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第五章: 魔力の解放と選択の時

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騎士団長カイルとの出会いを経て、私の生活はますます「静かに過ごす」どころではなくなってきていた。彼が私の護衛をする日々が続く中で、平穏だったはずの毎日は徐々に戦闘の匂いが漂うものへと変わりつつあった。数日ごとに、謎の賊や襲撃者が現れ、私の力を狙ってくるのだ。彼らの目的はまだはっきりと分かっていなかったが、確実に言えることは、私の持つ魔力が異常なほど注目を集めているということだった。

そんなある日、事件はさらに大きな規模で私に降りかかってきた。


---

その日はいつも通り、庭でクラリスと花の手入れをしていた。穏やかな日差しが私の背を温かく包み、しばらくの間、平穏な時間が過ごせるかもしれないと感じていた。クラリスも微笑みながら私の側で新しい花を植えていた。

「お嬢様、この花は今月一番の人気です。鮮やかな色合いが美しいですよね」

クラリスの言葉に頷き、私は花を眺めていた。心の底から、この日常を守りたいと思っていた。そのためには、自分の力をどう扱うべきか、もっと知る必要があるのかもしれない。そう思っていた時、不意に空気が変わった。

――殺気。

肌に張り詰めるような緊張感が走り、私は直感的に立ち上がった。その瞬間、庭の奥から暗い影が数体、私たちに向かって接近してくるのを目にした。クラリスが驚きの声をあげ、私も背筋が凍る思いをした。

「また……来たのね」

今度は以前の襲撃者たちとは違い、より組織的で洗練された動きだった。彼らは黒装束に身を包み、まるで忍者のように速やかに庭を駆け抜け、こちらに迫ってくる。彼らの狙いが私であることは明白だった。私はカイルに護衛を頼もうとしたが、その瞬間、カイルがすでに私の前に立ちはだかり、剣を抜いて敵を迎え撃っていた。

「お嬢様、下がってください!」

カイルの声は強く、そして冷静だった。だが、それ以上に強く感じたのは彼が一人では対処しきれないほどの敵の数と力だった。これまでの戦闘とは全く異なる緊張感が漂っていた。

「カイル……」

彼の戦う姿を見ながら、私は何もできずに立ち尽くしていた。自分の中で渦巻く魔力は、制御する術をまだ完全に掴んでおらず、下手に使えば暴走してしまう恐れがある。しかし、今この状況では――私は無力でいるわけにはいかない。

「どうすれば……どうすればいいの……?」

内心で叫びながら、私は必死に考えを巡らせた。私が守りたいのは、平穏な生活だけじゃない。クラリスやカイル、そして私を支えてくれる人々も守りたいのだ。その思いが、徐々に私の中に眠る魔力を引き出していく感覚があった。

――その時、私は心の奥底で何かがはじけるのを感じた。

「お願い、もう一度……この力よ、私に力を貸して!」

私は手を握り締め、意を決して魔力を呼び起こした。すると、鮮やかな光が私の体を包み、暖かいエネルギーが体中に満ちていった。これまでの魔力の暴走とは違い、今回は冷静にその力を感じ取ることができた。

「お嬢様……!」

カイルが振り返り、その目に驚愕の色が浮かんでいた。しかし、私はすぐに彼に向かって頷き返した。

「今度は、私も戦います」

そう言うと、私は魔力を解放し、手のひらに光の刃を作り出した。それはまるで剣のように鋭く、輝いていた。これが私の持つ本来の力なのだろうか。力に流されることなく、私は冷静にその刃を敵に向けた。

カイルと共に襲撃者たちを迎え撃ち、私は次々と敵を倒していった。魔力の刃は鋭く、私が意図するままに動いてくれる。これまで感じていた恐れは不思議と消え、私はまるで戦士のように自分の力を振るっていた。

しかし、戦闘はまだ終わっていなかった。リーダー格と思われる男が私たちの前に現れ、ゆっくりと近づいてきた。彼の目は冷たく、狙いが定まっていた。彼は私を見て、薄く笑った。

「やはり、あの力は君のものだったか……。これほどの力を持つ者を、放っておくわけにはいかない」

「誰なの? あなたは一体何を企んでいるの?」

私はその男に向かって問いかけた。彼の背後にはさらなる手勢が控えているようで、まるで逃げ道を塞がれているかのように感じた。

「我々はこの国の未来を変えるために動いている。君の力があれば、その目標はすぐにでも実現できるだろう。しかし、君が協力しないというのなら……仕方がない」

男が手を挙げた瞬間、私の背筋に寒気が走った。彼は何かを仕掛けようとしている。それが分かった瞬間、私は再び魔力を解放し、彼の動きを封じようとした。

「ここまでよ!」

私は力を込めて魔法の刃を振り下ろし、彼の前に結界を張った。彼は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、私に向かって低く笑った。

「なるほど……確かに、その力は本物のようだ。しかし、君がどれほどの力を持っていようとも、我々の計画は止められない」

そう言い残し、彼は煙のように姿を消した。残されたのは、倒された手下たちと、私たちの重い息だけだった。


---

「大丈夫ですか、お嬢様?」

戦闘が終わった後、カイルが私に近づき、心配そうに声をかけてきた。私は息を整えながら、彼に微笑んだ。

「ええ、なんとか。でも……彼らの狙いは一体何だったのかしら」

「分かりませんが、彼らが再び現れる可能性は高いです。お嬢様の力は、彼らにとって非常に重要なもののようですから」

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