【完結】２４時間のアユライ～エレベーターの中の殺人

エピローグ

第２話

―――数日後。

広大な敷地に、気品溢れる古風な西洋式建築が、鎌倉の静寂な闇の中に佇んでいる。
その寝静まった建物の、二階の一室から明かりが漏れていた。

三〇帖はある広い室内の、通路側の壁一面が書棚になっていて、クリスティーやドイル、カーなどの海外作家から、島田荘司、綾辻行人、東野圭吾などの国内作家を含めた、数千冊のミステリー小説が整然と並んでいる。
街の書店よりも、ミステリーに関していえば、圧倒的に品揃えは豊富であった。

その書棚の右側の上段に、少し異質な背表紙の本が並んでいた。
『エロイカより愛をこめて』という、古い少女コミックで、棚に数十冊分の空白があって、最端の本の1冊が、支えを失い横倒しになっている。

書棚とは反対側の窓のある壁には、屋久杉の一枚板で出来た長い机（天板）が、腰の高さで備え付けてある。
その机の中央に、最新グラボを積んだ、高スペックのノートパソコンが置いてあり、その前の椅子に、可愛いプリント柄のパジャマを着た高校生くらいの美しい少女が座っていた。

切れ長の目に、長いまつ毛の少女は、頭からヘッドセットを外すと、イスの背もたれに体重を乗せて、座ったままで両手を上に広げて大きく背伸びをした。

少女は身体を戻すと、マグボトルの蓋を回しながら、置き時計に目をやった。

「……〇時四〇分か、そろそろ寝ようかな」

と、その時、外して机の上の置いたヘッドセットのヘッドフォンから、女性の声が聞こえて来た。






















「無理だってばぁ～！」

ノートパソコンの画面の中の、倒れているオークの少し先で、可愛いエルフがモンスターに囲まれていた。

「ゴンゾー、無理だってばぁ～！」



おわり

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最後までお読みいただきありがとうございました。　　　　握夢（グーム）。


※グローリア伯爵の口癖は、「Good luck!」、「I'm professional（私はプロだよ）」。（ウィキペディアより）