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第18話真祖教の謀略

ミラの憂鬱

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誘拐事件の余波
ミラは自宅で落ち込んでいた。悪魔フェレスによる誘拐事件が原因だ。フォレスト辺境伯に助けられることで、ミラも完璧ではなく、か弱い一面があることを印象付けようとした。しかし、その計画は思わぬ方向に進んでしまった。

確かに、辺境伯の人気は急上昇した。彼の勇敢な行動は市民たちの心を掴んだ。しかし、同時にミラも完璧なヒロインでありながら、か弱い一面があるという印象を与え、「守ってあげたい」という思いを人々の中に生んでしまった。結果として、ミラの人気はさらに高まってしまった。

ミラは思い悩む
「どうしてこうなったのかしら…」

さらにミラは父親のアルスランド公爵から厳しい説教を受けた。

「ミラ、お前が誘拐されたことで周りがどれだけ心配し、迷惑をかけたか分かっているのか?」

「はい、父様…」

ミラは自分の行動がどれだけ多くの人々に影響を与えたかを痛感し、自主的に自宅謹慎して反省することを決意した。しかし、これがさらなる誤解を生むことになる。


ミラが自宅謹慎していることが「誘拐事件のショックで外出できないほどのトラウマを受けて寝込んでいる」として広まり、人々はミラに対してさらなる同情と人気を寄せるようになった。

市民1:「ミラ様、あんなひどい目に遭ったなんて…おかわいそうに。」

市民2:「ミラ様を守るために、私たちも頑張らなくちゃ!」

この状況にますます落ち込んでいた。やることなすことすべて裏目に出ているように感じられた。

ミラはこれからどうすれば良いのかを考えながら、自分の置かれた状況に悩むのだった。


ミラは自室で静かに本を読んでいた。誘拐事件の後、反省のために自主的に自宅謹慎していたが、その状況が誤解されていた。ドアがノックされ、メイドのエルザが入室してきた。

