銀色の巨神とデュアルヒロイン

第21話 ドクターファストの挑戦

レギオン ジェネシス

ゴーレムの行方が依然として分からないまま、1ヶ月が過ぎた。王国中がその行方を捜していたが、手がかりは全く得られなかった。ミラやアリア、そして王国の科学技術チームもその謎に頭を悩ませていた。

「どうして見つからないのかしら…」ミラは独り言を漏らしながら、ドクターファストの手がかりになる記録がないかと王国図書館で過去の記録を再び調べていた。

そしてある日、王都の防衛ラインに異変が生じた。突然、空が暗くなり、巨大な影が現れたのだ。

「ゴーレムだ…！」
騎士たちは驚愕し、すぐに警戒態勢に入った。

そのゴーレムは、以前の姿とはまるで違っていた。ドクターファストによって改造され、さらに強力な武器と装甲が施されていたのだ。

王国ゴーレム開発ラボの管制室では、緊急アラームが鳴り響いていた。モニター越しにその姿を見ていたアリアは呟いた。
「これは…あの技術を使ってさらに強化されたゴーレム…」

エドガーも困惑した表情で、
「最終テストが残っているというのに…」
と呟いた。

アリアはそのゴーレムがヘルムを装備していることに気づいた。
「あのゴーレム、ヘルムを装備している。弱点の額をカバーしている」

遠くから見ていたミラもその異様な姿に驚き、
「あんなに改造されてるなんて…！」

アリアとエドガーは判断しかねていたが、そこで管制官の一人が報告してきた。
「レギオンが発進許可を求めています。」

「レギオンが？」エドガーは管制官の前のモニターを覗き込んだ。モニターには
「発進の許可をください」
の文字が表示されていた。
レギオンの自律思考回路が発進を求めているのだ。
「思考回路が予想を上回る性能を見せてる」

アリアとエドガーは顔を見合わせて頷いた。
「レギオンG発進準備」
エドガーの声が管制室に響く。　
スタッフが慌ただしく動き出し、発進シーケンスが始まった。
ラボのゲートが開く。

王国ゴーレムのラボラトリーから現れた王国防衛ゴーレム「レギオンG（ジェネシス）」は、金属で覆われたアイアンゴーレムと分類されるが、その形状はまさにスーパーロボットのようだった。
光沢のある金属装甲が太陽の光を反射し、巨大な体躯が威圧感を放っていた。

一方、ミラはファストゴーレムの見える高台に立っていた。
「ゼクス、変身するわよ」
とミラは叫んだが、目の前の光景に圧倒され、変身のことを忘れてしまった。

「えええええー！なに！」
と
ミラが驚きの声を上げる。

「なに！！！？」
ゼクスも同様に驚く。

ドクターファストもその光景に愕然とし、
「ぬわんだーあれは！！！わしのゴーレムより、かっこいい？」と叫んだ。

ミラは呆然としながら、
「あれが王国のゴーレム？もうスーパーロボットよね？」
ミラは王国が防衛用ゴーレムを開発している話を聞いていたが、オリジナルのゴーレムと同じようなものだと予測していたため驚いたのだ。

「レギオンが飛行ユニットの使用許可を求めてます」
管制官が報告した。

「なに？さすがにあれはまだ…」エドガーは躊躇する。

「許可する」とアリアが力強く答える。

「アリア嬢？」

「レギオンを信じる」

その答えにエドガーも大きく頷いた。
「飛行ユニットの使用を許可」
エドガーの声が再び響く。

背中に装備したパーツからオレンジ色の炎と噴煙を上げ、レギオンGが上空へと上昇していく光景が繰り広げられた。

「飛んだ！！！！」
ミラとゼクスは同時に叫んだ。

その光景にエドガーも興奮しながら、
「アリア嬢、本当に飛んだぞ」

アリアは冷静に、
「あんまり長く飛べないし、機動力のある飛行でもない。要するにハッタリ」


「空を飛ぶだと？」
ドクターファストには、そのハッタリの効果が抜群だった。
その光景に驚き、腰を抜かし、尻もちをついていた。

空中に舞い上がったレギオンGは、急降下してファストゴーレムに向かって突進した。
ファストゴーレムはそれに反応し、腕を構えて迎え撃とうとした。

レギオンGの拳がファストゴーレムの腕に激しくぶつかり、金属音が響き渡った。両者は力の限りを尽くして押し合い、互いに一歩も引かない。レギオンGは再び空中に飛び上がり、今度は両足でファストゴーレムに強烈な蹴りを繰り出した。

ファストゴーレムはその蹴りで大きく後退し、地面に激しく倒れ込んだ。
しかし、すぐに立ち上がり、再びレギオンGに向かって突進してきた。
レギオンGも同じく地面に降り立ち、迎え撃つ構えを見せた。

ファストゴーレムの拳がレギオンGの胸に打ち込まれ、レギオンGは一瞬揺らいだが、すぐに反撃に転じた。
レギオンGの左拳がファストゴーレムの顔面を捉え、その勢いでファストゴーレムは大きく揺らいだ。


レギオンGはそは、さらに力強くファストゴーレムに攻撃を加えた。
両者は互いに激しく殴り合い、地面に衝撃を与えながら戦い続けた。

「今だ、レギオン！決めるんだ！」エドガーが指示を出す。

レギオンGは一瞬の隙を突き、全力でファストゴーレムの胸部に強烈なアッパーカットを放った。
その一撃でファストゴーレムの胸部装甲が砕け、内部の機関が露出した。

「やったの…？」
ミラが呟いた。

ファストゴーレムは最後の力を振り絞り、レギオンGに向かって突進したが、レギオンGはその動きを読み取り、再度強烈な蹴りを見舞った。
ファストゴーレムはその一撃で完全に動きを止め、地面に倒れ込んだ。
「勝った」アリアが、淡々と呟く、
か「我々の勝利だ」


こうして、レギオンGはファストゴーレムを打ち倒し、王国の危機を回避した。しかし、ドクターファストの存在は依然として脅威であり、ミラとアリア、そして王国の人々は新たな戦いに備えることを決意した。


ミラは戦闘の終わった現場でふと思い出し、「あ、ゼクス、変身しなくてよかったわね」と呟いた。

その頃、ドクターファストは破壊されたゴーレムの残骸を見つめながら、「こんな技術を持っているとは…王国め、侮れん。だが、次はもっと完璧な計画で挑む。アリア…あの少女の知識と技術が欲しい」と呟いていた。
夕陽の中にレギオン・ジェネシスの機体が輝いている。