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第一章:「聖女失墜の日」

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アヴェンタドールは、幼い頃から特別な力を持っていた。彼女の治癒の力は病や怪我を瞬時に癒し、王国に多くの奇跡をもたらしてきた。そのため、王都の人々は彼女を「聖女」と呼び、崇敬の眼差しを向けていた。彼女もまた、自分の力を活かし、誰かの助けになれることを誇りに思っていた。

しかし、王国の内側では、アヴェンタドールの存在を疎ましく思う者たちが少なくなかった。彼女がその純粋さと力で民衆の支持を集める一方、権力を求める貴族や王族たちは、自らの地位が脅かされるのを恐れていた。中でも王子のエリオットは、アヴェンタドールの存在を最も嫌っていた人物の一人である。彼は王座を継ぐ立場にありながらも、その力不足を周囲から指摘されることが多く、王宮の中でも批判の的だった。

エリオットは、自らの地位を揺るがす存在を排除するために、アヴェンタドールを追放する計画を密かに進めていた。そして、彼の側近や一部の貴族たちも共謀し、偽りの証拠をでっちあげて、彼女を罪に陥れることに決めたのだった。

ある日、王宮にアヴェンタドールが呼び出される。いつもは温かい雰囲気が漂うはずの謁見の間は、何か冷たい空気に包まれていた。彼女は胸騒ぎを覚えながらも、その場に赴いた。そこにはエリオットと彼の側近たち、そして王国の要職に就く貴族たちが並んでいた。アヴェンタドールの目が彼らを見つめると、エリオットが一歩前に出て、冷たい声で言い放った。

「アヴェンタドール、貴様の罪をここで明らかにする」

彼の言葉に周囲の貴族たちはざわめき、アヴェンタドール自身も驚きに目を見開いた。罪――それが自分に向けられる言葉であることが信じられなかった。彼女は正義と奉仕の心で行動してきたのに、どうしてそんなことを言われなければならないのか。

「私が罪を犯した、というのですか?」アヴェンタドールは恐る恐る尋ねた。

エリオットは鼻で笑い、冷たく頷く。「そうだ。貴様が偽りの聖女であり、その力を私腹を肥やすために利用していることは、もはや隠し通せぬ。貴様のもたらした奇跡の数々も、全て嘘と欺瞞に満ちたものであったと知っている」

アヴェンタドールは驚愕し、言葉を失った。自分がどれだけの犠牲を払い、どれほどの思いで民を癒してきたか、誰よりも知っているのは自分だ。それを「偽り」だと決めつけられることが、彼女にとって何よりも耐え難い屈辱だった。

「待ってください!私は民のために力を使ってきました。私の行いが偽りであるはずがありません!」

エリオットの目が冷たく光り、彼女を見据えた。「弁解は無用だ。証拠は揃っている。これ以上の言い訳は王国の名誉を汚すことになるだけだ」

その言葉に、周囲の貴族たちも賛同するように頷き、アヴェンタドールに冷たい視線を浴びせた。彼女は孤立無援の中、震える手で拳を握りしめ、涙を堪えながら自らの無実を叫びたかった。しかし、その場には誰一人として彼女を信じる者はいなかった。

ついに、エリオットは宣告する。「アヴェンタドール、貴様はこの王国から追放される。もはや聖女としての地位を剥奪されるだけでなく、二度と王都の地を踏むことも許されない」

その瞬間、アヴェンタドールの心は砕け散った。彼女が信じてきたもの、愛してきたもの、すべてが無意味に思えた。それでも、自らの無実を証明する術がないことを悟り、ただ静かに王宮を後にする決意を固めた。


---

こうしてアヴェンタドールは王国から追放され、王都を去ることになる。彼女を見送る者は誰もおらず、ただ冷たい視線が彼女を突き刺すようだった。アヴェンタドールはそれを耐えながら、心の中で誓った。

「いつか、この屈辱を晴らしてみせる」と。

彼女は真実の聖女としての誇りを胸に、ひとり荒野へと旅立っていく。その歩みは、やがて新たな運命への扉を開くことになると、彼女自身まだ気づいてはいなかった。

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