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雪姉
プロローグ 10年前の出会い
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今から10年前の出来事
ある真冬の山で、雪姉こと美雪は、遭難しかけた若者を助けた。若者は計画もなく山に登り、雪の上で横たわっていた。
「お主、なぜ、こんなところで昼寝をしておる?」と雪姉が声をかけると、若者は震えながら答えた。「昼寝?そんなわけあるか!行き倒れて死にかけてるんだよ。」
「ほうほう、なるほど。だが、おかしいな。こんな軽装で嵐の冬山に登るとは、無謀ではないか?」と雪姉は呆れた。
「嵐になるなんて予想外だったんだ。夕方までには下山するつもりだったんだよ」と若者が言うと、雪姉は大声で説教した。
「馬鹿者ーっ!弾丸登山ではないか!」彼女は腕を組み、長々と説教を始めた。
「あの、そろそろ、助けてください。寒くて死にそうなんです」と若者が弱々しく訴えた。
「自業自得ではないか、馬鹿者!」と雪姉はさらに声を荒げた。
若者は力なくがくっとなり、意識が遠のき始める。「人が話してる時に、寝るでない、失礼であろう、この馬鹿者!」
「あ、あれ?おい?どうした?おーい」と雪姉は焦って彼を揺さぶるが、若者は反応しない。
仕方がないので、雪姉は若者を麓まで届けることにした。
---
雪姉は若者を宿屋前のバス停のベンチに降ろすと、彼が意識を取り戻すのを見守っていた。
「う、うーん」
「おっ、気がついたか?」雪姉は声をかける。
「ここは?」シンジが周囲を見回す。
「麓の宿屋前じゃ。これに懲りたら二度とあんな無茶な登山をするでないぞ」
シンジは彼女をじっと見つめる。「どうした?返事ぐらいせんか」
「美しい」
「なんぞ?」
「なんて美しい女性だ」
「いきなり、どうした?」
「さっきまで朦朧としていて気が付きませんでしたが、なんと美しいヒトでしょう!」
「そうであろう。そうであろう」
「まるで美の女神ようです」
「そうであろう、そうであろう。もっと褒めるがよい」
「結婚してください!」
「え?」雪姉は驚いて目を見開く。
「貴女こそ、私の運命の人だ」
「と言われても、我は人ではないしのう」
「人ではない?道理でやはり美の女神だ」
「いや、いや、そうではない。お主、ちょっと冷静に考えてみるのじゃ」
「何でしょう?」
「嵐の冬山で生死に関わる状況の中、黒髪の美女に助けられる…どっかで聞いたことのある話ではないか?よく考えるのじゃ」
シンジは少し考え込む。「………………雪女伝説?」
「ピンポン!では、今目の前にいる美女はなんぞ思う?」
「もしかして雪女さん?」
「ピンポン!ピンポン!ピンポン!というわけじゃ、あきらめるがよい!人間のおなごを探すがよい、では、さらばじゃ」
「だめだ!諦めません!あなたが好きだー!」シンジは必死に叫ぶ。
「バカモーン、大声で叫ぶでない!」雪姉は焦って辺りを見回す。
「それに雪女伝説の物語では、人間の若者と結婚してるではありませんか!」
「あれは、ふいくしょんじゃ!それに悲しい結末を迎えるではないか!」
「僕は、絶対あきらめません」
「そうじゃのう、では、10年待っても気持ちが変わらなければ考えてやらんこともないぞ」
「絶対にかわりません!」
「では、10年待ってやろうぞ。さらばじゃ」
「待って、名前を教えてください」
「雪女と言ったら、決まっておろう。お雪じゃ」
「僕はシンジです」
雪姉はシンジのベルトに付いてるキーホルダーに目を向ける。「これは、なんぞ?えらく可愛らしいものをつけてるのう?」
「キーホルダーです」
「そんなことは知っておる。このキーホルダーの絵のことじゃ!」
「これは、〇〇というアニメのキャラクターで」
「ほうほう?ハッ!つ、つまらん話をした。ではさらば」雪姉はふわりと宙に浮くと山へと帰ろうとする。しかし、途中で再びシンジの前に降り立つ。
「シンジよ、大事なことを忘れてた」雪姉は、再び目の前に舞い降りた。
「え?僕と結婚してくれる気になりましたか?」
「違う!そうではない!あれじゃ!」
「はい?」
「我のこと、我と会った事は、誰にも言うてはならん。わかってるであろう」
「はい」
「では、さらば…」
雪姉の目が再びシンジの腰のキーホルダーに向かう。
「これあげましょうか?」シンジは、キーホルダーを外し雪姉に差し出す。
「なんと!本当か!もらっていいのか?後で返せと言っても返さんぞ!代わりに結婚しろなんてのもなしぞ!」キーホルダーを受け取り、ぎゅっと握りしめる。
「言いませんよ。そんなこと」
「シンジ、おまえいいやつだのう」
「では、さらば、シンジ、またな」