「お嬢様、お見舞いのお花が届いております。」

「は?」

「お嬢様が誘拐のショックで床に伏していると勘違いしている方々からのお花です。」

ミラは驚愕し、頭を抱えて床に転がった。

「あああ~、皆さん、許してー、私は心配されるような資格のある女じゃありません!」

エルザはクールな笑みを浮かべながら、ミラを見下ろした。

「いいじゃありませんか。この花を見るたびに良心の呵責に耐えきれないほどの反省ができますよ。」

「え、え、え、エルザー…」

「何でしょう?お嬢様が私になにか言えるのでしょうか?」

ミラはしばし黙り込んだ後、ため息をつきながら言った。

「言えません、ごめんなさい。」

エルザは満足げに頷き、部屋の片隅に花を飾った。

「お嬢様、皆さんの気持ちを無駄にしないように、これからも立派にお過ごしください。」

ミラは苦笑しながらも、エルザの言葉に少し元気を取り戻し、再び本を手に取った。しかし、心の中では重い気持ちが残っていた。

「どこか、とおくにいってしまいたい…」

その時、再びノックの音が響いた。

「はい?」

「お嬢様、セシリア様、アリシア様、キャナル様、アリア様がお見舞いに来られました。」

ゴン! ミラは、読んでいた本を落とし、テーブルに頭を打ち付けた。

「どうします?お帰り願いますか?お嬢様は、ショックで誰かに会うことが恐ろしくて怯えているのですと。」

ゴン、ゴン! 今度は2回、テーブルに頭を打ち付けた。

「エルザ、許してください。あなたの精神攻撃が最も応えます。」

「お嬢様は、それぐらいのことをやらかしたんです。黙って攻撃を受けてください。」

「…はい、みんなとちゃんとお話します。案内してください。」

「かしこまりました。」

エルザがセシリアたちを案内してきた。みんな、口々にお見舞いの言葉を伝える。

「ミラ様、無事で本当によかったです。」セシリアが言った。

「私たち、すごく心配してました。」アリシアが続けた。

「もうあんなことはおきません。私がミラ様をお守りします」キャナルが力強く言った。

「ミラ様に元気になってほしい」アリアが微笑んだ。

ミラはみんなの温かい言葉に感謝し、少しずつ笑顔を取り戻していった。

「ご免なさい。心配をかけてしまって、今休んでるのは誘拐事件のショックでではないのです。だから心配なさらないでください。私は今謹慎をしてるのです。」

「謹慎?」セシリアが首をかしげた。

「謹慎ってどうして?」アリシアも疑問を口にした。

「私は今、身分不相応にも聖女などと呼ばれる立場にあり、誘拐などされたばかりに皆様に心配をかけたうえに国中が、私の救出に動き、その結果、皆さんに多大な迷惑をかけたのです」ミラが説明した。

「誘拐されたのは、ミラ様の責任ではありません」キャナルが反論した。

「私の責任なのです。誘拐されたのは、私の油断とおごりです。そんなものがなければ誘拐なんかされませんでした。これは、私の過失なのです」ミラは力強く言った。

「そんな風に考える必要はありませんわ、ミラ様。」セシリアが優しく言った。

「皆、ミラ様の無事を願ってた。」アリアも同意した。

「私が誘拐されたとき、ミラ様やみんなが助けてくれた。でも、今回は、私たち、私はなにもできなかった。ミラ様は、悪くない。絶対悪くない、だから早く学院に戻ってほしい」アリアが涙ぐみながら訴えた。

後ろに控えていたエルザは内心で『このボディーブローは、相当なダメージがありそう』と思いつつ、冷静な表情を保っていた。

『アリアちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい。あなたがたが責任を感じることなんてなにもないのに…』内心で猛烈に謝りながらも、ミラは微笑んだ。

「アリアちゃん、心配かけてごめんなさい。ありがとう。もう少し反省したら学院に戻ります。」

その日の午後、再びドアがノックされた。「ヒルデガルド様とクラリス様が面会に参られました」とエルザが知らせてくれた。ノイエシュタイト家とアーバンフェイム家はアルスランド家と親戚筋で親密である。彼女たちは、謹慎していることを知っているようだ。

「ミラ様、ごきげんよう。」ヒルデガルドとクラリスがやってきた。

「ミラ様、どう?そろそろ、よろしいんじゃありません?」ヒルデガルドが言った。

「そうですわ。ミラ様がいないとお寂しいですわ。学院も灯火が消えたようですわ。」クラリスも同意する。

「気にすることはありません。油断やおごりと言っても悪いのは誘拐犯なんですもの。」ヒルデガルドがミラを慰めた。

「そうですわ。誘拐される経験なんて滅多にないし、ちょっと面白いかななんて思ったりしても悪いのは誘拐犯のほうですし。」クラリスが心臓をえぐるようなことを言ってきた。

「ク、ク、ク、ク、クラリス様?」

「私には、調べられないことはございませんの。」

「私は最近、クラリス様がとても恐ろしく感じられます。」

「クラリス様、一つだけお教えください。」

「はい、なんでしょうか?」

「情報ソースはどこでしょう?」

「それは、どなたにでもお教えできません。」

「でも、私の身内ですわよね?」

「お答えしかねます。」後ろでそっぽを向いて控えているエルザを睨みつけながらミラは憮然としている。

「今の私は、なにも言う資格はございませんから」ミラはため息をつきながら言った。

「それでも、ミラ様、戻ってきてください。学院はあなたがいないと本当に寂しいのです。」ヒルデガルドが優しく微笑んだ。

ミラは友人たちの言葉に胸を打たれ、少しずつ心の重荷が軽くなるのを感じた。


ミラは父であるアルスランド公爵に呼ばれ、その執務室を訪ねた。

「お呼びでしょうか、お父様。」

アルスランド公爵は厳かな表情で頷いた。「ウム、今回予定しているパーティーを王城で開催するよう、国王陛下から要請があった。」

「え?ですが、今回のはアルスランド公爵家としての開催ではありませんよ。私、ミラ・アルスランド伯爵としての開催です。伯爵主催のパーティーを王城で行うなど、異例すぎませんか?」

