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第22話宇宙恐龍

ドクターファストの失敗

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学院の帰り道、アリアはいつものように一人で歩いていた。
護衛がついていることもあるが、今日は一人で自由に帰りたいと願い出たため、周囲には誰もいなかった。道の途中、アリアは路上でかがみ込んでいる老人を見かけた。
見たところ体調が悪そうで困っているようだった。

「じーさん、どうした?」
アリアは声をかけた。
老人はゆっくりと顔を上げ、苦しそうに息を吐きながら答えた。
「ああ、娘さん…ちょっと具合が悪くてね…。歩くのが辛いんだよ。」

「近くに病院ある。一緒に行く」
と言い、老人を助け起こそうとした。

老人はアリアの手を借りて立ち上がり、微笑みながら言った。
「ありがとうね、親切な娘さんだ。」

二人はゆっくりと歩き始めた。
アリアは注意深く老人を支えながら、周囲の様子を伺っていた。

「学院の帰りかい?若いのに、偉いねぇ。」
老人が話しかける。

「うん。じーさんも早く元気になってほしい。」

しばらく歩いた後、老人は突然立ち止まり、アリアに向かってじっと見つめた。

「じーさん?」
アリアは不安そうに声をかけた。

その瞬間、老人の表情が一変し、冷酷な笑みを浮かべた。
「君がアリアか。会えて光栄だ」

アリアは驚きと警戒心を抱く、
「…誰?」

「私はファスト。ドクターファストだ。」
老人は正体を明かし、アリアの反応を観察していた。

アリアは身構える。
「何か用?」

ファストは冷笑を浮かべながら、「君の知識と技術が欲しい。君の才能は、私の計画に必要不可欠だ。協力するならば、世界の半分をやろう」

「いや。世界もいらない」
アリアは強い決意を持って答えた。

「そうか。なら仕方ない。無理矢理でも協力してもらおう」
ファストは冷酷に言い放ち、懐から何かを取り出そうとした。

突然、数人の黒装束の男たちが現れ、ファストの腕を掴んだ。「なにをするつもりだじじい!いや、ファスト。」
男たちの一人が低い声で言った。

「ハンゾウさん?」アリアは驚きの声を上げた。
女騎士が離れたため。代わりにアーバンフェイムの特捜機関シノビが密かにアリアの護衛についていたのだ。

ファストは懐からゆっくりと手を取り出し、何かを地面に叩きつけた。もうもうと白煙が立ち込め、視界が遮られた。その中で、ファストは風船のような小型気球に捕まり、空高く去っていった。
「アリア、また会おう。はははは 
は」

アリアは去っていくファストを見ながら、「変なじーさん」と呟いた。

護衛の女騎士たちも駆け付けて合流した。
「ファストは変なじーさん」と報告した。

「は?」
「ファストと会ったの?」
「うん。変なじーさんだった」とアリアは言った。

女騎士たちは驚いた様子で顔を見合わせたが、アリアの無事を確認して安心した。
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