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第五章 アルシオーネを訪ねる旅
しおりを挟むココアはシフォンから、大聖女アルシオーネのもとに行くよう助言を受けた後、深い決意を胸に山奥へと足を向けた。聖水の製法を学ぶためには、アルシオーネの許可が必要だという。シフォンに言われた時、ココアは最初戸惑ったものの、自らの未熟さを痛感している今、拒む理由はなかった。彼女の頭の中には、フォレストとの婚約を解消した記憶が鮮明に残っていた。
「私は、ここで立ち止まるわけにはいかない。これ以上、自分の無力さに甘えていられない」
そう強く心に言い聞かせ、ココアは険しい山道を歩き始めた。アルシオーネが住む場所は、道もなく、ただ山肌が剥き出しの厳しい環境だと聞かされていた。道中には、自然が織りなす美しい風景もあったが、目に映るものすべてが彼女にとっては試練だった。
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最初の一日、ココアは比較的穏やかな道を進んだ。山裾の森林を抜け、鳥のさえずりが聞こえる中で歩みを進めた。しかし、二日目からは、様相が一変した。険しい斜面、足元の不安定な石畳、濃くなる霧。足を滑らせれば転落してしまいかねない道が続く。時折吹き付ける冷たい風が、ココアの頬を切るように痛んだ。
「これが…アルシオーネ様への道なんだ…」
彼女は足元を確かめながら、ひたすら前へ進んだ。しかし、途中、彼女は自分の限界に近づいていることを感じていた。足の筋肉は痛み、息も上がり始める。どれだけ進んでも終わりが見えない山道に、不安が募った。
「本当に、私はここを登り切れるのだろうか…」
フォレストとの婚約を思い出すたび、彼女の心に苦い思いが蘇る。彼の期待に応えられなかった自分、無力感と後悔。そして、自分が聖女としての力を得るにはまだまだ遠い道のりがあることが、彼女の胸に重くのしかかっていた。
しかし、彼女は何度もその思いを振り払った。ここで諦めては、何も成し遂げられない。自分自身を強く保つため、彼女は足を止めることなく歩き続けた。
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三日目、山の中腹に差し掛かった頃、天候はさらに悪化した。風は強く、霧が深くなり、前がほとんど見えなくなるほどだった。ココアは、慎重に歩を進めながらも、次第に体力が尽きてきているのを感じた。
その時、突然足を滑らせ、彼女は斜面に転げ落ちそうになった。
「しまった…!」
体を何とか持ち直し、すんでのところで木の根に掴まった。心臓が激しく脈打つ。呼吸も荒くなり、全身が疲れ切っていた。
「もう…無理かもしれない…」
彼女の心は折れそうになっていた。しかし、その時、彼女の脳裏にシフォンの言葉が浮かんだ。
「決意があれば、必ずたどり着ける」
その言葉が、彼女を再び奮い立たせた。自分がここまで来た理由、そしてアルシオーネのもとで聖水の製法を学ぶことが、これからの自分の未来を決定づける大事なことだと、再確認した。
「私は、もっと強くならなきゃいけない…!」
ココアは手に入れた木の根をしっかりと掴み直し、立ち上がった。そして、決意を新たに、残る道を進むことを決心した。
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四日目の朝、ついに彼女は頂上に近い場所にある、アルシオーネの小屋を見つけた。小さな木造の小屋が、霧の中から静かに現れたその瞬間、ココアの心に強い達成感が広がった。
「ここまで…来られた…」
足元がふらつきながらも、小屋の扉までたどり着き、彼女はそっとノックした。
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