捨てられた花嫁、強く咲く

第四章

舞踏会でエドワード王子との再会から数週間が経ち、ヴィヴィオの心はさらに強くなっていた。かつての婚約者が彼女にどんなに後悔の言葉を投げかけようとも、もはや彼女の心に響くことはなかった。彼女は、自分自身で未来を切り開く強さを手に入れ、過去に縛られることなく前を向いて進んでいく決意を固めていた。

そんなある日、エドワード王子が突然ヴィヴィオのもとを訪れ、再び彼女に婚約を申し込んできた。彼の姿を見たヴィヴィオは、かつて自分を傷つけた人物が、いまだに自分に執着していることに驚きと失望を感じた。しかし、それ以上に彼の提案に対する答えは明白だった。

「ヴィヴィオ、君の成功を見て、僕は本当に心を入れ替えたんだ。もう一度僕と一緒に未来を築かないか？」とエドワードは真剣な表情で言葉を続けた。「君は僕にとってかけがえのない存在だ。君との未来を共にしたいと心から思っている。」

その言葉に対し、ヴィヴィオは静かに息を吸い込み、そしてエドワードを冷静に見つめた。

「エドワード、あなたが何を言おうと、私の心は変わらないわ。」ヴィヴィオは毅然とした声で答えた。「私を捨てたのはあなた自身だった。それを取り返そうとしても、もう遅いのよ。」

エドワードの顔には明らかに焦りの色が浮かび、彼は一歩前に踏み出そうとしたが、ヴィヴィオはそのまま続けた。

「私は、あの時の私ではないわ。あなたに婚約を破棄されたことで、私は一度壊れた。でも、それが私を強くしたの。私は自分の力でここまで来た。自分自身の価値を見つけたし、自分の道を選んだの。それに、あなたに再び縛られるつもりはない。」

エドワードはその言葉に打ちのめされたかのように立ち尽くした。彼女の毅然とした態度は、かつての彼女とは全く異なる強さを持っていた。彼が以前知っていたヴィヴィオはもういなかった。そこに立っていたのは、自らの力で成功を収め、自由に生きることを選んだ、強い女性だった。

「君は本当に変わったんだな……」エドワードは小さくつぶやいた。悔しさと後悔が彼の表情に浮かんでいた。

ヴィヴィオは彼に一瞥をくれると、静かに首を振った。「変わったのは私だけじゃない。あなたも、私を見ている限り、過去のままで立ち止まっているのよ。私はもう、過去には戻らない。あなたとの婚約は、私にとって教訓だった。でも、今の私には必要ないものよ。」

それを聞いたエドワードはしばらく黙っていたが、最終的には何も言えずにその場を去っていった。彼の背中が遠ざかる中、ヴィヴィオは一抹の寂しさを感じたが、それはすぐに消え去った。彼女にとって、エドワードはもはや過去の人物であり、自分の人生にはもう関係のない存在だった。

ヴィヴィオがエドワードのことを完全に心の中から手放した後、彼女の心には新たな光が差し込んでいた。それは、彼女が旅先で出会った一人の青年の存在だった。

その青年、名はアレクという。彼はヴィヴィオが地方で事業を展開していた際に出会った商人であり、誠実で、何よりも自分の力で人生を切り開こうとする強い意思を持っていた。ヴィヴィオとアレクは、最初は仕事上の関係で知り合ったが、次第にお互いの価値観や夢を共有するようになり、彼の存在がヴィヴィオにとって特別なものとなっていった。

アレクは、ヴィヴィオが自分の過去を乗り越え、自立した女性として成長する姿を見守り、そして支えてくれる存在だった。彼は決して彼女を束縛しようとはせず、むしろ彼女の自由を尊重し、彼女の夢を一緒に追いかけようとしてくれる人物だった。

ヴィヴィオは、アレクと過ごす時間が増えるにつれ、彼との将来を自然と考えるようになっていた。彼女にとって、エドワードとの過去は自らの成長のために必要なものだったかもしれないが、アレクとの未来は、真の幸せを感じられるものだという確信があった。

ある日、アレクはヴィヴィオに静かに語りかけた。

「ヴィヴィオ、君が選んだ道を尊重するよ。君がどんな選択をしても、僕は君を支えるつもりだ。でも、もし君が僕と一緒に未来を歩んでくれるなら、それは僕にとって何よりも幸せなことだ。」

その言葉を聞いたヴィヴィオは、心からの微笑みを浮かべた。彼の言葉は真実であり、彼女にとってアレクこそが本当の意味で信じることのできるパートナーだということを確信させた。

「ありがとう、アレク。私は、もう自分の道を選んで進むことを決めている。そして、その道にあなたが一緒にいるなら、私はもっと強くなれる。」

アレクも微笑み、彼女の手をそっと握りしめた。二人は、これから共に歩む未来を見据えながら、力強く進んでいく決意を胸に抱いた。

その頃、エドワードは一人、王宮の中で悔恨の念に囚われていた。彼が失ったものは、決して取り戻せるものではなく、ヴィヴィオがかつての自分とはまったく異なる女性になったことを、彼は痛感していた。彼女は、もう自分の届かない場所にいる。

ヴィヴィオはそんなエドワードの存在を意識することなく、新たな愛と共に、これからの人生を切り開いていく。過去に縛られることのない自由な女性として、彼女はさらに力強く、輝かしい未来へと歩みを進めていくのだった。