今度こそ雪姉は山へと消えて行った。
ある真冬の山で、雪姉こと美雪は、遭難しかけた若者を助けた。若者は計画もなく山に登り、雪の上で横たわっていた。
「お主、なぜ、こんなところで昼寝をしておる?」と雪姉が声をかけると、若者は震えながら答えた。「昼寝?そんなわけあるか!行き倒れて死にかけてるんだよ。」
「ほうほう、なるほど。だが、おかしいな。こんな軽装で嵐の冬山に登るとは、無謀ではないか?」と雪姉は呆れた。
「嵐になるなんて予想外だったんだ。夕方までには下山するつもりだったんだよ」と若者が言うと、雪姉は大声で説教した。
「馬鹿者ーっ!弾丸登山ではないか!」彼女は腕を組み、長々と説教を始めた。
「あの、そろそろ、助けてください。寒くて死にそうなんです」と若者が弱々しく訴えた。
「自業自得ではないか、馬鹿者!」と雪姉はさらに声を荒げた。
若者は力なくがくっとなり、意識が遠のき始める。「人が話してる時に、寝るでない、失礼であろう、この馬鹿者!」
「あ、あれ?おい?どうした?おーい」と雪姉は焦って彼を揺さぶるが、若者は反応しない。
仕方がないので、雪姉は若者を麓まで届けることにした。
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雪姉は若者を宿屋前のバス停のベンチに降ろすと、彼が意識を取り戻すのを見守っていた。
「う、うーん」
「おっ、気がついたか?」雪姉は声をかける。
「ここは?」シンジが周囲を見回す。
「麓の宿屋前じゃ。これに懲りたら二度とあんな無茶な登山をするでないぞ」
シンジは彼女をじっと見つめる。「どうした?返事ぐらいせんか」
「美しい」
「なんぞ?」
「なんて美しい女性だ」
「いきなり、どうした?」
「さっきまで朦朧としていて気が付きませんでしたが、なんと美しいヒトでしょう!」
「そうであろう。そうであろう」
「まるで美の女神ようです」
「そうであろう、そうであろう。もっと褒めるがよい」
「結婚してください!」
「え?」雪姉は驚いて目を見開く。
「貴女こそ、私の運命の人だ」
「と言われても、我は人ではないしのう」
「人ではない?道理でやはり美の女神だ」
「いや、いや、そうではない。お主、ちょっと冷静に考えてみるのじゃ」
「何でしょう?」
「嵐の冬山で生死に関わる状況の中、黒髪の美女に助けられる…どっかで聞いたことのある話ではないか?よく考えるのじゃ」
シンジは少し考え込む。「………………雪女伝説?」
「ピンポン!では、今目の前にいる美女はなんぞ思う?」
「もしかして雪女さん?」
「ピンポン!ピンポン!ピンポン!というわけじゃ、あきらめるがよい!人間のおなごを探すがよい、では、さらばじゃ」
「だめだ!諦めません!あなたが好きだー!」シンジは必死に叫ぶ。
「バカモーン、大声で叫ぶでない!」雪姉は焦って辺りを見回す。
「それに雪女伝説の物語では、人間の若者と結婚してるではありませんか!」
「あれは、ふいくしょんじゃ!それに悲しい結末を迎えるではないか!」
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「絶対にかわりません!」
「では、10年待ってやろうぞ。さらばじゃ」
「待って、名前を教えてください」
「雪女と言ったら、決まっておろう。お雪じゃ」
「僕はシンジです」
雪姉はシンジのベルトに付いてるキーホルダーに目を向ける。「これは、なんぞ?えらく可愛らしいものをつけてるのう?」
「キーホルダーです」
「そんなことは知っておる。このキーホルダーの絵のことじゃ!」
「これは、〇〇というアニメのキャラクターで」
「ほうほう?ハッ!つ、つまらん話をした。ではさらば」雪姉はふわりと宙に浮くと山へと帰ろうとする。しかし、途中で再びシンジの前に降り立つ。
「シンジよ、大事なことを忘れてた」雪姉は、再び目の前に舞い降りた。
「え?僕と結婚してくれる気になりましたか?」
「違う!そうではない!あれじゃ!」
「はい?」
「我のこと、我と会った事は、誰にも言うてはならん。わかってるであろう」
「はい」
「では、さらば…」
雪姉の目が再びシンジの腰のキーホルダーに向かう。
「これあげましょうか?」シンジは、キーホルダーを外し雪姉に差し出す。
「なんと!本当か!もらっていいのか?後で返せと言っても返さんぞ!代わりに結婚しろなんてのもなしぞ!」キーホルダーを受け取り、ぎゅっと握りしめる。
「言いませんよ。そんなこと」
「シンジ、おまえいいやつだのう」
「では、さらば、シンジ、またな」
今度こそ雪姉は山へと消えて行った。
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