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第9章: 聖女の対峙(前編)
しおりを挟むリーナは目の前の女性、アリアから目を離せなかった。彼女の瞳には、冷たく無情な光が宿っている。その光景に、リーナの心は警戒心と不安で満たされた。
「あなたが、新しい聖女……?」
リーナはその言葉を絞り出すように呟いた。目の前の女性が、自分の後任として選ばれたという事実を受け入れるには、あまりにも彼女の存在感が強すぎた。
「ええ、そうよ。私が選ばれたのは、あなたが追放された後のこと。でも、あなたの存在が邪魔なのよ。私が完全な力を手に入れるためには、あなたがこの世から消え去らなければならない」
アリアの冷たい言葉に、リーナは背筋に冷たいものを感じた。彼女の言葉には、確固たる決意と殺意が込められている。
「リーナ、気をつけて。彼女の力は君と同じものかもしれないけど、制御できていない。暴走しているようだ」
アレンがリーナの耳元で囁いた。その言葉に、リーナは頷きつつ、アリアを見据えた。
「アリア、なぜそんなことを……?聖女として選ばれたなら、王国を守るために力を使うべきではないの?」
リーナは必死に問いかけたが、アリアの表情には微塵も動揺が見られなかった。彼女は、まるでリーナの言葉が無意味だとでも言うかのように、薄く笑みを浮かべた。
「王国を守る?そんなことには興味ないわ。私が望むのは、私の力を存分に使い、この世界を支配すること。あなたの力が邪魔なのよ、リーナ」
アリアが手を上げると、その手のひらに光の玉が現れた。その光はリーナが持っていたものと似ているが、どこか不安定で、危険なものに感じられた。
「この力を使って、あなたを消し去るわ」
アリアの言葉と共に、光の玉が一瞬にして膨れ上がり、リーナへと向かって放たれた。
「リーナ、避けろ!」
アレンが叫び、リーナはとっさに身を翻して攻撃を避けた。光の玉は聖堂の壁に当たり、激しい爆発音と共に壁が崩れ落ちた。その破壊力に、リーナは息を飲んだ。
「こんな……」
リーナは信じられない思いでアリアを見つめた。彼女が放った一撃は、聖女としての力を使ったものとは思えないほど、破壊的だった。
「どうして……どうしてこんなことを……」
リーナは問いかけたが、アリアは答えることなく、再び手を上げた。その手のひらに現れた光は、先ほどよりもさらに強烈な力を宿している。
「もう一度言うわ、リーナ。あなたが邪魔なの」
アリアは冷たくそう言い放つと、再び光の玉をリーナへと放った。リーナはその攻撃を避けることができたが、その威力に圧倒されていた。
「アリア……あなたを止めなければならない」
リーナは心の中でそう誓い、決意を固めた。彼女が持つ力を制御し、アリアを止めるために、リーナは自分の力を解放する覚悟を決めた。
「リーナ、無理はするな。君がやられたら、誰も彼女を止められない」
アレンがリーナに呼びかけたが、リーナは微笑んで答えた。
「大丈夫、アレン。私は……もう逃げない。彼女を止めるために、私はこの力を使う」
リーナは静かに目を閉じ、自分の内なる力に意識を集中させた。古代の森で得た力、それは彼女にとって、まだ未知の部分が多いが、今こそその力を使う時だと感じていた。
「私の力よ……どうか、私に力を貸して」
リーナが祈るように呟くと、彼女の体から柔らかな光が溢れ出した。その光は、まるで彼女を守るかのように包み込み、次第に輝きを増していった。
「これは……」
アリアが驚きの声を上げた。その表情には初めて、動揺と恐れが見て取れた。リーナの光は、彼女の予想を超えた力を持っていたのだ。
「アリア、あなたを止める……」
リーナは静かに宣言し、その光をアリアに向けた。その瞬間、二つの力が激突し、聖堂内に激しい閃光が走った。
「リーナ……!」
アレンが叫ぶが、リーナはその声に耳を傾けることなく、ただアリアを見据えていた。
「あなたが持つ力は、本来は人々を守るためのもの。どうしてそれを忘れてしまったの?」
リーナの言葉に、アリアは動揺を隠せなかった。彼女の力が揺らぎ始め、その光が不安定になっていく。
「黙れ……私は……私は力を手に入れたかっただけ……!」
アリアの声には、今まで感じられなかった不安と苦悩が滲んでいた。その心の中にある何かが、リーナの言葉によって揺さぶられたのだろう。
「アリア……あなたもまた、苦しんでいるのね」
リーナはそのことを感じ取り、アリアの力を鎮めるために、さらに自分の力を注ぎ込んだ。彼女の光は穏やかでありながら、確固たる意志を持ってアリアの力を包み込んでいった。
「もういいのよ……力に支配される必要はないわ」
リーナが優しく語りかけると、アリアの表情が崩れ、涙が頬を伝った。
「私は……私はただ……」
アリアは崩れ落ち、リーナの光に包まれながら、そのまま静かに力を失っていった。
「アリア……」
リーナはそっと彼女に近づき、その肩に手を置いた。
「大丈夫よ、もう何も心配しなくていいわ」
リーナの優しい言葉に、アリアは涙を流し続けながら、小さく頷いた。
---
その夜、リーナとアレンは疲れ切ったアリアを聖堂の一室に休ませた。アリアが目を覚ました時、彼女の瞳にはもう以前の冷たさはなく、ただの少女としての不安と悔いが残っていた。
「リーナ……私は……」
アリアが口を開こうとした時、リーナは優しく微笑んで言った。
「今はゆっくり休んで、アリア。すべてのことは、その後で考えましょう」
アリアはその言葉に、涙を堪えながら小さく頷いた。
リーナはアレンと共に聖堂の外に出て、夜空を見上げた。星が輝くその空には、これから先に待ち受ける運命がまだ不透明だった。
「リーナ、君は本当にすごいよ。彼女を救うことができたんだ」
アレンが優しく言うと、リーナは少し照れくさそうに笑った。
「私がすごいんじゃないわ。私たちが一緒にいたから、こうして彼女を救うことができたのよ」
リーナはアレンの手を握りしめた。その温もりに、彼女はこれからも続くであろう戦いに対する覚悟と、仲間と共に進む勇気を感じた。
「これからどうするの?」
アレンが問うと、リーナは少し考えた後、決意を込めて答えた。
「まず
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