シン雪女伝説

 (笑)

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雪姉

第4話 再会

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### 再会

この町の秋祭りの日、シンジは祭りの実行委員会に駆り出されていた。実行委員会の法被を羽織り、見回りしていると、突然声をかけられる。

「おーい、シンジ、シンジではないか?」

あれほど苦労して雪山に通い詰めても会えなかったお雪が目の前にいるではないか。

「えっ!?」

「久しいのう。元気にしておったか?」

「もちろんさ!君は?」

「うむ、我はいつも通りじゃ」

相変わらず美しい。いや、ますます美しくなっている。思わず見惚れるシンジ。

「ところで、なぜここにいるんだ?」

「祭りと聞いて遊びに来たのじゃ」

見れば、お雪は右手にかじりかけのアメリカンドック、左手に綿飴、ヨーヨー風船、林檎飴も持っている。完全にお祭りを満喫中ではないか。呆気にとられてしまうシンジ。

「ふむ、お主はそんな法被を着て何をしておるのだ?」

「あ、いや、これはちょっと人手が足りないからって駆り出されただけなんだ」

「そうか。それはご苦労なことだな」

「ってかなんで?」

「はい?」

「俺には他言無用とか言ってそんな正体丸出しで現れるなんて!」

「ふむ、けーすばいけーすじゃ!」

「…」

「お主にバレないように変化してくればよかったか?」

「いや、そんなことは」

「ならば問題なかろう?」

「まぁそうだが」

「それにしても、ずいぶん変わったのう。見違えたぞ」

「10年はたった。変わって当たり前だ」

「人間には長い時であったのう」

「ああ、本当に長かった」

「そうか、ではそろそろ行くとするかな」

「行くってどこに?」

「この町のいとこの家に居候しておる」

「はぁ?いつから?」

「10年前、お前を宿に届けたとき、この町にいとこがいることを思い出して、挨拶だけのつもりが長居してしまって今に至るのじゃ」

「え?」

「どうしたのじゃ?」

「ずっとこの町に?」

「そうじゃ!」

「てっきり今も山にいるのかと…」

「山では最新ゲームソフトが発売日に買えんし、テレビも映らん、ネットもスマホも繋がらん、不便なのじゃ、コンビニもないしのう」

「会いたくて何度も山に登った努力は?」

「骨折り損じゃな!」

「そんなあっさり」

「町でナンパでもしてた方が、我と会う確率が高かったのう!」

「はははははは…」

力のない笑いをするしかないシンジ。

「では、さらばだ」

突然スマホの着信音が鳴り、お雪は懐からスマホを取り出して電話に出る。

「おう。ゆきのんか、うむ用事は終わった。帰ろうぞ。コンビニで合流だな」

お雪が帰ろうとすると、シンジは手首を掴む。

「なんだ?」

「なぜスマホを?」

「必需品であろう?」

雪女って…現代社会に順応し過ぎだろう?

「連絡先交換して…」

「よいぞ」

こうしてシンジとお雪の交流が始まった。
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