3 / 8
第三章:変貌と復讐の準備
しおりを挟むオルランドの邸宅での生活が始まってから、数ヶ月が過ぎた。ポニーはかつての貴族らしい振る舞いを取り戻しつつ、新たな教養や知識を身につける日々を過ごしていた。オルランドは彼女に、隣国の貴族たちが集う宴会や舞踏会での礼儀作法を教え、さらには隣国独自の文化や伝統についても詳しく指導した。
ポニーは日々努力を重ね、以前の彼女とはまるで別人のように成長していった。かつて王国で「地味で平凡」と嘲笑された彼女の外見も、オルランドのアドバイスに従い、少しずつ磨かれていく。美しいドレスに身を包み、化粧を施した彼女の姿は、かつての婚約者であるアルフレッドすら気づかぬほどの変貌を遂げていた。
「ポニー、今日は社交界で重要なパーティーが開かれる。お前も参加して、隣国の人々にその美しさと知性を披露してきなさい」
オルランドの勧めにより、ポニーは初めて隣国の貴族たちが集まる華やかなパーティーに参加することになった。豪華な邸宅で開かれたその場には、隣国の貴族や名士たちが集い、皆が優雅に踊り、笑顔を交わしていた。ポニーは初めは緊張していたが、オルランドの教え通りに振る舞うことで次第に自然な笑顔を浮かべるようになり、周囲の視線を集め始めた。
「おや、あの美しい淑女は誰だ?隣国から来た貴婦人らしいが…」
「信じられないほどの美貌だ。しかも、話してみると知性も感じられる」
ポニーが挨拶を交わし、軽い会話を交わすたびに、貴族たちは彼女の知性と美しさに魅了され、彼女に対する評価がどんどん高まっていった。その場にいる誰もが、彼女をただの田舎貴族だとは思わず、むしろ隣国に突然現れた謎の絶世の美人として噂を広め始めた。
ポニーもまた、貴族たちの関心を感じ、復讐の炎が再び心の奥底で燃え上がるのを感じていた。かつてアルフレッドに捨てられた屈辱、そして彼の冷たい言葉は今も彼女の胸に刺さっている。そのため、彼女はこの場で自らの価値を証明し、過去の自分と決別する覚悟を固めていた。
そのパーティーで、ポニーは一人の男性と出会うことになる。その男は、隣国の公爵であるユリウス・ヴァルデンで、彼もまたその美貌と威厳を兼ね備えた、誰もが憧れる存在だった。彼はパーティー会場に入ってくると、すぐにポニーに目を留め、ゆっくりと彼女のもとに歩み寄ってきた。
「お初にお目にかかります。私はユリウス・ヴァルデンです。貴方のような美しい女性に会うことができるとは、今日のパーティーに参加して本当に良かった」
彼の穏やかな声と優雅な挨拶に、ポニーは驚きながらも丁寧に一礼し、自己紹介をした。
「私も、お会いできて光栄です。私はポニー・エルムスと申します」
ユリウスは微笑みを浮かべながら、彼女と会話を始めた。その内容はごく普通の挨拶や世間話だったが、ポニーは彼の物腰の柔らかさと知的な会話に引き込まれ、自然と緊張が解けていくのを感じた。彼はかつて彼女が知っていたような傲慢で冷たい貴族とは違い、相手を尊重し、丁寧に接する人物であることがすぐに分かった。
ユリウスとの会話を楽しんでいたポニーだったが、心のどこかでは疑問も抱いていた。なぜ彼が自分に関心を持ってくれるのか、ただの挨拶以上に何か意図があるのではないか、と。だが、その考えを深く掘り下げることなく、彼女はユリウスとの楽しいひと時を満喫した。
その後、ユリウスは彼女にダンスを申し込み、ポニーは少し戸惑いながらもその手を取った。舞踏会の中央で二人が踊り始めると、周囲の人々が自然と彼らに注目し、その美しい光景に目を奪われた。ポニーもまた、久しぶりのダンスに心を弾ませ、ユリウスと共に華やかに舞う自分に少しずつ自信を取り戻していった。
「ポニー様、あなたのダンスは実に見事だ。このまま隣国で暮らしてはどうでしょうか?きっと、多くの方々があなたを歓迎するでしょう」
彼の言葉に、ポニーは微笑みながら答えた。
「ありがとうございます、ユリウス様。私も、隣国の人々にお会いできてとても嬉しいです。ここで新しい生活を始めることができれば、私の過去を清算し、新しい未来を歩むことができるでしょう」
そう言いながら、ポニーは心の中で新たな決意を固めた。隣国で名を上げ、さらに自分の美しさと知性を高めていけば、いずれ王国にいるアルフレッドにもこの噂が届くだろう。そして、彼が失ったものがどれだけ価値のあるものであったかを思い知らせることができるのだ。
パーティーが終わると、ユリウスは改めてポニーに礼を述べ、「またお会いできる日を楽しみにしています」と別れを告げた。その後もポニーは隣国の社交界で注目を集め、彼女の名声は隣国中に広がっていった。そして、それは徐々に王国にも届き、彼女がかつて婚約者であったことを知る人々の耳にも入るようになった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです
シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?
娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。
しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。
婚約破棄されている令嬢のお母様視点。
サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。
過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。
訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
【完結】「『王太子を呼べ!』と国王陛下が言っています。国王陛下は激オコです」
まほりろ
恋愛
王命で決められた公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢との婚約を発表した王太子に、国王陛下が激オコです。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで日間総合ランキング3位まで上がった作品です。
裏切りの双子姉妹 〜奪われた運命と私の子〜
(笑)
恋愛
双子の姉妹、ビアンキーナとビアンテ。皇帝の妃として選ばれた姉に代わり、無垢な妹が夜ごと秘密を背負わされる。何も知らずに従うビアンテの運命が、やがて彼女自身の手で明らかにされるとき、姉妹の絆は大きく引き裂かれていく。
「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。
百谷シカ
恋愛
「君ならもっとできると思っていたけどな。期待外れだよ」
私はトイファー伯爵令嬢エルミーラ・ヴェールマン。
上記の理由により、婚約者に棄てられた。
「ベリエス様ぁ、もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」
「ああ、ユリアーナ。君とは離れられない。僕は君と結婚するのさ!」
「本当ですかぁ? 嬉しいです! キャハッ☆彡」
そして双子の妹ユリアーナが、私を蹴落とし、その方の妻になった。
プライドはズタズタ……(笑)
ところが、1年後。
未だ跡継ぎの生まれない事に焦った元婚約者で現在義弟が泣きついて来た。
「君の妹はちょっと頭がおかしいんじゃないか? コウノトリを信じてるぞ!」
いえいえ、そういうのが純真無垢な理想の可愛い妻でしたよね?
あなたが選んだ相手なので、どうぞ一生、愛でて魂すり減らしてくださいませ。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる