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第2章: 隠された力の覚醒

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アマルテアは自室に戻り、静かに扉を閉めた。広間で受けた衝撃はまだ心の中で響いていたが、外にはその痛みを見せないよう、毅然とした態度を保った。これもまた、貴族の娘としての義務だと教えられていた。しかし、今その教えがどれだけ無意味に感じられるか、彼女は痛感していた。

部屋に戻ると、アマルテアはベッドに腰を下ろし、深く息をついた。目の前に広がる現実が受け入れがたく、涙が溢れ出そうになるのを感じたが、歯を食いしばり、それを抑えた。王子に捧げてきた時間、努力、そして愛情が一瞬で無駄になったように感じられた。彼女は震える手でドレスの裾を握りしめ、心の中で怒りと悲しみが交錯する。

「どうして…こんなことに…」アマルテアは自分に問いかけるように呟いた。何が悪かったのか、自分が至らなかったのか、それとも最初からエドワードは自分に興味を持っていなかったのか。答えの出ない問いに心がますます沈んでいった。

突然、胸の奥に奇妙な感覚が広がり始めた。痛みとも違う、熱くて強烈な力が、彼女の体を満たしていくようだった。アマルテアは驚いて自分の手を見下ろした。手が、微かに光を帯びている。淡い金色の光が彼女の指先からゆっくりと広がり、部屋全体を照らし始めた。

「これは…何…?」彼女は思わず声を上げた。次の瞬間、胸の中で何かが爆発するような感覚が走り、彼女は思わずその場に倒れ込んだ。頭の中で無数の光景が駆け巡る。彼女が今まで知らなかった記憶、夢とも現実ともつかないビジョンが次々と現れる。

「あなたは神々の血を引く者だ。」

突然、誰かの声が頭の中に響いた。その声は優しく、しかし圧倒的な力を持っていた。アマルテアは混乱しながらも、その言葉の意味を理解しようとした。

「神々の血…?」彼女は苦しそうに問い返した。しかし、答えは返ってこなかった。代わりに、さらに多くのビジョンが彼女の目の前に現れる。彼女は世界を守るために戦う女性たちの姿、そして彼女自身がその一員として選ばれたことを示すかのような映像を見た。

やがて、彼女の体に流れていた熱はゆっくりと収まり、光も消えていった。アマルテアは床に倒れ込んだまま、しばらくの間そのまま動けずにいた。頭の中で響いていた声とビジョンは消え去ったが、その内容は鮮明に彼女の記憶に残っていた。

「私は…何なの?」彼女は自分自身に問いかけた。だが、答えは明確だった。自分はただの貴族の娘ではない。彼女には、神々の血が流れている。それは、長い間封印されていたが、婚約破棄をきっかけにその力が目覚めたのだ。

「私は選ばれし者…」アマルテアはそう呟き、自分の中で湧き上がる力を感じた。これまでの自分とは違う、何か新しい存在として生まれ変わったような感覚が彼女を包み込んでいた。

「でも、なぜ今…?」彼女は立ち上がり、部屋の中を見渡した。何も変わっていないはずのその部屋が、今は全く違う世界のように感じられた。自分の中で何かが根本的に変わったのだと彼女は悟った。

その時、ドアがノックされ、執事が静かに入ってきた。「お嬢様、殿下からの使者が参りました。」

アマルテアはその言葉に眉をひそめた。「エドワード様から?」

「いえ、エドワード殿下ではなく、神殿の者が参りました。」

神殿?アマルテアはその言葉に驚きを隠せなかった。神殿は、王国の中でも特別な存在であり、王族や貴族でさえも軽々しく接触することができない場所だった。神殿の使者が自分に会いに来るとは、一体何が起きているのか。

「会いましょう。」アマルテアはすぐに返事をした。彼女の中で何かが変わったことを神殿が感じ取っているのか、それとも別の理由があるのか。答えを知るためには、使者に会うしかなかった。

使者が通されたのは、宮殿内の小さな応接室だった。アマルテアがそこに足を踏み入れると、年老いた神官が静かに頭を下げた。その姿は威厳に満ち、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。

「お嬢様、私は神殿からの使者です。神々の啓示を受け、あなたに伝えなければならないことがあります。」

アマルテアはその言葉に息を呑んだ。彼女が見たビジョンと何か関係があるのだろうか。心臓が高鳴るのを感じながら、彼女は神官の言葉を待った。

「あなたは、神々の血を引く者。封印されていた力が目覚める時が来たのです。そして、神々はあなたに使命を与えました。」

アマルテアは再び混乱した。だが、先ほどのビジョンが頭をよぎり、全てが繋がっていくような感覚を覚えた。

「私に使命…?」

神官は頷いた。「あなたはこの王国、そして世界全体を救うために、神々に選ばれたのです。」

その言葉を聞いた瞬間、アマルテアは自分の運命が大きく変わろうとしていることを悟った。婚約破棄は単なる始まりに過ぎなかった。彼女には、もっと大きな運命が待ち受けている。それが今、現実となりつつあるのだ。


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