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第二章:新たな仲間と力の覚醒
しおりを挟む辺境の村での生活は、王都とは比べ物にならないほど素朴で平穏だった。追放されたヴィヴィオにとって、この静かな村は心を癒してくれる場所だった。だが、それは長くは続かなかった。
ヴィヴィオが村で暮らし始めてから数週間が経ったある日、空が暗雲に覆われ、強い風が吹き荒れた。村人たちが不安げに空を見上げていると、遠くの山から低い咆哮が響いた。
「魔物だ!また出たぞ!」村の青年が叫びながら村の中央に駆け込んでくる。
その言葉に、村人たちは一斉にざわめき、恐怖の表情を浮かべた。この辺境の地では、山から現れる魔物が幾度となく村を襲ってきた。村には兵士も騎士もいないため、村人たちは自ら戦うか、逃げるしかなかった。
ヴィヴィオもその場にいたが、彼女は冷静に状況を見つめていた。追放されてからは癒しの力を控えていたが、目の前の事態を放置するわけにはいかなかった。
「私が……何とかしなくては。」
ヴィヴィオは自分に言い聞かせるようにつぶやくと、村の鍛冶屋に向かった。そこには、剣や槍が乱雑に並べられていたが、そのどれもが古びていて、実戦に使えるようには見えなかった。
「鍛冶屋さん、この剣を貸してください。」ヴィヴィオが一本の剣を手に取ると、鍛冶屋の老人が驚いた表情を浮かべた。「あんた、こんなもん持って何をする気だ?」
「村を守るためです。」
その一言に老人は目を丸くしたが、ヴィヴィオの真剣な表情を見て、しぶしぶ頷いた。「その剣はもうボロボロだが、それでもいいなら持っていけ。だが、無理はするなよ。」
「ありがとうございます。」ヴィヴィオは剣を握りしめ、村の出口に向かった。
魔物の咆哮が近づいてくる。ヴィヴィオが出口に到着すると、数頭の巨大な狼型の魔物が村に迫っているのが見えた。鋭い牙をむき出しにし、赤い瞳を光らせながら吠える姿は、恐怖そのものだった。
ヴィヴィオは深呼吸し、手にした剣を構えた。その瞬間、体の奥底から何かが湧き上がってくる感覚を覚えた。それは、追放されて以来ずっと抑えていた力――聖女としての力だった。
「これが……私の本当の力……?」
ヴィヴィオの体が淡い光に包まれると、剣がまるで新しいもののように輝きを放ち始めた。その光景を目にした村人たちは、遠巻きに驚きの声を上げた。
「まさか、あの方は聖女様なのか?」
「追放されたって噂じゃなかったのか?」
そんな声を耳にしながらも、ヴィヴィオは集中を切らさなかった。魔物たちが猛スピードで駆け寄ってくると、彼女はそのうちの一頭に向かって剣を振り下ろした。
「――消えなさい!」
剣から放たれた光が魔物を包み込み、一瞬で跡形もなく消し去った。ヴィヴィオ自身も驚くほどの圧倒的な力だった。
残る魔物たちも次々とヴィヴィオに襲いかかるが、彼女は冷静に対処した。光の力が剣から放たれるたびに、魔物たちは瞬く間に消えていった。
やがて、最後の一頭を倒すと、辺りは静寂に包まれた。ヴィヴィオは息を整え、剣を地面に突き刺して支えにしながら立ち尽くした。
村人たちは、恐る恐る彼女に近づき、そして歓声を上げた。
「ヴィヴィオさんが……村を守ってくれた!」
「ありがとう、ありがとう!」村人たちが次々に感謝の言葉を口にする中、ヴィヴィオは少し照れくさそうに微笑んだ。
「私にできることをしただけです。でも、この村を守るのは皆さん自身の力でもあります。どうか、これからも力を合わせてください。」
その言葉に、村人たちは深く頷き、ヴィヴィオの存在を改めて尊敬の眼差しで見つめた。
魔物を倒したことで、ヴィヴィオの力は周囲の村々にも知れ渡ることとなった。彼女は村人たちの頼みで他の村の救援にも向かい、次第に「辺境の守護者」として知られるようになった。
しかし、その裏では、王国で異変が起き始めていた。
偽聖女アリシアが王国を守る力を持たないことが露呈し、さらに魔物の被害が増大したことで、国民たちの間に不安が広がっていた。そして、追放されたはずのヴィヴィオが辺境で力を振るっているという噂が、王都にも届き始めていた。
「ヴィヴィオが生きている……しかも、辺境で魔物を倒しているだと?」
その報告を受けた第一王子アルヴィスは、険しい表情を浮かべた。彼は自分が追放を命じたヴィヴィオの力がこれほどのものだとは知らず、動揺を隠せなかった。
「アリシア、君は何か知っているのか?」
隣にいるアリシアは、焦った様子を隠しきれずに口を開いた。「そ、それは……きっと、何かの間違いですわ。追放された彼女がそのような力を持つはずが……」
だが、その言葉には明らかな動揺が滲んでいた。
ヴィヴィオはその頃、村の広場で子どもたちに囲まれていた。彼女はもう、王都の喧騒や権力闘争に心を乱されることなく、平和な生活を手に入れたと思っていた。
しかし、彼女はまだ知らなかった。この静かな日々が長くは続かないことを。そして、再び彼女の力を求める声が届く日が来ることを。
---
エピローグへの繋ぎ:
ヴィヴィオは村人たちの信頼を得て「守護者」としての地位を築いたが、王国の混乱と裏切った人々が再び彼女を巻き込む運命が動き始めていた。次章では、王国からの「助けを求める声」がヴィヴィオの耳に届く――。
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