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第2章: 呪われ始めるランズ家

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アッリネーラがランズ家を去ってから、しばらくしてランズ家に不穏な影が忍び寄り始めた。彼女が去ったことで失われた「呪を退ける力」によって、今まで防がれていた数々の呪いが、徐々にその姿を現し、ランズ家の人々に容赦なく襲いかかってきたのである。

まず最初に影響が現れたのは、家中の使用人たちだった。かつては忠実に働いていた者たちが、突如として原因不明の病に倒れ、次々と仕事を辞めていく。病に侵された者たちはどれも回復が遅く、医者もその症状に手を焼いていた。中には医療費を負担しきれず、やむなく屋敷を去る者もいた。次第に人手が不足し、残った使用人たちも疲弊していく中で、ランズ家の屋敷は徐々に荒れていった。

さらに不可解な事故も相次いだ。ランズ家の一族の誰もが乗っていた馬車が、突如として車輪が外れ、ひっくり返るという事故が発生したのだ。幸いにも大きな怪我人は出なかったものの、その後も次々と同様の事故が起きるようになり、一族は恐怖におののいた。家具や装飾品が突然壊れたり、食事の用意が失敗に終わったり、常にどこかで問題が発生し、屋敷内には不気味な空気が漂い始めた。

また、ランズ家が誇る広大な庭園にも影響が現れた。アッリネーラが去ってからというもの、美しく咲き誇っていた花々が次々と枯れてしまい、木々の葉も病に侵されて変色し始めた。以前は手入れが行き届き、多くの訪問者に称賛されていた庭園が、今や荒れ果てた光景と化していた。この異変に気づいた者たちは皆口を閉ざし、誰もが恐怖に怯えていた。

ランズ家の商業活動にも暗雲が立ち込め始めた。もともと商才のあったランズ家は、様々な事業で成功を収めてきたが、アッリネーラが去ってからというもの、急速に取引が失敗するようになった。契約が急に破棄されたり、取引先からの信頼が揺らいだり、思わぬ損失が相次いで発生した。これによって、ランズ家の財政は大きく揺らぎ、ついには借金を背負う羽目に陥ってしまう。

そして、ついにはランズ公爵自身も病に倒れた。彼はもともと健康であり、長年にわたりランズ家を支えてきたが、アッリネーラが去ってからというもの、次第に体調を崩し始め、ついには寝込むようになってしまった。医師たちは手を尽くしたが、病の原因は不明のままで、治療の効果もほとんど現れなかった。ランズ公爵の病状が悪化する中で、家中には不安と焦燥感が広がっていった。

この異常事態に、ランズ家の関係者たちは次第にアッリネーラが去ったこととの関係を疑うようになった。かつて彼女がいたことで抑えられていた呪いや悪意が、今やランズ家を覆い尽くしているのではないか、とささやかれるようになったのだ。特に年配の家臣たちは、アッリネーラの不思議な力に気づいていた者もおり、彼女の存在がランズ家を護っていたのだと確信していた。

そんな中で、ブルックも次第にアッリネーラを失ったことの重大さを理解し始めた。彼は当初、自分がアッリネーラを追い出したことについて何の後悔も抱いていなかった。彼女の存在を軽んじ、自分にふさわしい新しい婚約者を見つければいいと思っていたのだ。しかし、ランズ家の衰退を目の当たりにする中で、彼は次第にアッリネーラがいかに特別な存在であったかを痛感するようになった。

ブルックは自分の愚かさを認めざるを得なくなり、アッリネーラに対して初めて謝罪と後悔の気持ちを抱いた。しかし、彼女が今や遠い存在となり、ランズ家に戻る意思がないことは明白だった。彼女を追い出してしまった自分の選択がどれだけの影響をもたらしたのか、今更ながらに思い知ることになったのだ。

そして、ランズ家の人々が彼女の力に再び頼ることはできず、彼らは呪いと不運に苛まれながら衰退していく運命にあった。屋敷にはかつての華やかさは失われ、不気味な静けさと不安だけが残るようになった。人々は恐怖におののき、家中は陰鬱な雰囲気に包まれていった。

一方で、アッリネーラはフサリア家で穏やかな生活を送っていた。彼女の噂は次第に広まり、困難に直面する人々からの依頼が増えていった。アッリネーラは自身の力で人々を助けることで、その評判がさらに高まっていき、彼女の元には多くの人々が訪れるようになった。彼女はその力を使い、呪いや困難に立ち向かう人々を支援し、彼らにとっての「聖女」として称えられるようになったのである。

こうして、ランズ家はアッリネーラを手放した代償を支払い続け、没落の道を歩むこととなった。かつて彼女を軽んじていたブルックもまた、彼女の存在を失ったことで何を失ったのかを知り、取り返しのつかない後悔に苛まれることになったのだった。

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