公爵は深く息をつきながら続けた。「ウム、異例すぎるであろう。しかし、この申し出、お前に拒否権があると思うか?」

ミラは一瞬考え込み、そしてうなだれた。「…ございません。」

「では、速やかに準備と調整を進めるのだ。」

「わかりました。明日王城に上がり、関係者様と調整してまいります。」

ミラは公爵に頭を下げ、退室した。

ミラが伯爵に叙爵されてから初めて開催するパーティーである。本来は、父たるアルスランド公爵邸の会場を借りて実施する予定であったが、今回は異例の王城開催となる。

今回行われるパーティーの開催目的は、前回の誘拐事件の一件に対する謝罪と感謝の意を表すためである。迷惑をかけた王家からの要請であり、断る訳にはいかない。

謹慎をしていたミラにとって、このパーティーは謹慎を解くための区切りとけじめをつけるためのものであった。彼女は、これまでの行動が浅はかであったことを改めて痛感していた。

翌日、ミラは早朝から王城へ向かい、パーティーの準備に取り掛かる。広大な王城のホールに足を踏み入れた瞬間、その威圧感と壮麗さに圧倒される。

「ここで開催することになるとは…。本当に異例ね。」

彼女は担当の宮廷スタッフと打ち合わせを進め、装飾、食事、音楽などの詳細を決めていった。国王陛下からの特別な要請に応じるため、細部にわたる配慮が必要だった。

「これで、みんなに謝罪と感謝の意を伝えられるなら…。きちんと準備を整えなければ。」

ミラは自分に言い聞かせるように呟きながら、次々と決定を下していった。その姿勢には、彼女の決意と責任感が滲み出ていた。

パーティー当日までの時間は限られていたが、ミラは全力で準備を進めた。彼女の努力が実を結び、素晴らしいパーティーが成功することを願いつつ、ミラは一歩一歩、前進していった。

### 第5章: 国王陛下への挨拶

今回、会場を提供してもらえることへの感謝の言葉を伝えるため、ミラは国王陛下に挨拶に伺うことになった。当然のことではあるが、ミラは気が重かった。誘拐事件以降、初めての国王との謁見であり、頭の上に鉄の塊が乗っているような思いだった。

ミラは入室と同時に深々と頭を下げた。

「この度、ご心配をおかけしまして申し訳ございません。救出のためご尽力くださいまして感謝しております。更には今回は、会場までお貸しくださいまして、重ねて御礼申し上げます。」

国王は椅子から立ち上がり、ミラに近寄り手を取った。そして、涙を流しながら言った。

「そなたが無事で何よりだ。そなたが謝罪することなど何一つない。むしろ、国家の要人たるそなたを危険な目にさらした国家の代表たる余のの方が謝罪せねばならない。許しておくれ。」

ミラは恐縮しながら答えた。「そんなもったいないお言葉です。今回の件は、私の驕りと油断が原因でございます。」

内心では『ぐわー、やめてください、全て私が悪いのですー!』と叫びたい思いだった。ミラは頭を床にこすりつけて土下座したい気持ちを抑えながら言葉を続けた。

「ともかく、無事で何よりだ。」

「はい、ありがとうございます。」

ミラは深く頭を下げ、感謝の意を伝えた。国王の寛大な言葉に少しだけ心が軽くなった気がしたが、それでも自分の過ちを痛感していた。

この挨拶を終えて、ミラは再びパーティーの準備に取り掛かった。国王の期待に応えるためにも、彼女は全力でその役目を果たす決意を新たにした。



そして、いよいよパーティー開催の日が訪れた。ミラはパーティーの準備に携わる使用人たちに頭を下げ、感謝と謝罪の言葉を述べた。力を借りる宮廷のスタッフ、そしてアルスランド公爵からも大勢のメイドたちが出張して来ていた。

「今回は、私の不始末から始まったことで、申し訳ありませんが、どうか皆様のお力をお貸しください。」ミラは深々と頭を下げ、使用人たちにお願いした。

エルザが一歩前に出て、冷静な表情で答えた。「主人の不始末は、使用人の不始末です。全力を尽くしますのでご安心を。」

『エルザ、どこまで私の心をえぐってくるの!』と、ミラは内心で叫びながらも、その思いを表情には出さず、微笑みを浮かべていた。

使用人たちは一斉に頭を下げ、準備に取り掛かった。宮廷のスタッフとアルスランド公爵家のメイドたちは、完璧な連携を見せ、パーティーの準備を迅速に進めていった。会場の飾りつけから、料理の準備、来賓の対応まで、全てが滞りなく進行していた。

ミラは彼らの働きを見守りながら、自分の役割を果たすために動き回った。パーティーが無事に開催されることを願いながら、彼女は自分の心を奮い立たせていた。

「皆さん、本当にありがとうございます。このパーティーを成功させるために、私も全力を尽くします。」ミラは使用人たちに向けて再び感謝の言葉を述べ、彼らの労をねぎらった。

「ミラ様、お力添えできることを光栄に思います。」使用人たちは笑顔で応じ、さらに士気を高めた。

ミラは彼らの温かい言葉に支えられながら、パーティーの成功に向けて心を新たにした。


パーティー当日、ミラは入口に立ち、招待客一人一人を迎える役割を果たしていた。彼女はその優れた記憶力で、招待客全員の顔と名前を覚えており、丁寧に挨拶をし、感謝と謝罪の言葉を述べた。

「ハインツ様、私のためご尽力くださいましてありがとうございます。本日は、ご多忙の中、足をお運びくださいましてありがとうございます。」

ハインツは驚きと感激の表情を浮かべた。「ミラ様、私の名前を覚えてくださっているとは…一介の騎士に過ぎない私のことまでご存知だなんて、光栄です。」

「もちろんです。皆様のお力添えがあってこそ、今こうしてここに立てているのですから。」ミラは微笑み、ハインツの手を握った。

他の騎士たちも次々と到着し、ミラはその一人一人に対しても同じように温かく迎え入れた。騎士たちもミラの優れた記憶力と丁寧な対応に感激し、感謝の意を表した。

そしてパーティーが正式に始まると、ミラは国王陛下への挨拶に向かった。

「陛下、この度はご心配をおかけし、さらにご尽力いただき誠にありがとうございました。また、今回のパーティーの会場として王城をお貸しくださり、重ねて感謝申し上げます。」ミラは深々と頭を下げた。

国王は優しい微笑みを浮かべ、ミラの手を取りながら静かに言った。「ミラ、そなたが無事で何よりだ。そなたが謝罪することなど何一つない。むしろ、余がソナタを守りきれなかったことを詫びねばならない。許しておくれ。」

「そんなもったいないお言葉です。今回の件は、私の驕りと油断が原因でございます。」冷静な表情で答えた。

「ミラ、そのように自分を責める必要はない。重要なのは、そなたが無事に帰ってきてくれたことだ。我々はそのことに感謝している。」国王は再びミラの手を握り、温かい眼差しで感謝の意を示した。

ミラは深々と頭を下げ、国王の言葉に感謝の気持ちを込めて応えた。「ありがとうございます、陛下。これからも精一杯尽力いたします。」

その後、ミラはアーバンフェイム公爵家とノイエシュタイト公爵家の代表者たちに挨拶をした。

「アーバンフェイム公爵様、ノイエシュタイト公爵様、この度のご支援、心より感謝申し上げます。先日の事件では多大なご心配とご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。」

アーバンフェイム公爵は微笑んで答えた。「ミラ様、お元気そうで何よりです。我々も貴女のために力を尽くしただけですから、どうか気になさらないでください。」

ノイエシュタイト公爵も頷きながら言った。「そうです。貴女が無事であることが何よりの喜びです。どうかこれからも健やかにお過ごしください。」

ミラは深々と頭を下げ、彼らの温かい言葉に感謝した。

そして、パーティーでの絶対に外せない人物、辺境伯フォルスト侯爵にも感謝の言葉を伝える場面が訪れた。

「フォルスト侯爵様、この度はご尽力いただき、本当にありがとうございました。お陰で無事に戻ることができました。」ミラは深く頭を下げ、フォルスト侯爵に感謝を述べた。

「ミラ様、無事で何よりです。私の力は微力ながら、少しでもお役に立てたなら幸いです。」フォルスト侯爵は柔らかな微笑みを浮かべた。

「いえ、侯爵様のお力は計り知れないものです。今回、感謝の気持ちを込めて、私からこの剣を贈らせていただきます。」ミラは、自分で魔力を付与した聖剣レベルの剣を差し出した。

フォルスト侯爵は驚きと感動の表情を浮かべ、その剣を受け取った。「ミラ様、このような貴重な品を…ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」

ミラは深く頷き、フォルスト侯爵の感謝の言葉に心からの笑みを返した。

彼女の誠実さと温かさに触れた人々は、ますます彼女に対する尊敬と信頼を深めていった。パーティーはその後も順調に進み、ミラの挨拶がさらに和やかな雰囲気を醸し出した。

ミラは最後に学院の友人たちに向けて挨拶をする場面を迎えた。

「最後に常に私の力になってくれる学院の友人たちにも感謝の言葉を贈らせていただきます。ご心配をおかけしましたが、明日より復学するつもりです。以前と変わらぬお付き合いをしていただけると幸いです。」

友人たちは感激し、涙を浮かべてミラに応えた。「ミラ様、待っていました。いつでも私たちのそばにいてください。」

ミラは友人たちの言葉に微笑みながら、パーティーの成功を感じていた。彼女の誠実さと温かさが招待客たちの心を捉え、パーティーは成功裏に終わることが約束されたのであった。

そしてミラは、会場の注目を集めながら、中央に立ち、挨拶を始めた。

「皆様へ感謝の気持ちを言葉で伝えきれませんので、この曲をおくらせてもらいます。今まで誰にもお聞かせしたことがございませんが、私の一番得意な楽器でございます」

ミラが用意していたのは、ピアノでもバイオリンでもなかった。美しく銀色に輝くフルートだった。

フルートの音色は、ピアノとバイオリンも神レベルだというのに、本人が一番得意と言い切っただけに、それらをはるかに凌駕するものがあった。

彼女はフルートを唇に当て、深い息を吸い込み、美しい音色を響かせ始めた。その透明感あふれる音色は、会場全体を包み込み、静寂の中に響き渡った。人々は息を呑んでその演奏に耳を傾け、心が洗われるような感覚に浸った。

ミラの演奏が終わると、会場には静寂が訪れ、その後、盛大な拍手が鳴り響いた。ミラは深くお辞儀をし、感謝の気持ちを表した。

「ありがとうございます。これからも皆様のご支援に感謝しながら、精一杯努めてまいります。」

会場は感動と共に、ミラの誠実さと才能に心を打たれた。パーティーはその後も和やかな雰囲気の中で進行し、ミラの挨拶と演奏が、招待客たちの心に深く刻まれる一夜となった。

自宅に帰ったミラは、燃え尽きた灰のようになっていた。
「やりとげたー!」
ベッドに倒れ込む彼女の顔には、達成感と安堵が広がっていた。
謝罪の気持ちを伝えられたと思った。
「今日の気持ちをお忘れなく、これからお過ごしください」
エルザがベッドに突っ伏しているミラに声をかけていた。
「わかってます」
「間違っても、面白がって誘拐されないでください」
「本当に反省してます」
「お嬢様が面白がってる間、旦那さまも、奥様も、どれだけ心配されたか、お考えてください」
「ぐっはっ」
ミラは、即死するかと思った。
「お二人ともお嬢様のことだから、すぐに無事にお帰りになると信じてましたが、それでも心配なさらないなどということはないのですよ」「あうっ」
一言一言が心をえぐってくる。
「本当に軽率な真似は、なさらないでください」
「…はい…」
エルザは満足げに頷き、ミラの額に軽く手を置いて言った。
「お嬢様、これからも自分を大切にしてください。皆様のためにも。…無事に帰られて本当によかった」
エルザの目に光るものがあった。
ミラはその涙に驚き、心が温かくなった。
「エルザ、ありがとう。これからはもっと慎重に行動します」
エルザは軽く笑い、涙を拭いながら、「そうしてくだされば、皆が安心します」と答えた。
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