大な腕を振り下ろしてくる。
「来るぞ!」グレンが鋭い声で叫び、全員が散開した。
カミラは素早く影の攻撃をかわし、その隙を突いて剣を振りかざした。だが、彼女の剣は影に触れた瞬間に弾き飛ばされ、まるで抵抗するかのように闇が反応した。
「この影、ただの剣では斬れない……!」カミラはその感触に驚き、後ろに飛び退いた。
「やはり……魔術的な対抗策が必要だな。」リシャールが落ち着いた声で言い、さらに呪文を唱え始めた。彼の周囲に光の輪が浮かび上がり、それが次第に大きな盾のような形を取り、影に向かって放たれた。
「これでどうだ……!」リシャールの魔法が影に命中し、一瞬、闇の戦士が後退したかに見えた。だが、すぐにその姿は再び形を取り戻し、カミラたちに向かって攻撃を続けてきた。
「魔法でも完全には倒せないのか……!」エリオットが焦りの表情を浮かべながら影を見つめた。
「まだ手はある……」リシャールは呟き、さらに強力な呪文を唱え始めた。その言葉が空気中に響き渡ると、周囲の魔力が震え始め、次第に一つの巨大な魔法陣が廃墟の地面に浮かび上がった。
「この古代の力を封じるには、魔術と物理の連携が必要だ。黒騎士団の力と、我々魔術師団の力を合わせるのだ!」リシャールが叫んだ。
グレンが素早く反応し、魔剣を高く掲げた。「全員、リシャール殿の魔法に合わせて攻撃を仕掛けろ!」
カミラとエリオット、そして黒騎士団の他の団員たちは、その指示に従い、一斉に影の戦士に向かって突進した。カミラは自分の剣に意志を込め、影に向かって全力で斬り込んだ。
「これで終わりにする……!」
彼女の剣が影に触れる瞬間、リシャールの魔法が解放され、影を包み込むように光の束が降り注いだ。影の戦士は苦しむようにうめき声を上げ、その姿が次第に崩れ始めた。
「いける!」エリオットが叫び、彼もまた剣を振り下ろした。
黒騎士団と魔術師団の連携攻撃により、影の戦士はついにその形を保つことができなくなり、完全に消滅した。廃墟の中に漂っていた不気味な闇が、ようやく晴れていくのが感じられた。
「やった……のか?」カミラは息を切らしながら剣を収め、廃墟の中を見渡した。
「影は消えた……しかし、まだ終わりではない。」リシャールが厳しい顔で言った。「これは、ただの前哨戦に過ぎない。影の力はまだ完全には封じられていない。我々はさらに奥に進む必要がある。」
その言葉に、カミラは改めて気を引き締めた。影の脅威は確かに一時的に抑えられたが、真の敵はまだ姿を見せていない。彼女たちは、この先に何が待ち受けているのかを確かめるため、さらに深く廃墟の奥へと進む決意を固めた。
「行きましょう、まだ終わっていない。」カミラは剣を握り直し、グレンやリシャールと共に廃墟の奥へと足を進めた。
---
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】子供が出来たから出て行けと言われましたが出ていくのは貴方の方です。
珊瑚
恋愛
夫であるクリス・バートリー伯爵から突如、浮気相手に子供が出来たから離婚すると言われたシェイラ。一週間の猶予の後に追い出されることになったのだが……
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる