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プロローグ
しおりを挟む「カリヤ・セリーヌ、君との婚約を破棄する」
王太子アルベルトの冷たい声が、広間に静かに響いた。
カリヤは、その瞬間、心臓が一瞬止まったように感じた。周囲に集まる貴族たちの視線が、まるで刺すように彼女に突き刺さっているのを感じる。しかし、彼女の顔には一切の動揺は見られなかった。
「理由は?」静かに尋ねたカリヤ。声が震えることなく、冷静に響く。
「僕は……真実の愛を見つけたんだ」
その言葉に、周囲の貴族たちがどよめき、カリヤを見下すような視線を向ける。彼女の耳には、かすかに笑い声さえ聞こえた。王太子に婚約を破棄される公爵令嬢──それはスキャンダルであり、同情もされない立場だ。
だが、カリヤは眉一つ動かさず、静かにアルベルトを見つめた。内心では、あまりの滑稽さに笑い出しそうになるのを必死にこらえていた。真実の愛?それが理由?彼が言うその「愛」が、どれだけ浅はかで儚いものか、カリヤは知っていた。彼女は、過去に生きた記憶を持つ転生者だったのだ。
「そうですか。では、お幸せを祈ります」カリヤは深々と一礼をし、優雅にその場を後にした。
アルベルトは驚いた表情を浮かべたが、彼女の背中に呼びかけることはなかった。彼にとって、カリヤはもはや過去の存在。新しい「愛」に目がくらんだ彼には、彼女の真の価値を見抜くことはできなかった。
しかし、カリヤには分かっていた。これが彼女にとって、真の自由を得るための最初の一歩であることを。
「ふん、これで本当に自由になったわね」誰もいない廊下に出た瞬間、カリヤは小さく微笑んだ。
これから始まる新しい人生。その先に待つのは、かつての婚約者とは違う、真に価値ある未来だった。
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カリヤ・セリーヌの新たな物語は、ここから幕を開ける。
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